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こっくりさん
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「うわぁ……綺麗だな」
「まさに絶景ね」
神奈がそう言って目を細めて遠く地平から差しこんでくる光を見た。
(朝日も綺麗だけど、やっぱり神奈ちゃんも綺麗だな)
青の塔最上階のテラスから昇る朝日を写真に撮っていく。透のカメラさばきはかなり手慣れていて、良い感じの写真を何枚も撮った。
「ありがとう、黒崎さんに当摩君と加奈美先生も」
「一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなって良かったわ、さすがは黒の魔女ね」
「あのゴーレム凄かったけど、あんなのに狙われてるなんて」
透は申し訳ないと言いたげな顔をした。
「わたしにとってはあの程度、ピクニックに行った先でパグの子犬に出会った程度のイベントよ」
「そんな楽し気なイベントだったかしら」
加奈美は呆れていた。
「よく解らない例えだけど、神奈ちゃんが凄いのはよく解った」
若干二名はドン引きしていたが、当摩は割と平然としていた。段々慣れてきているのだった。
「凄いと言えば当摩君もあんな大きな剣を三度も受けても平気だし、あの爆心地から無傷で生還とは恐れ入るわね。何かのエキストラスキルかしら?」
「そこは一応秘密よ」
「そう?」
(んっ……何か背筋がヒヤッとしたな)
加奈美が自分を見る目が、一瞬だけ険しかった気がした。
「それじゃあ、撮り終った写真はプリントアウトして、透君のお母様に見てもらいましょう」
「えっ⁉ それはどういう意味なの? 黒崎さん」
「今日の放課後、写真を持ってオカ研の部室に来なさい」
※
「結論から言ってしまうと、透君のお母さんを呼び出すことは可能、ほぼ百パーセント、一発で召喚できると思う」
梨花は手で十円玉をもてあそびながらそう言った。
「ほ……本当に?」
透が訊くと梨花はぐっとサムズアップを見せた。
そう、梨花の得意魔術はこっくりさん、降霊による占いなのだ。
「呼び出されたこっくりさんは間違えなく透君のお母さんだから、絶対にこっくりさんへあなたは誰? とは訊かないでね」
透、神奈、梨花と当摩の四人で丸テーブルを囲んでいる。テーブルの中央には鳥居のマークにはい、いいえ、そして五十音と数字の書かれた紙がある。
京史は少し離れたところにいて、非常時用に待機していた。
「心の準備はオーケー? できたら始めるわよ」
皆が頷く。当摩はちょっとだけビビっていた。
鳥居のマークの上に十円玉をのせ、四人は人差し指をコインの上へ重ねた。
「「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいで下さいませ。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」
四人がそう言うとコインは滑らかに『はい』へ向かう。
「よしっ! 来た」
「ひあっ!」
次の瞬間当摩は情けない声を上げてしまった。なんと丸テーブルの脇、透の隣に上半身だけの女性が薄く浮かびあがったからだ。
「母さん……」
それは紛れもなく透の母だった。
「当摩はしゃんとしなさい。梨花のこっくりさんは紛れもない大魔術よ。このぐらいの霊現象は当然よ」
「う、うん」
(幽霊って本当にいたんだな)
「じゃあまずは私から行くわね」
神奈が先陣をきる。
「こっくりさん、テーブルの上の写真はどうですか?」
す ご く き れ い わ た し の す き な は な。
み た か っ た あ さ ひ。
「次はあたし、行きます」
梨花は魔術が上手くいき、得意満面な様子。
「こっくりさんは透君をいつも見守っているんですか?」
『はい』
透の目にじわっと涙が浮かぶ。
「次は当摩よ」
「う、うん」
(まずい……何を訊くか全然考えてなかった)
「えっ……と、こっくりさん、透君の好物の焼きそばパンはどうやって作ってるんですか?」
い え の れ い ぞ う こ の わ き に の ー と が あ る そ こ に か い て あ る。
「わわっ、ホントに答えた」
「何聞いてるのって言いたいけど、これはお手柄ね」
「さっ……最後は透君よ。あなたは何を聞きたいの?」
「こ……こっくりさん、母さんがいなくなって、僕……どうしていいのか解んないよ」
透の目から涙がポロポロこぼれた。
あ な た な ら だ い じ ょ う ぶ。
あ い し て る つ よ く い き て。
「うっ……母さんっ!」
そして、透はしばらく泣いた。それを優し気に見ていた母の幽霊はやがてふっと消えた。
こっくりさんを送りかえし、儀式はおわった。
※
「透君……大丈夫かな?」
「お母さんも言ってたじゃない、彼なら大丈夫よ」
「うん……だといいよね」
当摩が頷く。
透は赤く目をはらしたまま、皆に礼をのべ部室を後にした。
当摩達は例のごとくお茶会を始めていた。今日のお菓子はベイクドチーズケーキに飲み物はマラウイのチャリティーコーヒーだ。
「ふはぁ……生き返るわ、久々の魔術であたしは疲れました」
「梨花ちゃん本当にご苦労様。しかし京史君と梨花ちゃんも本当に魔術師だったんだね」
「なにをいまさらよ。まあ変な人度合いだと、神奈ちゃんと当摩君がツートップよどっちも人智を超越してるしね」
「俺は普通じゃないかな?」
「絶対ないわぁ」
わいわいがやがやと雑談をしていると、部室に加奈美先生が顔を出した。
「やっほー。こっくりさんは上手くいった?」
「ええ、なんとか」
うんうんと加奈美は頷く。
「で、当摩君借りてっていい?」
