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襲撃
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「裏切り者のカラクリ使いに、ブードゥーのバーサーカー共にSランクの魔術師で魔王教団の構成員です。皆さん注意を」
カラクリ使いはまたどこかに隠れているようだ。バーサーカーは身長百七十センチ前後、痩せ型の男で黒のネクタイにスーツ、そこに動物の毛皮のマスクと異様な姿だった。
男達が動く前にまずリザードマンがワラワラと寄ってきた。
当摩がすかさず応じる。しかし、本来ならてんでバラバラに襲ってくるはずのリザードマンが連携した動きを見せた。
「このリザードマン達、操られているな」
恐らくカラクリ使いの魔術だろう。
「わっ! わっ! 強い」
その当摩の姿を見て、カラクリ使いの男の声が言った。嘲笑まじりの嫌な声だ。
「その男、俺のゴーレムが全く通用しなかったが、雑魚どもの剣は効くのか、あいつの相手はバーサーカーお前に任せる」
バーサーカーは荒い息をつきながら、当摩に向かってにじり寄ってきた。
次の瞬間、当摩の付近が閃光に包まれ、銃声のような爆発音が鳴った。付近にいたリザードマンが吹き飛ばされる。
「ほう、なかなかやるなサンダーメイジ」
京史の雷撃だった。リザードマンには効果てきめんだったが、バーサーカーの魔法障壁はわずかしか削れなかった。
「その男、ゾンビパウダーを大量に服薬していて、痛みや恐怖を感じません。物理的に敵を完全無力化する必要があります」
「完全無力化っていっても」
当摩は冷や汗をかいた。訓練を受けた今だからこそわかる。このバーサーカーという男は凄まじい使い手だ。
「リザードマンは出来るだけ僕の雷撃で倒す。当摩はバーサーカーに集中してくれ」
「う、うん」
まずは上段に構えて一気に接近、振り下ろす一撃で相手の力量を見る。
ガイィィン‼
当摩の強力な一撃でもバーサーカーはビクともしなかった。
(体格的にそこまでの筋力はなさそうだし、受けた際にたいして魔力を使ってない、なのにこの怪力。ゾンビパウダーってやつの効果か)
「ふ――――っ!」
バーサーカーが反撃してくる。巨大な幅広の剣で袈裟斬りに来た。反射的に受ける。
剣が鳴り火花を散らす。
「くぅぅぅっ! 重いっ!」
「当摩! 下がれ」
全力でバックステップをする。そこへ特大の雷が落ちた。凄まじい轟音と閃光。
集まってきていたリザードマンが吹き飛ばされ、バーサーカーの魔法障壁もかなり削れた。
「これが僕の本気の一撃だが、やっぱり倒しきれないか」
「連発は?」
「無理だ」
※
(魔王教団、ここで動いたか。狙いはたぶん私だな。ゴーレムを何とかしのいで戦士当摩へ加勢をしたいが)
「エリカちゃん、ここはわたしが囮になる」
「ダメですよ。奴らの目的は十中八九ジェシカさんです。わたしたちはここで死んでも復活できるんですから」
「だからこそわたしが囮になれば必ず喰いついてくるだろう」
次の瞬間にはジェシカはもう走り出していた。
「ゴーレムにはemeth(真理)という文字が刻まれている。こいつ隠すつもりもなく額にある。頭の一文字を削ってmeth(死)にすれば土くれにかえる。エリカちゃん頼む」
ジェシカは歴戦の勇士、魔王教団の使ってくる魔術にも詳しい。
「あ~もう、だから囮はわたしが」
「もう遅いよ」
ゴーレムが振り下ろしてくる断頭台の刃のような攻撃を、信じられないような身軽さで回避しまくるジェシカにエリカも驚く。
「すっ……凄い、ここまでなんて」
魔力の総量ではエリカの方が上だが、テクニックはジェシカの方が遥かに上だ。
ゴーレムは前回の三分の一以下の大きさだった。スピード重視のセッティングをしてあるのだろう、十八メートルの大きさだった時の愚鈍な動きとはキレが全く違う。
人の身長ほどもある大きな剣で素早い斬撃をくりだしてくるが。
「無駄だっ! 見える」
ジェシカにその剣はかすりもしなかった。
しかし。
「逃げてるだけじゃ、いずれ体力が尽きるぞ」
