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31.怒りの
しおりを挟む到着したのはその地区一の宿屋。扉を開き入ってみると、フロントには誰も居なかった。私はそれが少し気になり、ミオちゃんに男たちに気づかれぬよう、小声で囁くようにお願いしてみる。
この宿屋の人を捜して、と。それを聞いたミオちゃんは「...わかったわ」と、頷き私の元を離れた。その時、オオナが言う。
「部屋は二階だ。行くぞ」
「...はい」
ギシギシと軋む木造の階段をのぼる。二階には十の部屋があり、そのうちの一つの扉の前へ連れてこられた。
オオナがノックすると、鍵があき扉が開く。
「遅かったな」
奥の椅子に座るミノル。その両脇には戦闘職のクランメンバーのザトウとシカルバが立っている。
ザトウはジョブ【槍師】でその名の通り槍の使い手。槍師は本来鎧を身に纏うものだが、機動力が欲しい彼は鎧を装備していない。赤い蝶の柄が入った黒い着物を着ている。
シカルバは【拳闘士】武器を持たず、魔力で拳を強化し戦うジョブ。生まれながらに異様な量の魔力を持っていたため、戦闘ではかなり優秀な男だったらしい。それも他のクランから引き抜きにあったことがあるほどに。
他にもここには居ないが、クラン【メテオ】には優秀なバトルジョブのプレイヤーが多くいる。
(...護衛はこの二人だけ、か)
――ミノルの雰囲気が変わる。
「おい。アカリ」
「はい」
「なにか言うことがあるんじゃないのか」
...すごい殺気。
「逃げようとして、すみませんでした」
私がそう言うと、クイクイと人差し指を曲げ「こっちへこい」と示した。
私は言われた通り、ミノルの元へ歩いていくと、後ろで扉が閉まる音が聞こえた。ガチャリと鍵がかかる音も。
そうしてミノルの前までくると、彼は指を下へ向けた。
「...おい」
「?」
「謝るなら、心の底からだろ。ほら、土下座しろ」
指で床をさし、にやにやと笑う。
「...わかりました。でも、その前に...タケさんは何処ですか?」
「あ?てめえ、また...いや、良いか。そうだな、土下座して謝罪すれば教えてやるよ」
私は床にひざまずく。そして、手を床に
その時。後ろからミオちゃんが私を呼ぶ声がした。
「アカリ!大変よ...って、何してるの!?」
振り向きミオちゃんと目が合う。すると、彼女は頷き言葉を続けた。
「宿の人は...殺されてたわ。遺体が客室の一つに入れられていた」
殺し...ミノル達が?い、いや、でも...さすがに街の...一般人を殺すなんて。
「おい!てめえ、なにボケっとしてんだこら!!早く床に頭擦れっつってんだよ!!あのクソジジイみてえに殺されてえのか!?」
え...?
隣のシカルバが「あっ」といい、ザトウもまた「言っちゃっだめでしょ~」と手をひらひら返した。
「いいんだよ、めんどくせぇ!後でも先でも関係ねえよ!!こんなクソジョブの女一人...なんにも出来ねえだろーが!!」
「い、いまの...クソ、ジジイって?誰の事...」
シカルバが、布で包んだ一つの包を持ってきた。
その布の中から出てきたのは――
「...た、タケ...さん?」
顔が崩れ
原型がかろうじて残るていど
おそらくは
彼らの玩具にされていたのだろう
顔に刺さる
ダーツの矢
口に詰められた
...いや
どうでも良いな。
(...ゴメン、タケさん...)
「...」
こいつらは、もう人じゃない。
獣
害獣
害獣モンスターだ。
だから
「おいてめえ、土下座しろよ」
「...馬鹿言わないでよ」
「あ?てめえ、いま...」
――体中に怒りがかけ巡る。吐き気がするほどだ。
「詫びるのは、私じゃないでしょ...」
「は?」
「...あんたらが、死んで償うのよ」
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