なぜか知りませんが婚約者様はどうやら俺にデレデレのようです

ぷりん

文字の大きさ
8 / 16
本編

甘いものは世界を救う

しおりを挟む
 ずっとケーキを見ているだけで一向に食べようとしない俺に彼はしびれを切らしたのか口を開いた。
 「ほら。見てるだけじゃなくて食べなよ」
 「すいません。はしたなくて、、、でも食べるのがもったいなくて。」
 彼は何か考える素振りを見せた。そして、彼はスプーンを持ちケーキに手をかけた。


 「あーんして」
 目の前にいるイケメン宰相様は何を思ったのか生クリームとイチゴがのったスプーンをこちらに向けてきた。
 しっかり会って話すのはこれで2回目だが、この男の性格は理解している。彼は人を従わせる力を持っている。だから、宰相と地位までのぼれたのであろう。

 よって、俺はこの状況を避けることができないのである。

 しかも、相手はあの宰相様である。世の女性を虜にしているイケメン。また、俺にだけ普段見せない表情を見せてくれるのである。

 俺はなぜか心臓が締め付けられた気がした。
 しかし、まだそれには気づきたくない。。。気づいたらダメだ。。。始まりが来れば終わりが来るのだから。

 俺は渋々口を開けた。

 「うまい」と一言つぶやいた後、黙々とスイーツを食べすすめた。


 俺の顔はきっと食べたイチゴより赤いだろう。

 俺が食べている間、彼はスイーツに手を付けず静かにコーヒーを飲みながら俺を見ているだけだった。沈黙が流れている。しかし、気まずくはなかった。
 それどころか、この静かな時間もわるくないなと思ったのであった。


 お店を出ると外は赤く染まっていた。宰相様は『最後に連れていきたい所がある』と言って俺の手を握った。歩きながら俺たちはたくさんのことを話した。好きな食べ物、嫌いな食べ物、趣味、誕生日。
 意外なことに、彼は甘いものは苦手なそうだ。それなのに、俺のために嫌な顔もせずにあの店に連れて行ってくれた。俺はまた胸を締め付けられた気がした。

 俺たちは話し続けた。今までの時を埋めるかのように。


 彼が『連れていきたい所』は、宝石屋でも服屋でも花屋でもなかった。ただただ王都で一番高いであろう丘の上であった。空気が澄み、緑に包まれ、鳥たちのさえずりが聞こえる。
 「景色綺麗でしょ。ここからは城だけじゃなくて、王都のすべてが見えるんだよ。」
 「本当ですね。俺たちがこの王都を支配しているみたいですね。」


 「、、、、まあ、宰相は実際に絶対的な権力をもっていますけどね。」
 「、、、、宰相だからと言って手に入らないものもあるんだけどね」
 俺はハッとした。気を許しすぎた。
 俺はそっと彼の顔を見ると、今日一度も見たことがない顔をしていた。


 辛そうに、、、悲しそうに、、、、
 
 静かな時間が流れる。

 言わなきゃよかった。俺は一人反省した。
 俺の中の宰相説明書に新しいことが書かれた。
 『宰相に権力の話するべからず』

 しばらく時間がたった後、彼は口を開いた。
 「それより、『宰相』ってどうなの?」
 「宰相??」
 「呼び方だよ。君会った時から、僕のこと『宰相』ってよんでいるでしょう?仕事中だったらわかるけど、今はプライベートだよ。わかるよね?」
 どうやら宰相様は名前で読んで欲しいみたいだ。
 意外に可愛らしい所もあるんだと思い、俺はクスクス笑った。彼はそんな俺をみて不満そうだ。

 さて、なんと呼べばいいのだろう。名前で呼ぶのはハードルが高すぎる。ここは家名で呼ぶのが無難だろう。。
 「ス、、スベリア様?」
 「ノアール」

 名前で呼べってことか?!

 もう俺は彼の手中にあるのだろう。あの目、口は俺を夢中にさせる。あの手で撫でられると、俺は自然に素直になれる。手を握られると、俺の芯まで温められる。
 

 「うぅ、、、ノアール様!これでいいですか!!」
 「、、、よくできました。」
 彼は少し驚いた顔をした後、その金色の髪のように輝いた笑顔を見せた。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...