四人は顔を見まわしたあと。
「どうぞー。持ってって」
あっさりと当摩は連行された。
「まさに絶景ね」
神奈がそう言って目を細めて遠く地平から差しこんでくる光を見た。
(朝日も綺麗だけど、やっぱり神奈ちゃんも綺麗だな)
青の塔最上階のテラスから昇る朝日を写真に撮っていく。透のカメラさばきはかなり手慣れていて、良い感じの写真を何枚も撮った。
「ありがとう、黒崎さんに当摩君と加奈美先生も」
「一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなって良かったわ、さすがは黒の魔女ね」
「あのゴーレム凄かったけど、あんなのに狙われてるなんて」
透は申し訳ないと言いたげな顔をした。
「わたしにとってはあの程度、ピクニックに行った先でパグの子犬に出会った程度のイベントよ」
「そんな楽し気なイベントだったかしら」
加奈美は呆れていた。
「よく解らない例えだけど、神奈ちゃんが凄いのはよく解った」
若干二名はドン引きしていたが、当摩は割と平然としていた。段々慣れてきているのだった。
「凄いと言えば当摩君もあんな大きな剣を三度も受けても平気だし、あの爆心地から無傷で生還とは恐れ入るわね。何かのエキストラスキルかしら?」
「そこは一応秘密よ」
「そう?」
(んっ……何か背筋がヒヤッとしたな)
加奈美が自分を見る目が、一瞬だけ険しかった気がした。
「それじゃあ、撮り終った写真はプリントアウトして、透君のお母様に見てもらいましょう」
「えっ⁉ それはどういう意味なの? 黒崎さん」
「今日の放課後、写真を持ってオカ研の部室に来なさい」
※
「結論から言ってしまうと、透君のお母さんを呼び出すことは可能、ほぼ百パーセント、一発で召喚できると思う」
梨花は手で十円玉をもてあそびながらそう言った。
「ほ……本当に?」
透が訊くと梨花はぐっとサムズアップを見せた。
そう、梨花の得意魔術はこっくりさん、降霊による占いなのだ。
「呼び出されたこっくりさんは間違えなく透君のお母さんだから、絶対にこっくりさんへあなたは誰? とは訊かないでね」
透、神奈、梨花と当摩の四人で丸テーブルを囲んでいる。テーブルの中央には鳥居のマークにはい、いいえ、そして五十音と数字の書かれた紙がある。
京史は少し離れたところにいて、非常時用に待機していた。
「心の準備はオーケー? できたら始めるわよ」
皆が頷く。当摩はちょっとだけビビっていた。
鳥居のマークの上に十円玉をのせ、四人は人差し指をコインの上へ重ねた。
「「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいで下さいませ。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」
四人がそう言うとコインは滑らかに『はい』へ向かう。
「よしっ! 来た」
「ひあっ!」
次の瞬間当摩は情けない声を上げてしまった。なんと丸テーブルの脇、透の隣に上半身だけの女性が薄く浮かびあがったからだ。
「母さん……」
それは紛れもなく透の母だった。
「当摩はしゃんとしなさい。梨花のこっくりさんは紛れもない大魔術よ。このぐらいの霊現象は当然よ」
「う、うん」
(幽霊って本当にいたんだな)
「じゃあまずは私から行くわね」
神奈が先陣をきる。
「こっくりさん、テーブルの上の写真はどうですか?」
す ご く き れ い わ た し の す き な は な。
み た か っ た あ さ ひ。
「次はあたし、行きます」
梨花は魔術が上手くいき、得意満面な様子。
「こっくりさんは透君をいつも見守っているんですか?」
『はい』
透の目にじわっと涙が浮かぶ。
「次は当摩よ」
「う、うん」
(まずい……何を訊くか全然考えてなかった)
「えっ……と、こっくりさん、透君の好物の焼きそばパンはどうやって作ってるんですか?」
い え の れ い ぞ う こ の わ き に の ー と が あ る そ こ に か い て あ る。
「わわっ、ホントに答えた」
「何聞いてるのって言いたいけど、これはお手柄ね」
「さっ……最後は透君よ。あなたは何を聞きたいの?」
「こ……こっくりさん、母さんがいなくなって、僕……どうしていいのか解んないよ」
透の目から涙がポロポロこぼれた。
あ な た な ら だ い じ ょ う ぶ。
あ い し て る つ よ く い き て。
「うっ……母さんっ!」
そして、透はしばらく泣いた。それを優し気に見ていた母の幽霊はやがてふっと消えた。
こっくりさんを送りかえし、儀式はおわった。
※
「透君……大丈夫かな?」
「お母さんも言ってたじゃない、彼なら大丈夫よ」
「うん……だといいよね」
当摩が頷く。
透は赤く目をはらしたまま、皆に礼をのべ部室を後にした。
当摩達は例のごとくお茶会を始めていた。今日のお菓子はベイクドチーズケーキに飲み物はマラウイのチャリティーコーヒーだ。
「ふはぁ……生き返るわ、久々の魔術であたしは疲れました」
「梨花ちゃん本当にご苦労様。しかし京史君と梨花ちゃんも本当に魔術師だったんだね」
「なにをいまさらよ。まあ変な人度合いだと、神奈ちゃんと当摩君がツートップよどっちも人智を超越してるしね」
「俺は普通じゃないかな?」
「絶対ないわぁ」
わいわいがやがやと雑談をしていると、部室に加奈美先生が顔を出した。
「やっほー。こっくりさんは上手くいった?」
「ええ、なんとか」
うんうんと加奈美は頷く。
「で、当摩君借りてっていい?」
四人は顔を見まわしたあと。
「どうぞー。持ってって」
あっさりと当摩は連行された。
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