(額の文字を消す以外には、術者を見つけて倒すことが出来ればいいけど、こいつかなり用心して気配を消してる)
額に汗が浮いてくる。
「まだまだよ」
「突撃します。ジェシカさんは回避を」
エリカはゴーレムの胴へ強烈な一撃を叩き込む、同じSランクの剣だ。ある程度は効果があるかと思ったが。
「ダメです。かなり硬い」
力で破壊することは無理そうだ。
※
(くそ……こいつ本当にしぶとい。ジェシカさんを守らなきゃいけないのに)
京史と連携して戦っているがバーサーカーの魔法障壁は削り切れない。
当摩と京史も障壁の残量がだんだん心もとなくなってくる。
そしてついに。
「くうっ!」
大剣が京史の脇腹をかすめ、ぱっと赤く血が滲んだ。
「京史君っ!」
「気にするな、ここで僕がやられても実際に死ぬわけじゃない。こいつさえ倒してしまえばゴーレムの攻撃は当摩には効かない。大事なのはジェシカさんを守ることだ」
「ふふふ」
バーサーカーが不気味に笑う。
当摩は剣を正眼に構える。
バーサーカーは左手に炎を作ると大剣に塗った。大剣が真っ赤に燃えあがる。
(チャンスだ)
急速に集中力がまして、敵がスローに見える。この一週間の訓練で当摩は確実に以前より強くなっていた。
(そう……戦いには駆け引きがあるんだ)
バーサーカーは燃える大剣を上段に振りかぶる。そのまま当摩の頭をめがけて打ち下ろして来た。
当摩は正眼に構えた剣でそのままバーサーカーの心臓を狙う。
二人が交叉した。わずかにバーサーカーの剣の方が早い。しかし当摩は迷わずバーサーカーの心臓を狙いに行った。
「当摩――っ!」
京史が叫ぶ。
「ぶっ……ぶほっ」
バーサーカーの口から血があふれ出る。バーサーカーの大剣は当摩の頭すれすれの位置で止まっていた。
剣がまとっている炎は当摩に火傷一つ負わせることも出来なかった。
そして、当摩の剣は完璧にバーサーカーの心臓を貫いていた。
「そうか……魔法剣だから」
当摩に魔法は一切効かない。剣に魔法を帯びさせてしまった段階で、もうその攻撃は無効だ。
「ぶっ……ふふふふ……」
笑いながらバーサーカーは死に、身体が塵にかえっていく。召喚勇者なので実際に死ぬわけではないが、その肉体の再構成には多量の魔力を必要とするだろう。
「よっしっ! 勝利確定」
わき目もふらず当摩はゴーレムのところへ向かう。
「どうやら、ここまでのようだな。でも、悪いがハーフエルフの命だけは貰っていくよ」
ガクンッと音がして、糸の切れた操り人形のようにゴーレムが停止する。
「まずいっ! 自爆だっ! 当摩っ!」
(やばいっ! やばいっ!)
全速力でジェシカの元へ駆け寄る。
ド――――ンッ!
京史の雷光よりもさらに大きいような爆発が起きる。真っ赤な火炎が凄まじいスピードで広がってくる。
すんでのところで当摩はジェシカに覆いかぶさった。
「…………」
「うう……この爆発……魔法じゃなくて爆薬か……」
当摩の背中は爆発に巻き込まれ酷い有様だった。
「当摩君っ!」
エリカが駆け寄ってくる。その顔は青ざめていた。
「ジェシカさんは?」
「戦士当摩、わたしなら無事だ。貴殿のおかげで……ありがとう」
「うん、よかった……俺の傷……致命傷だろ? さっきから痛くって痛くって」
「当摩君……」
「エリカちゃん……楽にしてくれ」
エリカが剣を抜く。その手が震えていた。
「いや、まだ助かる。戦士当摩のため込んだ経験値を失わせることはない」
ジェシカがベルトのポーチから小瓶を取り出す。
「わたしのなけなしのお金で買った最上級魔法薬だ」
「そんな……いけないよジェシカさん」
「何……気にすることはない。戦士当摩はわたしの命の恩人だ」
ジェシカは瓶の栓を抜いて、当摩の傷に薬をかけた。
「あ……」
みるみるうちに身体が再生していく。
「う、ううん」
当摩がゆっくりと立ち上る。
「凄い、もう痛くない」
「鎧とお洋服を新調しないとですね」
よく見ると当摩の衣服や鎧はボロボロだった。
「はぁ……何か凄く疲れた」
「邪魔な横やりが入ったが、戦士当摩! 見事な戦いぶりだった。最終試験は合格でいいだろう」
「やりましたね当摩君」
「はは……嬉しいけど、なんかフラフラする……あれ?」
そのまま当摩の意識はブラックアウトしていった。
カラクリ使いはまたどこかに隠れているようだ。バーサーカーは身長百七十センチ前後、痩せ型の男で黒のネクタイにスーツ、そこに動物の毛皮のマスクと異様な姿だった。
男達が動く前にまずリザードマンがワラワラと寄ってきた。
当摩がすかさず応じる。しかし、本来ならてんでバラバラに襲ってくるはずのリザードマンが連携した動きを見せた。
「このリザードマン達、操られているな」
恐らくカラクリ使いの魔術だろう。
「わっ! わっ! 強い」
その当摩の姿を見て、カラクリ使いの男の声が言った。嘲笑まじりの嫌な声だ。
「その男、俺のゴーレムが全く通用しなかったが、雑魚どもの剣は効くのか、あいつの相手はバーサーカーお前に任せる」
バーサーカーは荒い息をつきながら、当摩に向かってにじり寄ってきた。
次の瞬間、当摩の付近が閃光に包まれ、銃声のような爆発音が鳴った。付近にいたリザードマンが吹き飛ばされる。
「ほう、なかなかやるなサンダーメイジ」
京史の雷撃だった。リザードマンには効果てきめんだったが、バーサーカーの魔法障壁はわずかしか削れなかった。
「その男、ゾンビパウダーを大量に服薬していて、痛みや恐怖を感じません。物理的に敵を完全無力化する必要があります」
「完全無力化っていっても」
当摩は冷や汗をかいた。訓練を受けた今だからこそわかる。このバーサーカーという男は凄まじい使い手だ。
「リザードマンは出来るだけ僕の雷撃で倒す。当摩はバーサーカーに集中してくれ」
「う、うん」
まずは上段に構えて一気に接近、振り下ろす一撃で相手の力量を見る。
ガイィィン‼
当摩の強力な一撃でもバーサーカーはビクともしなかった。
(体格的にそこまでの筋力はなさそうだし、受けた際にたいして魔力を使ってない、なのにこの怪力。ゾンビパウダーってやつの効果か)
「ふ――――っ!」
バーサーカーが反撃してくる。巨大な幅広の剣で袈裟斬りに来た。反射的に受ける。
剣が鳴り火花を散らす。
「くぅぅぅっ! 重いっ!」
「当摩! 下がれ」
全力でバックステップをする。そこへ特大の雷が落ちた。凄まじい轟音と閃光。
集まってきていたリザードマンが吹き飛ばされ、バーサーカーの魔法障壁もかなり削れた。
「これが僕の本気の一撃だが、やっぱり倒しきれないか」
「連発は?」
「無理だ」
※
(魔王教団、ここで動いたか。狙いはたぶん私だな。ゴーレムを何とかしのいで戦士当摩へ加勢をしたいが)
「エリカちゃん、ここはわたしが囮になる」
「ダメですよ。奴らの目的は十中八九ジェシカさんです。わたしたちはここで死んでも復活できるんですから」
「だからこそわたしが囮になれば必ず喰いついてくるだろう」
次の瞬間にはジェシカはもう走り出していた。
「ゴーレムにはemeth(真理)という文字が刻まれている。こいつ隠すつもりもなく額にある。頭の一文字を削ってmeth(死)にすれば土くれにかえる。エリカちゃん頼む」
ジェシカは歴戦の勇士、魔王教団の使ってくる魔術にも詳しい。
「あ~もう、だから囮はわたしが」
「もう遅いよ」
ゴーレムが振り下ろしてくる断頭台の刃のような攻撃を、信じられないような身軽さで回避しまくるジェシカにエリカも驚く。
「すっ……凄い、ここまでなんて」
魔力の総量ではエリカの方が上だが、テクニックはジェシカの方が遥かに上だ。
ゴーレムは前回の三分の一以下の大きさだった。スピード重視のセッティングをしてあるのだろう、十八メートルの大きさだった時の愚鈍な動きとはキレが全く違う。
人の身長ほどもある大きな剣で素早い斬撃をくりだしてくるが。
「無駄だっ! 見える」
ジェシカにその剣はかすりもしなかった。
しかし。
「逃げてるだけじゃ、いずれ体力が尽きるぞ」
(額の文字を消す以外には、術者を見つけて倒すことが出来ればいいけど、こいつかなり用心して気配を消してる)
額に汗が浮いてくる。
「まだまだよ」
「突撃します。ジェシカさんは回避を」
