9 / 40
第二の事件現場
しおりを挟む
本田玲子はベランダから身を乗り出して、その藪の中をじっと見つめた。
第二の殺人事件現場となったヤクザの親分の別荘は、ログハウス風の優美な建物だった。ベランダにはまだ少し血痕が残っており、備え付けの灰皿からタバコの臭いがした。
事件からあと数時間で二十四時間が経とうとしており、重要な情報もいくつか出ている。玲子は夜の闇の中を足で歩き回りネタを探していた。
「こっちの藪から犯人は侵入してきたわけね?」
「藪の中に足跡が見つかっています。もし人間だったらかなり、いや異様に大きな人物という事になります」
制服巡査はハンカチで汗を拭きながらそう言った。彼は玲子を前にするとかなり緊張するらしい。現場たたき上げの刑事にしては彼女は美しすぎた。棒有名ガンアクション漫画の女刑事のようだとよく言われる。
木々に囲まれた静かな地区なので、暑さは市街地より幾分かましだが、それでも蒸し暑い。
「靴を履いてないってことはやっぱり猛獣なのかしらね」
足跡は跳躍の瞬間に付いたものだ。鑑識の話だと数百キロの巨体を持つ生き物が跳躍したような足跡だという。
「確かに猛獣の様な咆哮を聞いたという証言はいくつかあります」
「でも、今回の足跡も該当する猛獣は無しって感じでいいのかしら?」
「そうです……我々にも何が何だか」
申し訳なさそうに制服巡査はそう言った。
「静かね……」
辺りは微かな虫の鳴き声以外何もしない。
「とりあえず犯人が現場に戻ってくることは無さそうね」
辺りには何人もの警察官とライフルを持った猟友会の若い男たちが巡回している。猟犬も駆り出されているが、例の足跡の臭いを嗅がせた猟犬が異様な怯え方をしたと言う報告も上がっている。
「被害者の情報を頂戴……ヤクザの親分って話だけど」
「被害者は金田正利六十五歳とその孫、勉君八歳です」
玲子は顎に手を当て考え始める。
「特に恨みを買う様な人物じゃあなかったって話だけど」
「はい、金田氏は夜見市で風俗店やマージャン賭博などを取り仕切っていたのですが。薬物や詐欺などには手を伸ばさず、店の方もトラブルなどはほとんどなく、ヤクザと言えども堅実な商売をしていたそうです。性格も温厚な人物だったらしく、他の暴力団等とも諍いは無かったと言われています」
ふむ、と玲子は頷きながら制服巡査の話を聞いた。
「一件目が質の悪いチンピラで、二件目がヤクザの親分……何かつながりそうなんだけど」
玲子はトントンとこめかみを指で叩く。
「一件目のチンピラは強請り、窃盗、暴力事件と色々とやらかしていたそうですね」
「犯行の残虐性も一件目の方がだいぶ上よね。一件目に比べるとこっちは仕方なくやった様に思えるのよねー」
「仕方なく……ですか」
制服巡査はじっと玲子を凝視した。この女刑事が何を言いだすのか興味があるからだろう。
「鈍器の様なものを使って一発で殴り殺している。藪の中の巨大な足跡、見えない猛獣の姿……」
黙考する姿はミステリアスな美女と言う感じだった。かなりの切れ者という評判で、この事件でも主導的な地位にいる。
「私たちも少し外を歩こうかしら」
「はい……御供します」
玲子はベランダの階段をおり、藪へ向かって歩いた。足跡の近辺がテープで囲ってある。玲子は慎重にテープをくぐると足跡にライトを当てた。
