38 / 39
38
しおりを挟む巨大な黒龍、ダークネスドラグーンは歪な笑みを浮かべ三人を見下ろす。
『くくく、お前たちはあの村の人間か』
黒龍の邪悪な魔力を浴び、まるでメデゥーサの瞳に魅入られたかのように三人は動けなくなる。
『どうした?戦いに来たのだろう?それとも恐れをなしたか?あの小娘、リンはたった一人で我に立ち向かってきたのだぞ?お前たちは来ないのか?』
もはや三人の耳にはダークネスドラグーンの言葉は入ってはいなかった。ただあるのは死への恐怖と、リンの安否だけ。どうこの場を逃げ切るかを、どうにもならない状態で漠然と思考していた。
「……ナナト」
名を呼ばれたナナトは村長の眼を見て、その意図をすぐに汲んだ。リンを探し逃げろ。そう言っていた。
ウルカの叔父もパートナーである白狼をナナトへとつける。一緒に連れて行けという意味だろう。
しかしそんな目論見は容易に黒龍が看破する。集約するあたりの魔力。自身へと大きなバフをかけ始めた。そして、黒龍の喉が真っ赤に輝いていた。
三人がまずい、と動き出した瞬間。それは放たれた。
大地すら黒く焦がし、地形すら変えてしまうような威力の『獄炎弾』
直撃した三人は跡形もなく――
『ほう、防いだか』
――なってはいなかった。
「あっぶねえ……!!」
ラッシュが盾を展開しそれを退けた。
「ナイス!!ラッシュ!!」
「ふう、ベストなタイミングで防御バフとアイテム使えて良かった……って、あれ?叔父さん」
「う、ウルカ!!無事だったのか!!」
「な、なぜお前たちが魔族と戦って」
驚愕している村長とナナト、そしてウルカの叔父。そして黒龍もまたラッシュ、コクエ、ウルカの生存に驚く。
『ほう、生き延びたというのか……我の率いていた軍勢から。たった三人で……くくく、これではどちらが化け物かわからぬな』
しかしすぐにその表情が戻る。鋭く睨みつける黒龍。
『しかし、ならば全力で屠るのみだ。死ね』
――闇の中、走る音が聞こえた。
それがリンのものだと瞬時にダークネスドラグーンは理解する。
(!?、あの攻撃が直撃して生きているだと!!?)
向かってきたリンの姿を確認した瞬間、速射型の火炎弾を放つ。火炎弾は通常、溜めが必要な技である。しかし、後半戦ではダークネスドラグーンはその両方を使いこなす。
リンは横へ飛び退こうとしたが間に合わずその火球へと飲まれた。完全に魔力が消失し、リンが死んだことを確信する。と、同時に視界の端に黒い烏が映った。
(……この烏の影、魔力の反応が薄い)
自身の顔をこの烏の影に付与されていた炎の魔法で吹き飛ばされた黒龍。しかし、あの時とは違い、烏からは大きな魔力反応がしない。つまりはリンの最期の悪あがき。この烏に特別意味はない、黒龍はそう判断した。
顔に当たる烏。ふわりと消失し、影は闇に溶けた。そして――
『……馬鹿な、どこから現れた……』
闇の底から現れた亡霊。
なんの前触れもなく、リンが頭上に存在していた。
深々と黒龍の角の隙間へと突き刺される、紅いダガー。
『な、……我を、殺すとは……本当に、死神だ……ったのだ、な……』
大きな音を立て、黒龍はその身を地面へと落とし沈黙した。
ダークネスドラグーンの頭の上、リンは【魔眼】を使い黒龍の【死門】を正確に貫いていた。
「……終わった……?」
【クエスト『滅びの運命』をクリアしました】
➤黒龍の呪いにより【ノワールアルマ】が付与されました。
――ズズズ、ズ――
――
【ステータス】《称号》運命の超越者
《名前》リン《ジョブ》白魔道士
レベル:92
HP:0346/3780
MP:1020/7120
筋力:420
魔力:3880
精神:678
俊敏:2390
詠唱:1990
《振り分け:370P》
《装備:武器》
SR17『【漆烏】ルベウスダガー』攻撃力(物):1980 攻撃力(魔):980
➤《特殊》闇夜に紛れ姿と気配を消す。漆烏の影を召喚する。
SR10『冥界の緋杖』攻撃力(物):320 攻撃力(魔):1280
《装備:防具》
SR10『深闇姫の衣』防御力(物):809 防御力(魔):1128
《装備:装飾》
SR9『破魔の指輪』魔力+680
SR12『闇魔女の外套』魔力+300 防御力(魔)+410 MP+1080
《スキル》
★【魔眼】:消費MP――
★【ノワールアルマ】:消費MP――
☆『魔弾』:消費MP30
☆『ダブルバースト』:消費MP×3
☆『ファントム』:消費HP1/3
☆『キュア』:消費MP15
☆『魔引』:消費MP10
《魔法》
☆『ヒーリング』:消費MP15
☆『ヒーリン・ガ』:消費MP30
☆『エアマジック』:消費MP5
☆『マジックバースト』:消費MP20
☆『エアリアルヒール』:消費MP20
☆『ホワイトガード』:消費MP15
☆『ヒーリングレイ』:消費MP150
☆『聖海ノ宝光』:消費MP1800
――
――ズズズ、ズ――
21
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした
メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました!
1巻 2020年9月20日〜
2巻 2021年10月20日〜
3巻 2022年6月22日〜
これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます!
発売日に関しましては9月下旬頃になります。
題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。
旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~
なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。
────────────────────────────
主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。
とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。
これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる