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イケすかないイケメン
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それは今から一年くらい前のことだった。放課後の教室、当摩も漫研に行こうかと準備している時のこと。
「おいっ! 寺島、そのマンガ見せてみろよ」
クラスのカースト最上位のイケメン、加賀谷清がカースト最下位にちかい寺島君へ凄むような声をあげた。
当摩はとても嫌な予感がした。そのマンガに心当たりがあったからだ。
加賀谷は嫌がる寺島から無理やりマンガの原稿を取り上げた。それは女の子のキスシーンを描いた漫画だった。
「見てみろよっ! このマンガの中の女の子っ! これって神奈ちゃんじゃねえ?」
美しい黒髪ロングで意志の強そうな端正な顔立ち、切れ長の目。それは確かに神奈に似ていた。
「こいつ、神奈ちゃんに相手されないからって、マンガでズリネタにしてるんじゃねえか?」
どっと教室中の生徒が笑う。神奈はすこしだけ不機嫌そうな顔をして、二人をじっと見据えた。
「ちっ違う……そのマンガは……」
そう、そのマンガの女の子が神奈に似てるのは当然だった。なぜなら当摩からの依頼で神奈のキスシーンを描いてもらったからだ。
寺島が当摩に目をむける。視線が合った。しかし、当摩はどうすることもできずに立ちすくんだ。
「最悪だよお前っ! 神奈ちゃんを穢れた目で見やがって」
加賀谷が掴んでいたマンガ原稿を寺島に投げつける。数枚の原稿が床に散らばった。
「やめなさい」
たった一言で教室中は静まり返った。神奈の目が赤く光っている、怒っているのだ珍しく。
つかつかと寺島に歩みよる神奈、マンガの原稿を丁寧に拾って、彼に渡した。
「この話はこれで終わり……いいわね」
「あ……ああ」
加賀谷も青ざめ冷や汗を流していた。
※
「俺は当摩を神奈ちゃんパーティから追放することを提案するっ! たかが村人になにができるんだっ‼」
加賀谷がまくしたてる。どこか自分に酔ったように話すのは彼の癖だ。
(なんだこいつ、うっとおしい)
当摩は少しイラっとした。
本日のオカ研、異世界探索活動は日本時間の夜九時から始まった。時間の流れが微妙に違う異世界グレイルでは今は昼だ。
冒険者ギルドで本日のクエストを探している時に、加賀谷が難癖をつけてきた。
「当摩はわたしが選んだブラックマジシャンズのメンバーよ。部外者が口を出すことじゃないわ」
「神奈ちゃん……俺と当摩を比べてみろよ。どっちが役に立つかは一目瞭然だろ?」
これまでも加賀谷は神奈とパーティを組んで冒険に出ることも多かった。別に神奈が頼んだわけではなく、加賀谷が押しかけてきていただけなのだが。
「神奈ちゃんが聖杯を手に入れて、世界のトップに立ったら、俺が日本の総理大臣になって神奈ちゃんを支える。そういうビジョンじゃなかったか?」
異世界へ訪れる人には、様々な目的がある。ただ単に異世界で遊びたいという人間もいれば、コツコツと魔石を貯めそのお金で異世界美女がいる娼館へ通うものも。
そして、冒険者というよりこのグレイル王国冒険者ギルドの最大の目的は魔王の討伐である。モンスターを通して人類に脅威を与える大災厄の擬人化した存在、それが魔王だ。
魔王を倒せるのは勇者だけ、多くの冒険者が技を磨き、魔力をため込むのは、勇者のジョブを手に入れるためだ。
勇者になって魔王を倒したものには、願いをなんでも叶えるという聖杯が与えられる。神奈はその聖杯を求めて異世界で戦っているのだ。
「たしかにわたしの目的は聖杯、そして聖杯を使った大魔法で地球の支配者になるのが目的よ」
(神奈ちゃん……世界征服が目標とかデカすぎだろっ!)