「確かに……大きい。体重もかなりありそうね」
一見すると車のスリップ痕にも見えそうな足跡だ。
「この跳躍一発でベランダまで飛んだのかしら?」
「次の足跡はもうベランダの中なんだそうです」
「凄まじい敏捷性……この巨体で?」
玲子の顔が険しくなる。もしこれが猛獣だとしたら、恐ろしい相手だ。
「少し藪の中も見てみましょうか」
足跡を崩さないよう気を付けながらその場を離れ藪の中に入る。
「うわ……凄い……何も見えないじゃない」
原生林に一歩入ると、そこは漆黒の闇だった。
「こんな中を進んできたわけ?」
「夜目が利いたんでしょうかね?」
「やっぱり野生の獣並みの能力はあるようね」
真実が明らかになるにつれ、より不可解になっていく、こんな事件は玲子も初めてだ。
「何か引っかかったりしてないかしら」
付近の木や草には特に変わったところは無かった。
「草木を薙ぎ払って進んだんじゃなくて、器用に避けて進んでる? やっぱりこの藪の中でも見えていたのかしら」
「そういう猛獣がいるように見せかけたトリックじゃないかっていう人もいるんですが」
「私もそうあって欲しいとは思うけどね」
トリックにしては出来過ぎている、よしんば足跡や歯形が偽装できたとして、機械も使わずに人間をバラバラにしたり、鈍器の一発で鮮やかに絶命させることが出来るのか疑問だった。
虫の鳴き声、緑のむせ返るような匂い、足元の雑草。闇の中から何かがこちらを見ている様な気がして、背筋がひやりとした。
「藪の中に逃げ込まれたんじゃ、防犯カメラにも写らないし、追跡は困難ね」
「はい……元々この付近には防犯カメラも少なく、やはりカメラには何も写っていませんでした。まだ解析中の映像もありますが、犯行時刻前後の映像には当たりは無しですね」
制服巡査が顔にたかってくる羽虫を払いながらそう言った。
「そこよね……数百キロの体重がある、大型の獣がカメラはおろか人目にもつかず神出鬼没に殺人を犯す。そこが一番の謎よね」
玲子が腕を組む。考えても答えは出ない。
「ここら辺の防犯カメラってどんな場所に設置されてるの?」
「はい……まずは警備会社に登録してある別荘のカメラと、あとはゴミ捨て場ですね」
「獣だったらゴミ捨て場の食べ物の臭いに釣られて姿を現してもおかしくはないわね」
「それがゴミ捨て場のカメラに写っているのはカラスやせいぜい狸くらいでして、熊の姿すらなかったそうです」
う~んと玲子は唸る。何か手がかりが欲しい。
「その怪物……昼間は何をしているんでしょうね?」
額の汗をハンカチで拭いながら制服巡査がそう言った。
「昼間? やっぱり隠れているんじゃないかしら?」
玲子は何か引っかかるものを感じた。
「藪の中にずっと隠れている様な生き物が、なぜ最初は市街地で犯行に及んだんでしょう?」
「そうね……そうよね」
玲子は制服巡査の肩を掴んで、顔を覗き込む。美貌に見つめられた巡査は思わずたじろぐ。
「な……何でしょう? 警部」
「貴方……なかなか良いところに目を付けたわね」
そうだ。誰も昼間にうろついている民間人なんかに注意は払わなかった。最初から大きな獣を探していたからだ。
「もう一度、防犯カメラを洗うわよ」
もしこの事件が大型の獣がいるように装った事件なら、いや玲子が思っている様な伝説上の怪物が犯人なら、普段のその姿は普通の人間の様に見えるのでは?
