賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第18章 サイレンス

リスペクト・ザ・タイトネス

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 推測で動くのは、愚か者のすることだ。
 彼女たちについて聞きたいことは山ほどあるが、それよりも気になるのは、先ほど彼女が左手を押さえて痛がっていたとき、どんよりした暗い魔力を感じたこと。

「アリサ、左手を見せてくれ。さっき痛がっていただろう?」

 そこにはやはり、不穏な魔力を放つ金色の指輪がはまっていた。

「これは呪いの指輪カーシド・リングじゃないのか?
「ええそうだけど?」

 アリサは当たり前のように頷いた。何が悪いのかさっぱりわかっていないようだ。

「呪いの効果は知っているのか?」
「もちろん。スターキーが私に対してネガティブな言動を取ったら、激痛が走るの」
「なに!? ではスターキー、やはり君がこの指輪を?」
「いやいや、違いますって! この指輪、彼女が自分でつけたんです。僕は関わっていません」

「しかし、呪いの指輪カーシド・リングとわかっていて、自分からはめるわけがないだろう。何のためにそんなことを?」

 その問いに答えたのは、他でもないアリサだ。
「そりゃもう、愛をのために決まってるじゃないですか! だって、彼が嫌なことがわかるんですよ。てことは、それを避ければ彼の理想の女性になれるんです! 素晴らしいじゃないですか」

「なるほど、ものは考えようだな。柔軟な発想だ」

「何を納得しかけてるんですか! そのおかげで僕は、帰って欲しいのに強く言えないし、贈り物も受け取るしかないしで、散々なんですよ」

「きっぱり断ればいいだろう」
「そんな、何か言うたびに彼女が痛がってうずくまるんですよ。強く言えるわけないじゃないですか」
「ね、スターキーって優しいでしょう?」

 なるほどな。なんだかんだでスターキーという男は優しいようだ。そのせいで泥沼にはまってしまったのだろう。不憫なことだ。

「そういえば彼ぴに指輪を贈ったと言っていたな。もしかして、その指輪にも呪いが?」
「はあ? 彼にそんなもの贈るわけないじゃないですか。何言ってるんですか、イングウェイさん」
 なんだか頭痛が痛くなってきた。これも呪いじゃなければいいのだが。

 とりあえず俺は、アリサの説得を試みる。フィッツを帰してしまったのが悔やまれる。フィッツはかなり現実的な性格をしている。こういう女性の説得には、なかなか向いていると思うのだ。

「アリサ、人を脅すのは良くないことだと習わなかったか?」
「習うというか、ふつーに法律違反ですよ。何言ってるんですか」
「わかっているならやめるんだ。君のやっていることは、脅迫でしかないぞ」
「私は好きで彼に尽くしているんです、脅迫なんかしていません!」
「逆だ逆、君がスターキーを脅しているんだ」

 まったく埒が明かない。もっとも、ちょっと説得した程度で解決するなら、ジャニ・アランの奴も俺にアリサを任せてはいなかっただろう。
 さて、どうしたものか。
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