実話怪談 死相他

文字の大きさ
上 下
19 / 30

地元の幽霊タクシー

しおりを挟む
 幽霊タクシーと呼ばれる怪談の一群がある。皆さんもどこかで聞いたことがあるだろう。この話、全国津々浦々に類話が存在する。もちろん僕の地元長野県でも。

 僕の叔父さんはタクシーの運転手をしている。その叔父さんから聞いた話である。体験者は叔父さんの同僚だそうだ。

 ある雨の日の事、駅前のタクシー乗り場で、女性の一人客を乗せた。国道沿いの山道の辺りが行先だと言う。

 女は長い黒髪で雨の中傘もさしておらず、髪は濡れているようだった。どうも顔立ちが記憶できない妙な顔であったが、醜くはなくむしろ綺麗な顔立ちの様に見えたという。

 後部座席に座った女をルームミラーでチラチラ見ながら、運転手さんは色々と話しかけてみるが、女は軽く頷くだけで返事をしない。

 まあ良いかと思いながら市街地を抜け山道へ入っていく、この国道をそのまま抜ければ隣の市の市街地へ出るが、女は山道を登った先へ行きたいと呟いた。

 この先って何があったかな? なぜか思い出せない。そのまま山道を登り続けると、そこそこに大きな建物に行きついた。

「着きましたよ」と言って後部座席を見ると女がいない。「えっ!?」と思わず声を上げた。

 車を停止させ後部座席を見る、うっすらとシートが濡れているだけでやはり女はいない。茫然と辺りを見回すと、そこは火葬場だった。

 このタクシーが誰も乗せずにドアを開け閉めして走っていくところを叔父さんは見たという。その話をすると運転手さんは大そう怯えたそうである。

「いや……本当に乗せたんだって」と運転手さんは言っていたそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

機織姫

ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり

怪談実話 その2

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

ばあちゃんのお友達

ツヨシ
ホラー
ばあちゃんに初めて会いに行った。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

日常の怪

怪奇 ひろし
ホラー
令和の日常に潜む怪異の話。

処理中です...