「だろ? そんな村人にかまっている時間は無いんじゃないか」
「むっ!」
そんな村人の当摩だが、ミスリルでできた凄く硬いのに軽い鎧一式と、一流の鍛冶屋が魔力をこめて作った長剣を持っている。梨花と京史が用意したものだ。
「では、こうしましょう」
ロングの髪をかきあげて神奈が言った。その仕草も美麗。
「これからあるA級のダンジョンを加賀谷君と当摩に攻略してもらうわ、より魔石を多く、そして価値ある魔石を手に入れたものが勝者よ」
「ちょっ! 当摩君はFランクだよっ! いくら何でもBランクの加賀谷君に敵うわけないよ。装備があっても」
突然の提案に梨花が動揺を隠しきれない。
「それはどうかしら? わたしはきっと当摩が勝つって信じてるわ」
神奈が選んだダンジョンは未だ最深部のボスが討伐されていないダンジョンだった。
「ああ……なるほど」
京史がなにかわかったのか、指定のダンジョンを聞いて頷いた。
「何よ……思わせぶりに」
そこに梨花が噛みついてくる。
「ここは神奈ちゃんと当摩に任せておけばいい、そのうちわかるよ」
「なによ~思わせぶりに秘密主義を気取っちゃって」
「くくっ、どんなダンジョンだろうが村人なんかに後れをとる俺じゃない」
「むむっ……ダンジョンってどんな所だ」
「一言で言って魔物の棲み処よ。魔力が淀んでたまり易い場所ね」
「そこの魔物ってスライムよりどれくらい強いの?」
「A級ダンジョンだけど一部を除いてB級のモンスターが多いわ、B級のモンスターは……そうねえ自動小銃やライフルがあれば何とか倒せるくらいね。地球で言えば白熊以上像未満って感じかしらね」
「お……俺の剣じゃ絶対無理だ」
「ふふっ……蹴散らしてやるよ。雑魚村人の当摩」
「うう……降参したら?」
「死ぬまでチ〇ポが起たなくなる呪いをかけるわ」
「うう……神奈ちゃん怖い」
こうしてA級ダンジョン魔石争奪戦が始まった。
「おいっ! 寺島、そのマンガ見せてみろよ」
クラスのカースト最上位のイケメン、加賀谷清がカースト最下位にちかい寺島君へ凄むような声をあげた。
当摩はとても嫌な予感がした。そのマンガに心当たりがあったからだ。
加賀谷は嫌がる寺島から無理やりマンガの原稿を取り上げた。それは女の子のキスシーンを描いた漫画だった。
「見てみろよっ! このマンガの中の女の子っ! これって神奈ちゃんじゃねえ?」
美しい黒髪ロングで意志の強そうな端正な顔立ち、切れ長の目。それは確かに神奈に似ていた。
「こいつ、神奈ちゃんに相手されないからって、マンガでズリネタにしてるんじゃねえか?」
どっと教室中の生徒が笑う。神奈はすこしだけ不機嫌そうな顔をして、二人をじっと見据えた。
「ちっ違う……そのマンガは……」
そう、そのマンガの女の子が神奈に似てるのは当然だった。なぜなら当摩からの依頼で神奈のキスシーンを描いてもらったからだ。
寺島が当摩に目をむける。視線が合った。しかし、当摩はどうすることもできずに立ちすくんだ。
「最悪だよお前っ! 神奈ちゃんを穢れた目で見やがって」
加賀谷が掴んでいたマンガ原稿を寺島に投げつける。数枚の原稿が床に散らばった。
「やめなさい」
たった一言で教室中は静まり返った。神奈の目が赤く光っている、怒っているのだ珍しく。
つかつかと寺島に歩みよる神奈、マンガの原稿を丁寧に拾って、彼に渡した。
「この話はこれで終わり……いいわね」
「あ……ああ」
加賀谷も青ざめ冷や汗を流していた。
※
「俺は当摩を神奈ちゃんパーティから追放することを提案するっ! たかが村人になにができるんだっ‼」
加賀谷がまくしたてる。どこか自分に酔ったように話すのは彼の癖だ。