エリカはゴーレムの胴へ強烈な一撃を叩き込む、同じSランクの剣だ。ある程度は効果があるかと思ったが。
「ダメです。かなり硬い」
力で破壊することは無理そうだ。
※
(くそ……こいつ本当にしぶとい。ジェシカさんを守らなきゃいけないのに)
京史と連携して戦っているがバーサーカーの魔法障壁は削り切れない。
当摩と京史も障壁の残量がだんだん心もとなくなってくる。
そしてついに。
「くうっ!」
大剣が京史の脇腹をかすめ、ぱっと赤く血が滲んだ。
「京史君っ!」
「気にするな、ここで僕がやられても実際に死ぬわけじゃない。こいつさえ倒してしまえばゴーレムの攻撃は当摩には効かない。大事なのはジェシカさんを守ることだ」
「ふふふ」
バーサーカーが不気味に笑う。
当摩は剣を正眼に構える。
バーサーカーは左手に炎を作ると大剣に塗った。大剣が真っ赤に燃えあがる。
(チャンスだ)
急速に集中力がまして、敵がスローに見える。この一週間の訓練で当摩は確実に以前より強くなっていた。
(そう……戦いには駆け引きがあるんだ)
バーサーカーは燃える大剣を上段に振りかぶる。そのまま当摩の頭をめがけて打ち下ろして来た。
当摩は正眼に構えた剣でそのままバーサーカーの心臓を狙う。
二人が交叉した。わずかにバーサーカーの剣の方が早い。しかし当摩は迷わずバーサーカーの心臓を狙いに行った。
「当摩――っ!」
京史が叫ぶ。
「ぶっ……ぶほっ」
バーサーカーの口から血があふれ出る。バーサーカーの大剣は当摩の頭すれすれの位置で止まっていた。
剣がまとっている炎は当摩に火傷一つ負わせることも出来なかった。
そして、当摩の剣は完璧にバーサーカーの心臓を貫いていた。
「そうか……魔法剣だから」
当摩に魔法は一切効かない。剣に魔法を帯びさせてしまった段階で、もうその攻撃は無効だ。
「ぶっ……ふふふふ……」
笑いながらバーサーカーは死に、身体が塵にかえっていく。召喚勇者なので実際に死ぬわけではないが、その肉体の再構成には多量の魔力を必要とするだろう。
「よっしっ! 勝利確定」
わき目もふらず当摩はゴーレムのところへ向かう。
「どうやら、ここまでのようだな。でも、悪いがハーフエルフの命だけは貰っていくよ」
ガクンッと音がして、糸の切れた操り人形のようにゴーレムが停止する。
「まずいっ! 自爆だっ! 当摩っ!」
(やばいっ! やばいっ!)
全速力でジェシカの元へ駆け寄る。
ド――――ンッ!
京史の雷光よりもさらに大きいような爆発が起きる。真っ赤な火炎が凄まじいスピードで広がってくる。
すんでのところで当摩はジェシカに覆いかぶさった。
「…………」
「うう……この爆発……魔法じゃなくて爆薬か……」
当摩の背中は爆発に巻き込まれ酷い有様だった。
「当摩君っ!」
エリカが駆け寄ってくる。その顔は青ざめていた。
「ジェシカさんは?」
「戦士当摩、わたしなら無事だ。貴殿のおかげで……ありがとう」
「うん、よかった……俺の傷……致命傷だろ? さっきから痛くって痛くって」
「当摩君……」
「エリカちゃん……楽にしてくれ」
エリカが剣を抜く。その手が震えていた。
「いや、まだ助かる。戦士当摩のため込んだ経験値を失わせることはない」
ジェシカがベルトのポーチから小瓶を取り出す。
「わたしのなけなしのお金で買った最上級魔法薬だ」
「そんな……いけないよジェシカさん」
「何……気にすることはない。戦士当摩はわたしの命の恩人だ」
ジェシカは瓶の栓を抜いて、当摩の傷に薬をかけた。
「あ……」
みるみるうちに身体が再生していく。
「う、ううん」
当摩がゆっくりと立ち上る。
「凄い、もう痛くない」
「鎧とお洋服を新調しないとですね」
よく見ると当摩の衣服や鎧はボロボロだった。
「はぁ……何か凄く疲れた」
「邪魔な横やりが入ったが、戦士当摩! 見事な戦いぶりだった。最終試験は合格でいいだろう」
「やりましたね当摩君」
「はは……嬉しいけど、なんかフラフラする……あれ?」
そのまま当摩の意識はブラックアウトしていった。
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