26 / 36
25.最期
しおりを挟む白き少女の頭が落ちた瞬間。彼女の体は剣もろとも崩れ落ち、先程と同じように液状へ還った。
(...第三形態...次が、最後の...!!)
ボウッッ――
それはまるで巨大な火の玉。私がこのダンジョンで始めて狩った魂のカタチそのものだった。
「――ッ!?」
部屋全体に燃え上がるような熱気が充満し、私は体を丸めた。
(あっっつい!!?)
至近距離にいるせいで直に炎に照らされ、体が焼けるように熱い。っていうか焼けているのかもしれない。目を開けられない。
ミオちゃんの魔力がガードしてくれていなければ、既に燃え上がり死んでいる...そう思わせるような高温状態。
「アカリ!!」
――ミオちゃんが叫ぶ
「火の玉の大きさが...小さくなっていってる!!もしかするとこれが最後の攻撃なのかも!!」
飛んでくる熱風を手で遮りながら、薄目でモンスターを視認する。
(...!! 黒い、靄が!!)
その火の玉はドス黒い靄がかかり、体積が減少し続けていた。それに伴いどんどんと熱が上がり続けている。
これを凌ぎ切れば...私達の勝ち?でも、これじゃあ...。
――既にアカリの纏う衣服が燃え始め、皮膚も焼けつつあった。火の玉の体積の減少速度、熱の上昇速度。アカリの体が耐えきれない事は明白だった。
そして、もう一つ。ミオは可能性に気がつく。
「アカリ、もしかして...この温度の上昇は...」
「...?」
――火の玉は電気のようなものを放ち始めた。
「自爆するためのエネルギーを溜めているんじゃ...」
(――!! そうか、もしかして...これって、ボス戦でよくある制限時間内にHPを削り切るってやつ...!!)
タイムアップは勿論、プレイヤー達の全滅。
「アカリ...」
「...」
あまりの熱気で呼吸すらままならない。体が燃え上がり出した。
「ありがとう」
と、ミオちゃんの声だけが聞こえた。
火の玉はついに手のひらサイズまで体積が減少。おそらく、たとえここから猛攻を仕掛けたとしてもまったく間に合わないだろう。
――ビシッ
と、何かが割れる音がした。
予測どおりの自爆だ。魔力が火の玉を割り、漏れ出した瞬間。
「アイテム、ボックス」
私は――
目の前へアイテムボックスを出現させ
――走馬灯。
中学校でのいじめ、ひきこもり、ゲーマーに...そして、ミオちゃんと出会った時の幸せな記憶――
彼女の笑顔が、視えた
「――解放」
音を置き去りにする、青い爆光
衝撃が叫び爆音が轟く
――キィィィン――オオッ
オオォオオンン――
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
その超爆発は、部屋の全てを吹き飛ばした。壁が真っ黒に焦げ、放出した山のようなアイテムは跡形もなく消えり、バチバチと魔力の残滓が青い電気となり残っている。
残ったのは、クリア報酬らしき漆黒の黒き箱。
――黒々とした煙が、ゆっくりと霧散した。
「...アカリ...」
ミオの泣き声が、殺風景となった部屋に響く。
「...な」
「...なか、ないでよミオちゃん。...私、死んでないよ?...生きてるんだからさ...」
♪パパパーパーン♪
――コンテンツクリアのファンファーレが鳴った。
「あー、しんど...なーんまら、怖かったあ...」
私は両腕を放り投げ、大の字で床へ寝転ぶ。
「アカリ、火傷...」
「...うん。でも、大丈夫...ありがとう」
――大爆発の直前、解放したアイテムボックスに入っていたもの。それは、私達が唯一勝っていた物。
ミオちゃんの途方も無い魔力量。
事前にアイテムボックスの中へ放出し...時間ぎりぎり、限界まで溜めていた魔力。それを自爆に合わせ、解放した。それにより発生した超高濃度の魔力の塊は強固な盾となり、爆発から私の体を護った。
私の体にとどめておける魔力量は限りがある。レベルが55に制限されているのもあって、この自爆を受け切る魔力を纏えはしなかっただろう。
けど、アイテムボックスは違う。いれられる物量に限りは無く、上限もない。だからミオちゃんの魔力を流し込んで高密度の魔力壁を作ることに成功した。
耐えられるかどうかは賭けだったけど...五体満足で、火傷くらいしかないところをみると大成功だ。
「...ミオちゃん」
すんすん、と泣いているミオちゃんがこちらを向く。涙を拭いながら。
「...な、なに」
「護ってくれてありがとう!やっぱり、ミオちゃんいないとダメだったね」
私が笑うと、彼女は抱きついてきた。
「ぶ、無事で...よかっ、た...」
そう言って、ミオちゃんはまた泣き出してしまった。
10
お気に入りに追加
359
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
おじさんが異世界転移してしまった。
月見ひろっさん
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる