忘れていた初恋の結末

東雲さき

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その後②

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そんな充実した日々を過ごしていた今日この頃。

私は婚約者の翔太くんを連れて地元に帰省した。
一度実家に寄ったのだが、猫の餌を切らしてしまったとかで急遽お使いに駆り出され近くのドラッグストアまで来ていた。

「猫ちゃん何食べるの?カリカリ?チュール?」
「どっちも食べるよー。チュール買ってくるように言われたけど念のためカリカリも買っていこうか」

そう言ってはみたものの、如何せんカリカリの種類が多すぎる……
以前食べ慣れないのを買って結局食べなかったらしいからやめた方がいいかな。

「やっぱりやめよう。どれがいいのかわかんない」
「種類ありすぎたよね」

そう結論付けてチュールの大容量パックを手にしてお会計の方へと足を踏み出したら前方にいた男性に声を掛けられた。

「彩香?」

こういう時に条件反射で振り向いてしまう自分が憎い。
私の名前を知っているということは知り合いなんだろうけど誰だこの人。
地元で家族・親戚・近所のおばさん以外と全く関わってこなかった私には皆目見当もつかない。
ぎりぎり声で判断できるかどうかなんだけど。

「もしかして陽輝?」

男が満面の笑みを浮かべた。
当たっていたらしい。

「うわー懐かしい!元気だった?こっちに帰ってきてるの?」

矢継ぎ早に問いかけながら近寄ってきた。

「久しぶり、元気だったよ。ちょうど今日帰ってきたところ」

陽輝は私が手にしているチュールを見る。

「あ、コレ?今お使い中なの」
「そうなんだ。ねえ、いつまでいるの?今度ゆっくり話そうよ」

もしかすると話長くなりそう?

「2~3日いるけど予定詰まっているからそのうちね」

実際はそんな時間取れないだろうに、体のいい断り文句を口にして私は翔太くんの手を取った。

「あ、彼氏?」
「そうだよー、もうすぐ結婚するの!」
「そうなんだ、おめでとう!」

先ほどの勢いを削がれた陽輝はそれでもお祝いの言葉をくれた。

「ありがとう。それじゃ」

そう言い残して去ろうとしたけれど、そう簡単にはいかなかった。

「待って、連絡先教えてよ」
「えー、(めんど…)たしか私たちSNSで繋がってるよ?」
「そうだっけ?」
「うん。全く更新してないから気付かなかったんじゃない?DM送ってくれたら返すよ?」
「分かった。あとで送る」
「うん。それじゃあね」

そうして別れて帰宅した。
ちなみに猫のカリカリはお魚ミックスのジャンボパックだった。

夕食には家族と翔太くんとでちょっと良いお肉を食べに出掛けた。
見栄を張りたい父にはいつも感謝している。

就寝直前にようやく陽輝からのDMに気が付いた。
内容はというと、
『結婚おめでとう!今日は久しぶりに会えて嬉しかった。彼氏はこっちの人なの?』

「ねえねえ翔太くん、昼間にドラッグストアで声かけてきた男の人いたでしょ?」
「いたねえ。その人が?」
「DM送ってきた。結婚おめでとう、って。もう遅いから明日にでも返信してみる」
「彩香ちゃんはその人と仲良かったの?」
「どうなんだろ?中学まで一緒だったけどそのあとはとくに接点もなかったし?今では『ああ、そういえばいたねえ』くらいにしか思わないよ」

わざわざ彼が初恋の人だと言う必要もないし。

「ふーん」

納得してないな?でも掘り下げることはしないらしい。
この話は終わり、と翌日に備えて就寝した。


 ◆◆◆








お読みいただきありがとうございます!
本日18時に「その後③」を公開いたします。
ラストとなりますのでどうぞよろしくお願いいたします(*ᴗ ᴗ)⁾⁾
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