今宵、三日月に歌う

 
 落ち込んでいたある日、バイト帰りにいつもは降りない途中の駅でなんとなく降りてしまった。
 家の方角に向かって歩いていたら、おしゃれなカフェを見つけ、休憩をしようと店のドアをくぐり中へ入る。
 カフェラテを飲んでボーッとしていた。

 どこからか心地いい歌声が聞こえてきた。
 なんなんだろ? この歌。

 その後も歌のことが気になり、何度かそのカフェに行ってみた。

 あの心地いい歌声は…………

 まさか、壁に飾られてる三日月の絵から聞こえているなんて思いもしなかった。

「ぼくのことみえるの?」
「見えるよ」
 それと同時に、友達もできた。

 それは5歳の男の子、しんとだ。
 彼が歌声の正体だった。
 三日月の絵の中で。
 三日月の絵の中にひとりぼっちで閉じ込められて。

「ずっとここにいるよ」
「みかづきのひかりが……」
「ばぁばがねがいごとがかなうって」
「おにぃちゃんかわいい。ちがうぼくがいってたよ」

 謎だらけのしんとの言うことに戸惑いはあるが、助けたい気持ちでCAFE MOONに通い始めた。




※ 話の中に月映しの皓籠と言う言葉が出てきますが灯籠をもじった造語です。
 実際にはない言葉です。
 ストーリー上、何かいい言葉はないかと模索したところ、皓籠にいたりました。
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