市街地での犯行ではきっと普通の人間の姿で現場から立ち去っている。この別荘にも昼間の間、下見に来ているかもしれない。
「防犯カメラのデータはどこにあるの?」
「はいっ! 対策本部のある夜見警察署の第一資料室に保管されていると思いますけど」
「すぐに行くわよ」
藪をかき分けて別荘の前に出る、うっそうとした闇の世界から光が差す場所に出ると、やはりほっとする。虫の鳴き声が少しだけ遠ざかった。ここが人里との境界線なんだろう。
すぐ近くに停めてあるパトカーに向かって歩く。
「あ、自分が運転します」
「よろしくね。あと今夜は徹夜だからね」
「はいっ! 御供します」
二人が乗り込むと、唸りをあげてパトカーが発進した。
第二の殺人事件現場となったヤクザの親分の別荘は、ログハウス風の優美な建物だった。ベランダにはまだ少し血痕が残っており、備え付けの灰皿からタバコの臭いがした。
事件からあと数時間で二十四時間が経とうとしており、重要な情報もいくつか出ている。玲子は夜の闇の中を足で歩き回りネタを探していた。
「こっちの藪から犯人は侵入してきたわけね?」
「藪の中に足跡が見つかっています。もし人間だったらかなり、いや異様に大きな人物という事になります」
制服巡査はハンカチで汗を拭きながらそう言った。彼は玲子を前にするとかなり緊張するらしい。現場たたき上げの刑事にしては彼女は美しすぎた。棒有名ガンアクション漫画の女刑事のようだとよく言われる。
木々に囲まれた静かな地区なので、暑さは市街地より幾分かましだが、それでも蒸し暑い。
「靴を履いてないってことはやっぱり猛獣なのかしらね」
足跡は跳躍の瞬間に付いたものだ。鑑識の話だと数百キロの巨体を持つ生き物が跳躍したような足跡だという。
「確かに猛獣の様な咆哮を聞いたという証言はいくつかあります」
「でも、今回の足跡も該当する猛獣は無しって感じでいいのかしら?」
「そうです……我々にも何が何だか」
申し訳なさそうに制服巡査はそう言った。
「静かね……」
辺りは微かな虫の鳴き声以外何もしない。
「とりあえず犯人が現場に戻ってくることは無さそうね」
辺りには何人もの警察官とライフルを持った猟友会の若い男たちが巡回している。猟犬も駆り出されているが、例の足跡の臭いを嗅がせた猟犬が異様な怯え方をしたと言う報告も上がっている。
「被害者の情報を頂戴……ヤクザの親分って話だけど」
「被害者は金田正利六十五歳とその孫、勉君八歳です」
玲子は顎に手を当て考え始める。
「特に恨みを買う様な人物じゃあなかったって話だけど」
「はい、金田氏は夜見市で風俗店やマージャン賭博などを取り仕切っていたのですが。薬物や詐欺などには手を伸ばさず、店の方もトラブルなどはほとんどなく、ヤクザと言えども堅実な商売をしていたそうです。性格も温厚な人物だったらしく、他の暴力団等とも諍いは無かったと言われています」
ふむ、と玲子は頷きながら制服巡査の話を聞いた。
「一件目が質の悪いチンピラで、二件目がヤクザの親分……何かつながりそうなんだけど」
玲子はトントンとこめかみを指で叩く。
「一件目のチンピラは強請り、窃盗、暴力事件と色々とやらかしていたそうですね」
「犯行の残虐性も一件目の方がだいぶ上よね。一件目に比べるとこっちは仕方なくやった様に思えるのよねー」
「仕方なく……ですか」
制服巡査はじっと玲子を凝視した。この女刑事が何を言いだすのか興味があるからだろう。
「鈍器の様なものを使って一発で殴り殺している。藪の中の巨大な足跡、見えない猛獣の姿……」
黙考する姿はミステリアスな美女と言う感じだった。かなりの切れ者という評判で、この事件でも主導的な地位にいる。
「私たちも少し外を歩こうかしら」
「はい……御供します」
玲子はベランダの階段をおり、藪へ向かって歩いた。足跡の近辺がテープで囲ってある。玲子は慎重にテープをくぐると足跡にライトを当てた。
「確かに……大きい。体重もかなりありそうね」
一見すると車のスリップ痕にも見えそうな足跡だ。
「この跳躍一発でベランダまで飛んだのかしら?」
「次の足跡はもうベランダの中なんだそうです」
「凄まじい敏捷性……この巨体で?」
玲子の顔が険しくなる。もしこれが猛獣だとしたら、恐ろしい相手だ。
「少し藪の中も見てみましょうか」
足跡を崩さないよう気を付けながらその場を離れ藪の中に入る。
「うわ……凄い……何も見えないじゃない」
原生林に一歩入ると、そこは漆黒の闇だった。
「こんな中を進んできたわけ?」
「夜目が利いたんでしょうかね?」
「やっぱり野生の獣並みの能力はあるようね」
真実が明らかになるにつれ、より不可解になっていく、こんな事件は玲子も初めてだ。
「何か引っかかったりしてないかしら」
付近の木や草には特に変わったところは無かった。
「草木を薙ぎ払って進んだんじゃなくて、器用に避けて進んでる? やっぱりこの藪の中でも見えていたのかしら」
「そういう猛獣がいるように見せかけたトリックじゃないかっていう人もいるんですが」
「私もそうあって欲しいとは思うけどね」
