賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第13章 闇のとばり

つかめ、なでろ、こねろ、揉め。…揉め!

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 どおーーん

 唐突に地響きが響いた。
 なんの音だろうかと考えていると、兵士たちの慌てる声が耳に入った。

「敵の襲撃だー」

 やれやれ、またか。
 思わずため息がこぼれる。
 どうやらやつらも本気らしい。今度は多数の骸骨スケルトン軍団とともにガーゴイルの群れが押し寄せて、火球を吐いたり氷塊を降らしたりとやりたい放題しているとのことだ。

 俺たちミスフィッツは、軍の指示で、ガーゴイル部隊の一部を引き受けることになった。
 しかし、その前にやることがある。


「初めまして、ギルド・ミスフィッツのメンバー、レイチェルです」
「リーダーのイングウェイだ」

「どうも、私たちは”元”フロイドのメンバーです。話は聞いていますけど、あなたたちにおとなしく従うつもりはありません」
「そもそもホルスが裏切るなんて信じられないよ! あんたたちが何かはめたんじゃないの?」
「まったく、どうでもいいけどお菓子を持ってきてくれませんこと? お腹がすきましたわ」

 ぴーちくとうるさい三人娘。
 女たちはそれぞれ、ホルスから「キペッゼ」「タイナマ」「タペルツ」と呼ばれていたらしい。
 名前の通り、見事に絶壁のメンバーが揃っていた。なんだこいつら、ホルスの趣味か?

「ええと、あなたたち、その名前について何か聞いてるんですか?」
 レイチェルが聞きにくいことをずばりと聞いた。
 タペルツが高飛車な感じで答える。
「どういうことですの? ホルスが付けてくれたあだ名ですけれど、あなたたちにはこの意味がわかると?」

 ……まあ、いいか。問題は戦力だ。

「どうせ魔法は苦手なんだろう? 武器は剣か?」

「そうだよ、3人とも軽戦士クラスで、ボクはレイピアを使ってる。後の二人も、ショートソードと弓使(アーチャー)いだよ」
「モンスターと戦った経験はあるか?」
「基本的に人捜しなんかの街中のクエストが多かったからなあ、モンスターと戦うときは、主に大剣使いのホルスがメインで、私たちはサポートだね」

 まいったな。人間相手ならともかく、モンスターを相手にするには、3人の武器は少々火力不足だ。とはいえ、嘆いている時間もない。

「仕方ない、三人には後ろで適当に応援してもらおう。敵が近づく前に俺が術で叩き落せば、問題あるまい」
 慌ててメタ梨花が反対してきた。
「なーに言ってるんですか、イングウェイさん。あなたが術を使っているところを見られたら、絶対にまた面倒なことになりますよ! ほら、魔族がどーたらって疑われて」

 俺は頭を抱える。
 そうだった。
 俺一人なら剣だけでもどうとでもなる。しかし、(応援はいらないが)戦闘に出せないメンバーを三人も抱えて守り切れるはずがない。
 ふとレイチェルを見ると、ぽんと手を打って、何やら思いついたようだ。

「イングウェイさん、この人達に戦ってもらいましょう」
「しかし、魔力もないのに……」
「あるじゃないですか、イングウェイさんには、あの手が」


 なんのことだ?
 首をかしげる俺。さっぱり飲み込めない様子の、フロイド三人娘。

「レイチェル、君は何を言っているんだ?」
「あら、忘れたんですか? 私の胸もあんなに激しく揉んだのに」
 レイチェルは艶っぽい笑みを浮かべ、三人の胸を見ながら言った。

「ああ、なるほど。魔力を増強させてやれば、この武器でも火力はあがるな」
「そうです。幸い3人とも防御的な武器ですから、自分の身を守れるくらいはできるんじゃないですか? それだけでイングウェイさんの負担もずいぶん変わると思うんですけどー」

 なるほど。
 ではさっそく揉むか。

 俺は手をにぎにぎと動かしつつ、絶壁の三人に歩み寄る。
 三人は怯えたような表情を浮かべた。

「な、なにするつもりなんですかっ!」
「ヘンタイ、ヘンターイっ!」
「ちょ、ちょっと、いきなりそんなとこ、やめてっ!?」

「うるさい、いいから胸を出せ」
 俺は彼女たちの胸を掴み、無理やり魔力を流し込む。
「いやー、そんな、服の中に手をっ!」
 流しこむと同時に、優しく揉んで固まった魔力をほぐしてやる。そうして体内にスムースに魔力の流れを作るのだ。
「ああ、なんか胸が熱いよう」
 何人もやったからな、さすがにだいぶコツがわかってきた。
「えっ、胸がどんどん盛り上がってくるの!?」

 彼女たちの胸は盛り上がり、魔力かどくどくと流れ出すのを感じた。
 あとはその魔力を形にするだけだが、集中力が残っていればいいのだが。

「はふぁ、も、もうだめ」
「か、体に力が入らないにゃあ」
「うーん、肩凝りがヒドイですのー」

 元まな板の三人は、マッサージだけでダウンしてしまった。
 魔力に慣れていない人間に、無理やり流し込んだのだ。キャスリーのときは本人に資質があったから良かったのだろうが、これが普通の反応なのかもしれない。

「えーと、どうしましょう、これ」
 レイチェルが聞いてきた。
 まるで生ゴミを見るような冷たい瞳だな。

「困ったな、しかしなんとか働いてもらうしかないだとう。少し休ませて、とにかく戦いに行くぞ」
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