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大人の成人式
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いつものラーメン屋で、いつもの一杯をすすっていた。一日の疲れをここでリセットする。もう二十年の習慣だが、ちょっと胃に重く感じるようになってきたのは気のせいではなく、年のせいだ。
今日は俺の成人式だ。ちょうど店内のテレビのニュースも成人式をとりあげていた。目の端に画面が映り込む。インタビューを受けていたスーツ姿の男性の声が俺の心を突き刺す。
「社会に出て、家族ができ、家を建て責任感を今日改めて感じました」
次に答えた女性は訪問着だ。
「今、子育てと仕事でいっぱいいっぱいですが、二十年ぶりの同窓会で気分転換するのが楽しみです」
振袖姿がちらほら見えるが、画面は彼女たちを執拗に追うことはない。
俺の所にも招待状は来ていたが、即ゴミ箱に突っ込んだ。成人式は今は人生の勝ち組のための式になっているからだ。成人式が四十歳に変更になってどれくらいたつだろうか。
法律的な成人は十八才、お酒とたばこはニ十才だが、「荒れる成人式」が年を追うごとにヒートアップした結果、二十歳の成人式は廃止されたのだ。
大人になりきれない大人、精神年齢が低い成人への反動は大きく成人式をは四十歳に引き上げられた。結果、二十歳で成人式を行っていた時代には考えられぬほど、同級生の社会的地位はバラバラで、今では「社会的成功者のための式」に変質していたる。
出世の足掛かりもつかめずここまできた俺が、のこのこ出席できる式ではないし、出たくもない。それでも、俺は、今日成人したのだ。ラーメンをすすりながら心の中でつぶやいた。
「おめでとう、俺」
そして思う。ここから俺は巻き返す。人生はまだ折り返しだ。四十歳の成人式を人生の二番目のスタートラインにする。俺の逆襲はこれからだ。今までだって人生、想定外だらけだった。これから、俺が想定外に成功する可能性を誰が否定できようか。
俺は、決めているのだ。生きて生きて生き延びて八十歳で成人式を盛大にやってやるのだ、と。俺は立ち上がった。
「ごちそうさん」
店の外は寒い風が吹いていた。でも俺はわかる。やがて春はやってくる。
(おわり)
今日は俺の成人式だ。ちょうど店内のテレビのニュースも成人式をとりあげていた。目の端に画面が映り込む。インタビューを受けていたスーツ姿の男性の声が俺の心を突き刺す。
「社会に出て、家族ができ、家を建て責任感を今日改めて感じました」
次に答えた女性は訪問着だ。
「今、子育てと仕事でいっぱいいっぱいですが、二十年ぶりの同窓会で気分転換するのが楽しみです」
振袖姿がちらほら見えるが、画面は彼女たちを執拗に追うことはない。
俺の所にも招待状は来ていたが、即ゴミ箱に突っ込んだ。成人式は今は人生の勝ち組のための式になっているからだ。成人式が四十歳に変更になってどれくらいたつだろうか。
法律的な成人は十八才、お酒とたばこはニ十才だが、「荒れる成人式」が年を追うごとにヒートアップした結果、二十歳の成人式は廃止されたのだ。
大人になりきれない大人、精神年齢が低い成人への反動は大きく成人式をは四十歳に引き上げられた。結果、二十歳で成人式を行っていた時代には考えられぬほど、同級生の社会的地位はバラバラで、今では「社会的成功者のための式」に変質していたる。
出世の足掛かりもつかめずここまできた俺が、のこのこ出席できる式ではないし、出たくもない。それでも、俺は、今日成人したのだ。ラーメンをすすりながら心の中でつぶやいた。
「おめでとう、俺」
そして思う。ここから俺は巻き返す。人生はまだ折り返しだ。四十歳の成人式を人生の二番目のスタートラインにする。俺の逆襲はこれからだ。今までだって人生、想定外だらけだった。これから、俺が想定外に成功する可能性を誰が否定できようか。
俺は、決めているのだ。生きて生きて生き延びて八十歳で成人式を盛大にやってやるのだ、と。俺は立ち上がった。
「ごちそうさん」
店の外は寒い風が吹いていた。でも俺はわかる。やがて春はやってくる。
(おわり)
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