トリックにしては出来過ぎている、よしんば足跡や歯形が偽装できたとして、機械も使わずに人間をバラバラにしたり、鈍器の一発で鮮やかに絶命させることが出来るのか疑問だった。
虫の鳴き声、緑のむせ返るような匂い、足元の雑草。闇の中から何かがこちらを見ている様な気がして、背筋がひやりとした。
「藪の中に逃げ込まれたんじゃ、防犯カメラにも写らないし、追跡は困難ね」
「はい……元々この付近には防犯カメラも少なく、やはりカメラには何も写っていませんでした。まだ解析中の映像もありますが、犯行時刻前後の映像には当たりは無しですね」
制服巡査が顔にたかってくる羽虫を払いながらそう言った。
「そこよね……数百キロの体重がある、大型の獣がカメラはおろか人目にもつかず神出鬼没に殺人を犯す。そこが一番の謎よね」
玲子が腕を組む。考えても答えは出ない。
「ここら辺の防犯カメラってどんな場所に設置されてるの?」
「はい……まずは警備会社に登録してある別荘のカメラと、あとはゴミ捨て場ですね」
「獣だったらゴミ捨て場の食べ物の臭いに釣られて姿を現してもおかしくはないわね」
「それがゴミ捨て場のカメラに写っているのはカラスやせいぜい狸くらいでして、熊の姿すらなかったそうです」
う~んと玲子は唸る。何か手がかりが欲しい。
「その怪物……昼間は何をしているんでしょうね?」
額の汗をハンカチで拭いながら制服巡査がそう言った。
「昼間? やっぱり隠れているんじゃないかしら?」
玲子は何か引っかかるものを感じた。
「藪の中にずっと隠れている様な生き物が、なぜ最初は市街地で犯行に及んだんでしょう?」
「そうね……そうよね」
玲子は制服巡査の肩を掴んで、顔を覗き込む。美貌に見つめられた巡査は思わずたじろぐ。
「な……何でしょう? 警部」
「貴方……なかなか良いところに目を付けたわね」
そうだ。誰も昼間にうろついている民間人なんかに注意は払わなかった。最初から大きな獣を探していたからだ。
「もう一度、防犯カメラを洗うわよ」
もしこの事件が大型の獣がいるように装った事件なら、いや玲子が思っている様な伝説上の怪物が犯人なら、普段のその姿は普通の人間の様に見えるのでは?
市街地での犯行ではきっと普通の人間の姿で現場から立ち去っている。この別荘にも昼間の間、下見に来ているかもしれない。
「防犯カメラのデータはどこにあるの?」
「はいっ! 対策本部のある夜見警察署の第一資料室に保管されていると思いますけど」
「すぐに行くわよ」
藪をかき分けて別荘の前に出る、うっそうとした闇の世界から光が差す場所に出ると、やはりほっとする。虫の鳴き声が少しだけ遠ざかった。ここが人里との境界線なんだろう。
すぐ近くに停めてあるパトカーに向かって歩く。
「あ、自分が運転します」
「よろしくね。あと今夜は徹夜だからね」
「はいっ! 御供します」
二人が乗り込むと、唸りをあげてパトカーが発進した。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
8年間未来人石原くん。
七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。
「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」
と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず)
これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。
サッカーに注げた僕らの青春
千音 兎輝
青春
中学一年の終わりにサッカー部に入部した伊織 輝は恵まれたセンス(?)でいきなりレギュラー入り。しかしこのサッカー部は変態や奇人ばかり。本当に都大会まで行けるのか!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
Cutie Skip ★
月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。
自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。
高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。
学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。
どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。
一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。
こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。
表紙:むにさん
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる