平凡OLとイケメンドクター 

紅牡丹

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ずっと傍にいて(司)

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「数子、出来るだけ早く結婚しよう?」

数子は、え……とポカンとした顔をした。

彼女の瞳を見つめ、俺は意識して唇の端を上向かせたが、実のところ笑う余裕なんて、小指の先ほども無かった。

心臓は、胸と喉の間で乱舞していて口から飛び出しそうだし、手はじっとり汗ばんでいる。

先生の病気のこともあり、このタイミングでプロポ ーズしたが、何より俺は数子とずっと一緒にいたいのだ。

「プロポーズ、もっとロマンチックなシチュエーションが良かったよな? ごめん」

俺は苦笑いしたが、数子は先程とは打って変わって真剣な表情をしながら、勢いよく頭を左右に振った。

「違うの、ビックリしただけ」

俺は無言で小さく頷いて、温かな光景を思い描きながら、それをゆっくりと言葉にする。

「家に帰れば、こんな風に数子がいてくれる……。数子が作ってくれたものを食べて、他愛もない話をして、お互いの温もりを分かち合いながら、同じベッドで眠る……。朝は、数子が淹れたコーヒーの甘い香りが、俺を優しく満たしてくれる。そんな日常を過ごしたいんだ……。忙しくて、時には寂しい思いをさせるかも知れないけど、数子のこと一生愛して守るから、俺の傍にいて欲しい。……ダメかな?」

「ダメ……」

数子は言葉を詰まらせ、俺の体の中を微細な氷が駆け巡った。

「ダメなわけ……ないでしょう? 凄く嬉しい。一生傍に居させてください」

数子は、はらはらと涙をほとばしらせながら、か細い声を震わせた。

どうしようもないくらい歓びが溢れ出し、気付けば俺は数子の傍で身をかがめ、甘い香りのする柔らかな体を、ぎゅっと抱き締めていた。
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