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行き成りおとま・・・(数子)
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ピッ!
三回目の洗濯のスタートボタンを押し、二回目の洗濯物の入ったカゴを抱えて別室へ行く。
さっきまでがらんとしていた八畳くらいの広さの洋間では、二つの物干しスタンドに吊り下げられた一回目の洗濯物達が、エアコンの静かな風にそよがれて、洗剤のさっぱりとした香りを漂わせている。
さてと
パチ…パチ…パチ…パチ……
二十組以上ある全く同じデザインのグレーの靴下を、一枚一枚サークルのピンチに留めていると、何だか切なぁい気持ちになってくる。
これが彼氏のだったら、新婚さんみたいで嬉しいのかもね。
優君の衣類は洗った事なかったけど……ととと。
ぎゅっと目を閉じ頭を小さく横に振って、脳裏に浮かんだ元カレの顔を振り払った。
あ、そう言えばコレ、いちおう彼氏のだった。
何だか妙にウケてしまい、少し吹き出し一人でくすくす笑ってしまった。
「数子おはよ……」
名前を呼ばれてハッとする。
どっぷり一人の世界に入っていたから気付かなかったけど、いつの間にか鈴田先生がドアの所に立っていた。
う゛、何か意味ありげにニヤついてるし、一人で笑ってるとこゼッタイ見られた。
「洗濯サンキュー! それにしても嬉しそうな顔して、やっぱ好きな人が着た物の洗濯とかって嬉しいわけ?」
ん? 今何て言った?
いえ、聞こえてたけど……誰が誰の好きな人!?
この人また訳の分からない事言い始めたし……。
「量の多さに現実逃避してただけです」
呆れたように言って手を動かす。
マシーンのように淡々と仕事をこなして、とっとと家に帰りましょ。
途中で駅前のドラッグストア寄って、高~い入浴剤(憧れの一袋五百円)買って、今夜はお風呂でプチ贅沢しよ。良し、それだ!
「数子、照れちゃってかぁわいい……」
無視無視。
「なぁんて言葉は期待するなよ、見た目3」
くぅぅ、コイツの脇腹、グーで二,三発やっちゃってイイですかぁっ!?
「さて……飯でも行くか?」
「まだ洗濯の途中ですし駄目です」
声の主を見もせず、手を動かしつつビジネスライクに言えば、
「これ干したら行こう……」
鈴田先生は、横で一緒に洗濯物を干し始めた。
「私、お昼に沢山食べたのでお腹空いてないですし、適当に食べて来て下さい。……それにあと一回洗濯機回さないといけないし、干すもの干して、最後に乾燥機を回して帰りたいので急がないと」
少し穏やかに言ったところで、吹き出すイケメン変人ドクター。
ん? 今の話に笑える要素ありましたっけ?
怪訝な顔で隣を見れば、
「言ってなかったけどさぁ、数子は今夜うちに泊まる事になってるから」
なってないからーっ!!
「い、いきなり何言って……、男の人の家に二人っきりでなんて、泊まれるわけないでしょーっ!!」
目を見開いて小さく叫ぶと、
「おい見た目2、お前、元カレんちに泊まった事とか二人で旅行した事無いの?」
と冷静な声が返って来る。
3からひとつ降格ですか?
いやそんな事はどうでも良くて、有りますけど、それはお互いを良く知ってからで、私あなたの事は全然知らないし……、とか言ったら、お互いのホクロの位置とか押し倒すとか、またぶっ飛んだ事言い始めそうだし……。
とにかく絶対無理だから!!
「数子、蛇イチゴみたいに顔真っ赤だぞ。無言の自白有り難う、って事でフィアンセの俺と一夜を共にしても問題ない! 何もしないって言ったろ? けどごねるなら、この場で押し倒してヤッちゃうよ~」
ひぃぃ、また始まったぁぁ!
「お互いの事を知るために、今夜飲みながら話そ、良いだろう?」
良くないっ!
もう一度強く拒絶しても結果は同じだろうし、ここはひとつやんわりと。
姑息だろうが何だろうが、とにかくこの場を切り抜けられればそれで良い!
「着替えとか何も用意してないし、やはり今日は無理です。また今度」
と言ったところで、あっさり遮られる。
「パンツとか化粧品とか最低限必要なものは下のコンビニで買えるし、パジャマ代わりに俺のTシャツ貸してやるから、問題ない」
あるあるある、大ありだって!!
