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第10章 ドキドキ☆ラブ・ライトニング!

クリーピング・ボア

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――黒蛇の迷宮・2――

 少し休んだ俺たちは、簡易的な食事を取りながら、作戦会議をしていた。

「さて、さっきまでの行程をもとに、立体マップを作ってみたんだが。ちょっとこれを見てくれ。――≪水晶精製クリエイト・マップ≫」
 魔術で作り出した水晶は光を発し、ダンジョン内の地図を宙に映し出す。ループしたり立体構造で入り組んでいるため、紙よりもこちらが見やすいだろう。

「なっ、ちょっとこれ、すごすぎますわ」
「だろ? ワープゾーン付きでこの構造だ。ここの製作者は、かなり性格の悪い魔術師だな」
「違いますわ、この魔法ですわ。魔法使いたちが皆こんな術が使えたなら、探索系レンジャークラスは廃業しちゃいますわよ」
「なに言ってる、マメにマッピングしながら元になる地図を書いてくれた、キャシーのおかげだろう」

 俺がぽんぽんと頭をなでてやると、褒められたキャシーは、顔を真っ赤にしてうつむいた。
 マッピングはマメさとセンスだ。これはキャスリー自身の手柄だ。そこまで照れることはないのに。

「ねえイングウェイさん、これってここの空間が欠けてますよねえ?」
「ああ、そうだ」

 ダンジョン自体は、逆ピラミッド型の構造をしている。地下1階が一番広く、下に行くほど狭くなっているのだ。
 もっともワープしまくりだったために、歩いているときはそんなこと気付きようもないのだが。
 サクラが指さしたのは、ピラミッドの中ほど。ええと、方角で言うと北側に位置する面の一角だ。
 ダンジョンの地図は完全ではないので、ところどころまだ埋まっていない通路がある。だが、それを抜きにしても、不自然な空間が空いているのだ。

「ここにボスがいるんでしょうか」
「わからんが、可能性は高い」
「では、地図をもとにして、ループにはまらないようにこの空間を目指していくことになりますわね」
「そういうことだ」

 行き先が決まれば、後は早かった。巧妙に隠されている通路を見付け、ワープゾーンを迂回する。
 1時間も歩いただろうか、俺たちは妙な扉の前に出た。


「黒蛇の紋章か。キャスリー、何か知っているか?」
「いいえ、アサルセニアの貴族の紋章にも、特に似たものはないと思いますわ」
 扉に軽く触れてみるが、かなり重たい。鍵などはかかっていないようだが、
「奥から、気配がしますね。静かですが、殺気が伝わってきます」
 さすがはサクラだ、見抜いていたな。すでに愛刀モモフクに手をかけ、臨戦態勢に入っている。

「下がれ、俺が開けよう」
 俺は二人を下がらせると、魔術でゆっくりと扉を開く。

 ぎいと錆びた音が聞こえ、次の瞬間、無数の氷塊と凍てつく吹雪が俺たちを襲う。
 あらかじめ展開していた魔法盾が、ギシギシときしんだ音を立てる。

「二人とも、中に飛び込み、すぐに散らばるんだ! 相手は冷気のブレスを吐いてくるぞ」
「「了解っ!」」

 中にいたのはぬめる皮膚をもつ大蛇だった。
 人の体ほどもある太さの尾を振り回し、飛び来むサクラを叩き落とそうとする。
「させるか。 ≪重力強化ヘビー・グラビティ≫っ!」
 大蛇の尾は、見えない網に捕えられたように動きを鈍らせる。

「おっとっと、この鈍さなら朝飯前ですよー」
 サクラは迫る尾をかわしながら、壁を蹴り、空から大蛇に切りかかった。同時にキャスリーも魔法弾を放つ。

 がぎゃう? しゃーっ!
 サクラのほうへ振り向く蛇の頭が、オレンジ色の炎に包まれる。

「えい、くらえーっ!」
 ひるんだ大蛇の首元に、モモフクが深く食い込んだ。
 サクラは飛び込んだ勢いを利用して大蛇を蹴り飛ばすと、くるくると2回転ほどしたあと着地した。
 魔力操作を覚えてから、サクラは本当に動きが変わった。もともと真面目な性格が良かったのだろう。今まで伸び悩んでいた分がまとめて返ってきたようで、すごいスピードで伸びている。

 大蛇は呻きつつも、こちらに向かい大きな口を開ける。

 させるか。止めだ。
「≪電撃ライトニングボルト≫」

 伸ばした俺の右腕から、太い電撃が走った。どおんと地鳴りのような音が響き、大蛇はこと切れた。
 ぶすぶすと焦げ臭いにおいが充満していく。

「勝ったか」
「さっすが、イングウェイさん! 絶好調ですね」
「お前たちもな。キャシー、援護のタイミングが上手くなったな」
「そうですの? えへへ」

 俺たちは奥に隠し扉を見付け、罠を確認しつつ先へ進んだ。
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