(なんだこいつ、うっとおしい)
当摩は少しイラっとした。
本日のオカ研、異世界探索活動は日本時間の夜九時から始まった。時間の流れが微妙に違う異世界グレイルでは今は昼だ。
冒険者ギルドで本日のクエストを探している時に、加賀谷が難癖をつけてきた。
「当摩はわたしが選んだブラックマジシャンズのメンバーよ。部外者が口を出すことじゃないわ」
「神奈ちゃん……俺と当摩を比べてみろよ。どっちが役に立つかは一目瞭然だろ?」
これまでも加賀谷は神奈とパーティを組んで冒険に出ることも多かった。別に神奈が頼んだわけではなく、加賀谷が押しかけてきていただけなのだが。
「神奈ちゃんが聖杯を手に入れて、世界のトップに立ったら、俺が日本の総理大臣になって神奈ちゃんを支える。そういうビジョンじゃなかったか?」
異世界へ訪れる人には、様々な目的がある。ただ単に異世界で遊びたいという人間もいれば、コツコツと魔石を貯めそのお金で異世界美女がいる娼館へ通うものも。
そして、冒険者というよりこのグレイル王国冒険者ギルドの最大の目的は魔王の討伐である。モンスターを通して人類に脅威を与える大災厄の擬人化した存在、それが魔王だ。
魔王を倒せるのは勇者だけ、多くの冒険者が技を磨き、魔力をため込むのは、勇者のジョブを手に入れるためだ。
勇者になって魔王を倒したものには、願いをなんでも叶えるという聖杯が与えられる。神奈はその聖杯を求めて異世界で戦っているのだ。
「たしかにわたしの目的は聖杯、そして聖杯を使った大魔法で地球の支配者になるのが目的よ」
(神奈ちゃん……世界征服が目標とかデカすぎだろっ!)
「だろ? そんな村人にかまっている時間は無いんじゃないか」
「むっ!」
そんな村人の当摩だが、ミスリルでできた凄く硬いのに軽い鎧一式と、一流の鍛冶屋が魔力をこめて作った長剣を持っている。梨花と京史が用意したものだ。
「では、こうしましょう」
ロングの髪をかきあげて神奈が言った。その仕草も美麗。
「これからあるA級のダンジョンを加賀谷君と当摩に攻略してもらうわ、より魔石を多く、そして価値ある魔石を手に入れたものが勝者よ」
「ちょっ! 当摩君はFランクだよっ! いくら何でもBランクの加賀谷君に敵うわけないよ。装備があっても」
突然の提案に梨花が動揺を隠しきれない。
「それはどうかしら? わたしはきっと当摩が勝つって信じてるわ」
神奈が選んだダンジョンは未だ最深部のボスが討伐されていないダンジョンだった。
「ああ……なるほど」
京史がなにかわかったのか、指定のダンジョンを聞いて頷いた。
「何よ……思わせぶりに」
そこに梨花が噛みついてくる。
「ここは神奈ちゃんと当摩に任せておけばいい、そのうちわかるよ」
「なによ~思わせぶりに秘密主義を気取っちゃって」
「くくっ、どんなダンジョンだろうが村人なんかに後れをとる俺じゃない」
「むむっ……ダンジョンってどんな所だ」
「一言で言って魔物の棲み処よ。魔力が淀んでたまり易い場所ね」
「そこの魔物ってスライムよりどれくらい強いの?」
「A級ダンジョンだけど一部を除いてB級のモンスターが多いわ、B級のモンスターは……そうねえ自動小銃やライフルがあれば何とか倒せるくらいね。地球で言えば白熊以上像未満って感じかしらね」
「お……俺の剣じゃ絶対無理だ」
「ふふっ……蹴散らしてやるよ。雑魚村人の当摩」
「うう……降参したら?」
「死ぬまでチ〇ポが起たなくなる呪いをかけるわ」
「うう……神奈ちゃん怖い」
こうしてA級ダンジョン魔石争奪戦が始まった。
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