ダメだ、この人に何言っても通じない……。
「さっき私の家着く前に言ってくれたら良かったのに……」ぶつぶつぶつぶつ
「言ったら家から出て来なかったろう? さすがに家宅侵入して連れ出すのもちょっとな……」
悪びれもせず言って笑ってる。
「さ、干し終わったから飲み行くぞ!」
ホントにこの人勝手すぎる。
「駄目っ、残った洗濯物終わらせたいし、下のコンビニで買い出しして今日は家飲みです。それは絶対譲れませんっ! あとエッチな事は絶対絶対禁止ですからね!!」
「するかっ!!」
三回目の洗濯のスタートボタンを押し、二回目の洗濯物の入ったカゴを抱えて別室へ行く。
さっきまでがらんとしていた八畳くらいの広さの洋間では、二つの物干しスタンドに吊り下げられた一回目の洗濯物達が、エアコンの静かな風にそよがれて、洗剤のさっぱりとした香りを漂わせている。
さてと
パチ…パチ…パチ…パチ……
二十組以上ある全く同じデザインのグレーの靴下を、一枚一枚サークルのピンチに留めていると、何だか切なぁい気持ちになってくる。
これが彼氏のだったら、新婚さんみたいで嬉しいのかもね。
優君の衣類は洗った事なかったけど……ととと。
ぎゅっと目を閉じ頭を小さく横に振って、脳裏に浮かんだ元カレの顔を振り払った。
あ、そう言えばコレ、いちおう彼氏のだった。
何だか妙にウケてしまい、少し吹き出し一人でくすくす笑ってしまった。
「数子おはよ……」
名前を呼ばれてハッとする。
どっぷり一人の世界に入っていたから気付かなかったけど、いつの間にか鈴田先生がドアの所に立っていた。
う゛、何か意味ありげにニヤついてるし、一人で笑ってるとこゼッタイ見られた。
「洗濯サンキュー! それにしても嬉しそうな顔して、やっぱ好きな人が着た物の洗濯とかって嬉しいわけ?」
ん? 今何て言った?
いえ、聞こえてたけど……誰が誰の好きな人!?
この人また訳の分からない事言い始めたし……。
「量の多さに現実逃避してただけです」
呆れたように言って手を動かす。
マシーンのように淡々と仕事をこなして、とっとと家に帰りましょ。
途中で駅前のドラッグストア寄って、高~い入浴剤(憧れの一袋五百円)買って、今夜はお風呂でプチ贅沢しよ。良し、それだ!
「数子、照れちゃってかぁわいい……」
無視無視。
「なぁんて言葉は期待するなよ、見た目3」
くぅぅ、コイツの脇腹、グーで二,三発やっちゃってイイですかぁっ!?
「さて……飯でも行くか?」
「まだ洗濯の途中ですし駄目です」
声の主を見もせず、手を動かしつつビジネスライクに言えば、
「これ干したら行こう……」
鈴田先生は、横で一緒に洗濯物を干し始めた。
「私、お昼に沢山食べたのでお腹空いてないですし、適当に食べて来て下さい。……それにあと一回洗濯機回さないといけないし、干すもの干して、最後に乾燥機を回して帰りたいので急がないと」
少し穏やかに言ったところで、吹き出すイケメン変人ドクター。
ん? 今の話に笑える要素ありましたっけ?
怪訝な顔で隣を見れば、
「言ってなかったけどさぁ、数子は今夜うちに泊まる事になってるから」
なってないからーっ!!
「い、いきなり何言って……、男の人の家に二人っきりでなんて、泊まれるわけないでしょーっ!!」
目を見開いて小さく叫ぶと、
「おい見た目2、お前、元カレんちに泊まった事とか二人で旅行した事無いの?」
と冷静な声が返って来る。
3からひとつ降格ですか?
いやそんな事はどうでも良くて、有りますけど、それはお互いを良く知ってからで、私あなたの事は全然知らないし……、とか言ったら、お互いのホクロの位置とか押し倒すとか、またぶっ飛んだ事言い始めそうだし……。
とにかく絶対無理だから!!
「数子、蛇イチゴみたいに顔真っ赤だぞ。無言の自白有り難う、って事でフィアンセの俺と一夜を共にしても問題ない! 何もしないって言ったろ? けどごねるなら、この場で押し倒してヤッちゃうよ~」
ひぃぃ、また始まったぁぁ!
「お互いの事を知るために、今夜飲みながら話そ、良いだろう?」
良くないっ!
もう一度強く拒絶しても結果は同じだろうし、ここはひとつやんわりと。
姑息だろうが何だろうが、とにかくこの場を切り抜けられればそれで良い!
「着替えとか何も用意してないし、やはり今日は無理です。また今度」
と言ったところで、あっさり遮られる。
「パンツとか化粧品とか最低限必要なものは下のコンビニで買えるし、パジャマ代わりに俺のTシャツ貸してやるから、問題ない」
あるあるある、大ありだって!!
ダメだ、この人に何言っても通じない……。
「さっき私の家着く前に言ってくれたら良かったのに……」ぶつぶつぶつぶつ
「言ったら家から出て来なかったろう? さすがに家宅侵入して連れ出すのもちょっとな……」
悪びれもせず言って笑ってる。
「さ、干し終わったから飲み行くぞ!」
ホントにこの人勝手すぎる。
「駄目っ、残った洗濯物終わらせたいし、下のコンビニで買い出しして今日は家飲みです。それは絶対譲れませんっ! あとエッチな事は絶対絶対禁止ですからね!!」
「するかっ!!」
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