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いざ、異世界へ
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「なんか今日はお兄ちゃん食欲ないね」
クリクリとした目でこちらを見つめるのは、妹の夏鈴。
育ち盛りで、絶賛色んな所が成長中で、セミロングの髪をなびかした、日本人形のような女の子だ。
妹なんだけど、ひいき目抜きでも結構な美少女なのだ。
「お、おう」
学校から帰ってきて、家で食事をしている時だ。
いつものように二人っきりの食卓、もう何年もの間こうだ。
神奈から魔導ゲームブックを受け取り、指定時間の夜八時までに枕元に置いて就寝するよう言われている。
「今日はちょっとオヤツとか食べてさ、あんまり食欲ないんだ」
「でも何か、お兄ちゃん悩んでるでしょ?」
「うっ!」
(こいつ、妙に鋭いところあるからな)
「魔導ゲームブック……買ったの?」
どうやら見られていたらしい。
「そ、……それは」
「モンスター怖いから異世界へは行かないって言ってたよね」
「うん……そうなんだけど」
「じゃあ、どうして?」
夏鈴の目は真剣だ。
「いや、オカ研に誘われてさ……」
「オカ研って黒崎神奈さんの? 今頃になって急に誘われたの?」
「うん、なんか俺って魔術的に問題があるみたいでさ」
「やめなよ。異世界なんて」
夏鈴が心配そうな顔で見つめてくる。当摩も少し迷った。
「夏鈴が断ってあげようか? お兄ちゃん優柔不断だから」
「うん……でも……」
今日のお昼のことや、ショッピングモールでの出来事を思い出す。
そこには冒険の気配みたいなものがあって、確かに自分はそれにワクワクしていたんだ。
「もうちょっと、付き合ってみるよ。嫌なことをやらされそうになったら断るよ」
「そう……ならいいけど」
夏鈴はまだなにか言いたげであったが、それ以上はなにも言ってこなかった。
※
それは今まで感じたことのない感覚だった。
枕元に本を置き横になった直後、ふっと目を開けたらそこにいた。
「おめでとうございます。初召喚に成功いたしました、召喚勇者さま」
そこはストーンヘンジみたいな所だった。さっきまで夜の日本にいたが空は晴天、すぐそばには白いローブに身を包んだ巫女さんみたいな人がいた。
「ちゃんと時間は守れたみたいね。ようこそ異世界グレイルへってところかしら」
見れば神奈もそこにいた。
「うわ、ファンタジーの魔法使いみたいな服だね神奈ちゃん、すごく似合ってる」
黒いつば広のとんがり帽子に、同じく黒のローブ、胸元がガバッと開いていて谷間の白さがセクシーだった。それに甘い匂いがする。
神奈は薄く笑って、ありがとうと小さくつぶやいた。
(うわぁ……すごい……おっぱいも……ってなに考えてるんだ)
「大魔導士の神奈さまのパーティはとても功績の大きな、ギルドの信任厚い一流冒険者の集いです。その新人ということで期待させてもらいますよ。当摩さま」
「あ、うん、えへへ……ありがとう」
こんなふうに歓迎されたことのない当摩は少し照れながら、鼻の頭をかいた。
「さっそくジョブを鑑定いたしましょうか?」
「ええ、お願い。わたしの魔眼が効かないくらいの魔法抵抗……竜の闘気を扱い飛竜を乗りこなすドラゴンナイトかしら? それとも裏返って勇者への覚醒確率が高いと言われる暗黒騎士もあり得るわね。聖剣使いとかも……あるいはチート系の生産職なんていう変化球もありかしら……」
巫女のお姉さんがなにやらつぶやくと手が光り、それをそっと当摩の頭に近づけた。
「鑑定……出ましたっ! ジョブはムラビトです」
「ムラビト? 聞かないジョブね。それはムラマサブレードが扱える的なジョブかしら?」
「いえ、ヴィレジャーの方の村人です」
「村人……」
神奈は眉間に指を当てしばし考えこんだ。
「ねえ、村人ってあなたわたしを馬鹿にしているの? なんでただの村人なのよっ!!!」
神奈は顔を真っ赤にして怒っている。
「そっ……そんなこと言われても」
「あっ! でもエクストラスキルがありますよ」
「何かしら?」
「えっとですね……敵対的な魔術、魔法を全て無効化です」
「…………」
しばし辺りを沈黙が支配する。
「こんなエクストラスキルってあったかしら?」
「いいえ、わたしも初めてみました」
「なんかゲームの世界のハニワみたいな男ね、あなたって、叩いたら割れるのかしら?」
「うう……叩かないで」
神奈は、はぁと大きなため息をつく。
「経験値を積めば、村人でもジョブチェンジできるかしら?」
「はい、結構大変な道のりだと思いますが不可能ではありません」
「そう……この人はわたしのパーティ『ブラックマジシャンズ』で預かるわ。ジョブ鑑定ありがとう」
