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第四章 イン・ラスト・プレイス

女の戦い~罪と罰~

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 ところ変わって、ここは王立魔法学院。

「まったくなんですの、あのキャスリーとかいう貧乏娘は!?」
「休暇から帰ってきたと思ったら、いきなり魔法の腕があがってる小娘でしょ? こっちのクラスでも噂になってたわよ」
「このままじゃ、あんた、今期の首席を取られちゃうわね。うひひー」

 キャンキャンとわめいているのは、貴族の娘たち。
 魔力とは思春期辺りから増えはじめ、そのうち成長が止まる。のが普通なのだが、たまに例外はいる。今回の例外は、キャスリー・レノンフィールド。


 レノンフィールド家といえば、古くからの武家の名門。武力はそこそこあるものの、領地の位置や経済的な問題で、王国内の立ち位置は微妙なところだった。
 そんな微妙貴族のキャスリーが、しばらく自領に帰っていたと思ったら、戻ってくるなり魔力アップ。
 いつの間にやら同じような辺境領の弱小貴族を巻き込んで、無視できぬほどの派閥を形成し始めたのだから、たちが悪い。

 キャスリーは同じ派閥の娘たちに言った。
「魔力は量も大切だけど、本当に重要なのは使い方だわ。わらわはそれを一人の素晴らしい魔術師様から教わりましたの。少ない魔力に腐ったりせず、頭を使ってのし上がるわよ」

 そのセリフ通り、キャスリーは手段にはこだわらなかった。
 姑息な手もたくさん使った。トゥシューズに画びょうをいれたり、ヒールに切れ目を入れたり。

 キャスリーは自分の手を汚すことをいとわなかった。
 キャスリーの少ない仲間たちは、そろって貧乳の娘たち。がんばれーと応援してくれるが、一人一人の力は弱い。結束は重要だ。しかし、友情の鎖はガラスよりももろいのだということを、キャスリーは知ることになる。


 その日キャスリーは、上位貴族であるメアリーを陥れるための罠を用意しようと、彼女の部屋に忍び込んでいた。
 今回は魔力パッドに書かれた紋章を改ざんして、逆に魔力を吸い出すようにしようとしたのだ。

 が、タンスを開けてパッドに触ったその瞬間、激しい痛みがキャスリーを襲った。

「きゃああーーっ!」

 その悲鳴を聞き、ばたばたとメアリー派閥の女性貴族たちが現れる。

「やっぱり、あなたでしたのね!」
「薄汚いネズミのようなやつね、キャスリー!」
「王国の恥さらしですわ!」

 不正の動かぬ証拠を突きつけられ、謹慎を命じられたキャスリー。彼女を助けるどころか、庇ってくれる者すら、誰もいなかった。
 結局彼女は、そのまま魔法学院寮の自室に引きこもることになる。



「ああ、あの方は今どうしてらっしゃるのかしら。わらわに魔法を教えてくれた、素敵なあの殿方」
 窓から月を見て思うのは、愛しき一人の魔術師。
 本来ならばこの世界にはあり得ない、男の魔術師。
 そして、キャスリーの誰も触らせたことのない神秘のふくらみ(さほどふくらんでいない)を、初めてわしづかみにした男。

 キャスリーは、恋をしていた。
 実のところ、彼女にとって貴族の中でのしあがることなど、さほど興味はなかった。もちろん、今までいじめられていた復讐といった気持ちがなかったわけではない。
 しかし、彼女の心の奥に常に変わらずあったのは、有名になればまた彼に出会えるかもしれないという、たった一つの小さな願いだった。
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