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第13章

みきわめと仮免検定

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担当制のメリットでもありデメリットでもあるのが、「みきわめ」の時間かもしれない。
「みきわめ」というのは、実車で検定試験を受けていいかを判断するための時間で、仮免前の実技版模試といったところだ。
「みきわめ」でオッケーが出て、仮免検定の挑戦権を得ることになる。

で。
私が通っている自動車学校は担任制なので、先生は「みきわめ」なくても、私以上に私の実力を知っている。
なので、「みきわめ」の時間といっても、私は先生に従い、いつもどおり仮免検定コースをヨロヨロ走り、先生もいつも通り指示と注意に終始して教習時間が過ぎた。
何も上達している感がない、いつも通りの時間を過ごしたが、先生は「みきわめ」にGOサインを記入した。

私の運転技術の惨状を充分に知ったうえで「みきわめ」にハンコを押す先生の気持ちってどんなものなのだろうか?自動車学校の先生が押すハンコの重みを感じる。
私を次の段階に進ませるハンコを押すのは、先生だって悩みを伴うだろうな。

とはいえ先生のハンコに思いを馳せ続ける余裕はない。
私は近づいてくる仮免検定の緊張で、からだがねじられるような感覚に陥っていた。
仮免検定が怖かった。何もかもが不安だった。
その先に続く第二段階を考える余裕は全くなかった。

不安の波にのみこまれながら仮免検定当日を迎えた。
試験官の先生と、いっしょに検定を受ける受験者が3人が車に乗り込む。
最初の受験者は、若い男性だった。MT車の試験だった。
驚くほど上手だ。自分が下手なのは認識していたが、同じ訓練受けている(正確には上手な運転をしているMT車の方が難度は高い)はずなのに、こんなに運転の差があるものなのか?
AT車に乗り換え、私の試験が開始した。

結果からいうと、S字コース途中で、私は検定中止になった。
私のS字コースの運転は、時速1キロ以下でチビチビ進むしかない状態。
その状態で縁石に乗り上げた。そこから体制を立て直すチャンスは与えられている。ちょっとだけバックして縁石から車を下したが、すでに私は行く方向がわからなくなっていた。
わからなくても運転しなければいけない。
前進を開始した車が再び縁石に乗り上げたようだ。私は縁石に再び乗り上げたことに気が付かなかった。
衝撃を感じないほど車の速度は遅いし、私の頭は真っ白だった。
「また縁石に乗り上げたのに気が付きませんか?」
試験官の先生が言う。え?乗り上げたの?
「検定中止します」
検定中止…?
試験官の先生の指示でS字を脱出し、発着点に車を誘導された。
発着点に向かう、「検定用コースでない」道を運転をしながら、悔しさが心からあふれ出した。
検定試験に落ちるにしても、コースを全部走り切りたかった。
しかし、路上で「気づかない」まま運転することは「事故現場からの逃走」だ。
仮免検定中止は当然の判断だった。
わかっている、でも悔しかった。自分に腹がたった。どうして、こんなに出来ないのだろうか?

その後のことはあまり覚えていない。
もう一人の受験者と発着点で運転をかわり、試験車の同乗していたはずなのだけど。

試験の車から降りた後、同乗していた他の2人と別れた。
本来、コースを走り切れば、教室で仮免の学科試験を受け、合否判定、合格の場合仮免交付の流れになるはずだ。
しかし、検定中止の私は車を降りると、
「担任の先生と打ち合わせをしてください」
と言われただけだった。

生徒が教習時間を待つスペースで、ぼーっと座っていると、担任の先生がやってきた。
お互い、まぁ、そうだろうなぁという雰囲気だ。
仮免を落ちると、少なくとも一度補習を受けなければ、次の仮免検定を受けることはできないので、すぐに補習時間をいつやるかの打ち合わせをすませ、私は帰路についた。

仮免検定までにすでに補習の山を築いていた。
「〇時間補習無料」もすでに使いきっている。
からだが重い。心が重い。
検定中止というのがつらかった。走り切ることさえ許されない悔しさが尾を引いた。

からだがねじれるような感覚から解放されるのはいつなのだろうか?
真っ暗なトンネルの出口が見えない…。



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