「いいえ、改めましてようこそグレイル王国へ当摩様」
巫女さんが深々と頭を下げ、当摩もつられて頭を下げた。
クリクリとした目でこちらを見つめるのは、妹の夏鈴。
育ち盛りで、絶賛色んな所が成長中で、セミロングの髪をなびかした、日本人形のような女の子だ。
妹なんだけど、ひいき目抜きでも結構な美少女なのだ。
「お、おう」
学校から帰ってきて、家で食事をしている時だ。
いつものように二人っきりの食卓、もう何年もの間こうだ。
神奈から魔導ゲームブックを受け取り、指定時間の夜八時までに枕元に置いて就寝するよう言われている。
「今日はちょっとオヤツとか食べてさ、あんまり食欲ないんだ」
「でも何か、お兄ちゃん悩んでるでしょ?」
「うっ!」
(こいつ、妙に鋭いところあるからな)
「魔導ゲームブック……買ったの?」
どうやら見られていたらしい。
「そ、……それは」
「モンスター怖いから異世界へは行かないって言ってたよね」
「うん……そうなんだけど」
「じゃあ、どうして?」
夏鈴の目は真剣だ。
「いや、オカ研に誘われてさ……」
「オカ研って黒崎神奈さんの? 今頃になって急に誘われたの?」
「うん、なんか俺って魔術的に問題があるみたいでさ」
「やめなよ。異世界なんて」
夏鈴が心配そうな顔で見つめてくる。当摩も少し迷った。
「夏鈴が断ってあげようか? お兄ちゃん優柔不断だから」
「うん……でも……」
今日のお昼のことや、ショッピングモールでの出来事を思い出す。
そこには冒険の気配みたいなものがあって、確かに自分はそれにワクワクしていたんだ。
「もうちょっと、付き合ってみるよ。嫌なことをやらされそうになったら断るよ」
「そう……ならいいけど」
夏鈴はまだなにか言いたげであったが、それ以上はなにも言ってこなかった。
※
それは今まで感じたことのない感覚だった。
枕元に本を置き横になった直後、ふっと目を開けたらそこにいた。
「おめでとうございます。初召喚に成功いたしました、召喚勇者さま」
そこはストーンヘンジみたいな所だった。さっきまで夜の日本にいたが空は晴天、すぐそばには白いローブに身を包んだ巫女さんみたいな人がいた。
「ちゃんと時間は守れたみたいね。ようこそ異世界グレイルへってところかしら」
見れば神奈もそこにいた。
「うわ、ファンタジーの魔法使いみたいな服だね神奈ちゃん、すごく似合ってる」
黒いつば広のとんがり帽子に、同じく黒のローブ、胸元がガバッと開いていて谷間の白さがセクシーだった。それに甘い匂いがする。
神奈は薄く笑って、ありがとうと小さくつぶやいた。
(うわぁ……すごい……おっぱいも……ってなに考えてるんだ)
「大魔導士の神奈さまのパーティはとても功績の大きな、ギルドの信任厚い一流冒険者の集いです。その新人ということで期待させてもらいますよ。当摩さま」
「あ、うん、えへへ……ありがとう」
こんなふうに歓迎されたことのない当摩は少し照れながら、鼻の頭をかいた。
「さっそくジョブを鑑定いたしましょうか?」
「ええ、お願い。わたしの魔眼が効かないくらいの魔法抵抗……竜の闘気を扱い飛竜を乗りこなすドラゴンナイトかしら? それとも裏返って勇者への覚醒確率が高いと言われる暗黒騎士もあり得るわね。聖剣使いとかも……あるいはチート系の生産職なんていう変化球もありかしら……」
巫女のお姉さんがなにやらつぶやくと手が光り、それをそっと当摩の頭に近づけた。
「鑑定……出ましたっ! ジョブはムラビトです」
「ムラビト? 聞かないジョブね。それはムラマサブレードが扱える的なジョブかしら?」
「いえ、ヴィレジャーの方の村人です」
「村人……」
神奈は眉間に指を当てしばし考えこんだ。
「ねえ、村人ってあなたわたしを馬鹿にしているの? なんでただの村人なのよっ!!!」
神奈は顔を真っ赤にして怒っている。
「そっ……そんなこと言われても」
「あっ! でもエクストラスキルがありますよ」
「何かしら?」
「えっとですね……敵対的な魔術、魔法を全て無効化です」
「…………」
しばし辺りを沈黙が支配する。
「こんなエクストラスキルってあったかしら?」
「いいえ、わたしも初めてみました」
「なんかゲームの世界のハニワみたいな男ね、あなたって、叩いたら割れるのかしら?」
「うう……叩かないで」
神奈は、はぁと大きなため息をつく。
「経験値を積めば、村人でもジョブチェンジできるかしら?」
「はい、結構大変な道のりだと思いますが不可能ではありません」
「そう……この人はわたしのパーティ『ブラックマジシャンズ』で預かるわ。ジョブ鑑定ありがとう」
「いいえ、改めましてようこそグレイル王国へ当摩様」
巫女さんが深々と頭を下げ、当摩もつられて頭を下げた。
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