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第13章 闇のとばり

Wherever I need you

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 薄暗い地下室。
 女は、壁にかけられた装飾鏡を眺めていた。そこにはイングウェイらが映し出されている。

「まったく、私って何をしているのかしら。せっかく溜めてた力を、こんなところで使っちゃうなんてね」

 両手で顔を覆い、髪をかき上げる。ため息を吐く。
 身につけている漆黒のローブがしなやかに彼女の体にまとわりつく。

 彼女の行使した時間魔術テンポラルマジックの対価は、膨大な魔力だ。幾多の転生を経験し、イングウェイをはるかに超える魔力をもつ彼女をもってしても、気軽に使えるものではない。


 手を伸ばし、テーブルの上のグラスを取る。
 薄くなったウイスキーの残りを口に含む。
 女はソファに体重を預けると、ゆっくりと瞳を閉じる。

 イングウェイを失うわけにはいかない。だが、ずっと付き合っているうちに、彼に駒以上の感情を抱いている自分に気づく。
 彼を失うわけにはいかない。それには、いくつもの意味があった。
 そして彼女は、そのためには、何人でも犠牲にするつもりだった。

「突き詰めていけば、必要なのは彼と私だけなのだ。
 彼だけが必要で、そのために何をささげてもかまわない」

 女は言葉に出し、あらためて決意を固める。次へ進むために、自分の心を確認するのだ。
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