102 / 200
第11章 パペット・パニック!
ににんばおり!
しおりを挟む次の日、ギルドハウスの庭で、俺はフィッツにけいこをつけていた。
「本当にいいのか? 相手はこんなタイプじゃないと思うんだが」
「いいんだにゃん、苦手を潰すのもいいけど、得意を伸ばすのも大切にゃん。まずはパワー、圧倒的なパワーがあれば、パリイしようとした腕ごと吹き飛ばせるにゃん!」
正しいような正しくないような……。
まあいいか、本人が納得することも大切だからな。
俺は呪文を唱え、巨大ゴーレムを作成する。
『――打ち砕け、お前の命は私が保証しよう
不幸な息子よ、土に還る前にもう一度動き出す
私の仮面を借りて、蠢くがいい
――≪自我を得る土塊≫!」
魔力で作り出した核を中心に、土の塊が集まってヒト型を成す。俺はデザインセンスがないから、ぶかっこうだがな。足より手の方が大きいし、腰回りもやけに太い。
ゴリラ型といってしまうと、ゴリラに失礼か。
しかし、作成者は俺だ。強いぞ。
起き上がったゴーレムは、すぐにフィッツにむけて剛腕を繰り出す。彼女が目指している、圧倒的なパワーってやつだな。
動きが鈍いせいか、ゴーレムの初撃はあっさりとかわされる。カウンターでパンチを繰り出すフィッツだが……。
「うななーっっ!!」
ぽいーん。
なんだあれ、パンチの音ではないな。
あっさり弾かれるフィッツ、めげないフィッツ。再びとびかかり、こんどは蹴り飛ばされる。
ううむ、見ておれん。
「おいフィッツ、ちょっと力を貸してやる」
「大丈夫だにゃー、一人でやらないと意味が――って、うあーんにゃん」
よそ見をしたところに、ゴーレムのチョップが襲い掛かる。
やれやれ。
俺は大勢を崩したフィッツの背後に回り、優しく抱きしめるように体を支える。
「にゃっ、ちょ、イングエー、なにするにゃんっ!
「二人羽織という状態だ。俺の前にいた世界では、先輩が後輩の技術を指導するときに普通に使われていた。気にするな」
「きにするなって、にあんっ、そこはおっぱいにゃん!」
「ぶつぶつ言うな、お前の体には、まだ使いこなせていない魔力がある」
俺はフィッツの胸にたまった魔力を、背後から優しくほぐしてやる。
フィッツは野生で育っただけあり、魔力による肉体操作は天性の物がある。その結果があの素早さと攻撃力の両立なのだが、残念なことに100%自分の力を使い切れているわけではない。フィッツの胸には常に一定以上の魔力をため込むように、ストッパーがかかっている。
俺は、それを野生の生存本能によるものだと推測していた。
野生の中では、戦いで勝ったとしても食べ物が無くて飢えてしまうこともある。野生の勝利とは、戦いではなく、生き残ること。
忘れかけていたが、彼女にはミルメコレオの血が流れている。食べずとも生きていけるように、彼女の胸はラクダのコブの役割を果たしているのだ。
「安心しろ、何かあっても飯くらい俺が食わせてやる」
「そ、それはもしかしてプロポーズかにゃんっ? いけないわイングウェイ、あなたにはサクラやキャスリーが、……ぶにゃあっ、このゴーレム、空気読まないにゃんっ!」
「ほら、油断するな。ちゃんと全身に回る魔力を感じろ」
俺は胸に当てた手に、ぐっと力を込める。フィッツの魔力はなかなか頑固で、強い弾力が手の平をはじき返してくる。
負けじとさらに力を込める。
「あ、あんまり強く握らないでほしいにゃん」
「我慢しろ、力を抜いて俺に体をゆだねろ。お前のためだ」
「ふ、ふにゃあぁ」
フィッツがうまい具合に脱力する。
俺は角度を変え、残った魔力も全身に循環させる。
迫るゴーレム、ふやけるフィッツ。
「今だ、やれ」
「にゃ、にゃあー!」
ばごんっ、どかっ!
弾かれたように俺の腕から抜け出したフィッツは、ゴーレムの剛腕に真正面から向かい、そのまま打ち砕いてしまった。
「ぜ、ぜはー、ぜはー、は、恥ずかしかったにゃん……」
「よくやったな、フィッツ」
「イングウェイ、お前、責任とってもらうからにゃあっ!」
「ん? よくわからんが、かまわんぞ。途中で修行を投げ出すような無責任なことはしない、安心するがいい」
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる