補欠部員

西川慎也

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7.初めてのイジメ経験(3)

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みんなの前で土下座しろという翔の言葉は、
僕にとって刺激的だった。
その時の光景が脳裏に浮かぶ。
30人近いチームメイトが、翔の前に正座する僕を
取り囲んで上から見下ろしている。
土下座する自分の惨めな姿が
目に浮かんでくる。
僕は脳裏に映る光景に興奮した。
 
佐藤「分かりました。
   みんなの前で土下座します」
僕は興奮した勢いで答えた。
藤宮「えっ!!」
 
しばらく会話が途切れた。
僕は、翔の前に土下座する自分は想像できた。
だが仮に監督やコーチがいない場所で
土下座したとしても、いずれ知るところになる。
その時、監督やコーチがどんな対応をするだろう。
何か、まずい展開になる可能性もある。
それは翔も同じだったようだ。
“優等生”の僕が受け入れられないような
要求を出したものの、あっさりOKされて
絶句している。
お互いに土下座は避けたいと思っていたが、
それを言い出せないでいた。
 
佐藤「土下座します。
   土下座しますから、一つお願いがあります」
僕は話を変えた。
藤宮「うん?」
佐藤「こういう2人だけの機会に、
   僕を指導していただけませんか。
   僕が藤宮さんのような選手になれるとは
   思いませんが、少しでも近づきたいんで」
 
僕にとって、サッカーは単なる趣味だ。
今以上に上手くなりたいとは思わない。
ただ翔には、バカにされたり、
けなされたりしていたい。
そういう場を作りたかったのだ。
 
しばらく沈黙が続いた。
藤宮「指導かぁ・・指導ねぇ・・」
翔は口の中でブツブツ言うだけだ。
藤宮「う~ん」
何かを考えているようでもある。
 
藤宮「ヨシ、分かった。じゃ立って」
僕は立ち上がった。
藤宮「その背番号11のユニフォームは
   俺の物なんだよね」
佐藤「はい」
藤宮「じゃ、脱いで」
佐藤「はい」
僕はユニフォームを脱いで、上半身裸になった。
藤宮「サッカーパンツも」
佐藤「は、はい」
僕はサッカーパンツも脱いだ。
翔が手を伸ばしてきたので、
シャツと一緒に手渡す。
僕の下腹部はショートスパッツを残すのみだ。
藤宮「恥ずかしい?」
佐藤「は、はい。少し・・」
藤宮「ふ~ん。次はスパイク」
僕はスパイクも脱いだ。
藤宮「じゃ、スパッツも脱いで」
佐藤「あっ、はい」
僕はとうとうサカスト全裸の
フリチン状態になった。
だが前は隠さず、休めの姿勢を取る。
“どうぞ見て下さい”の体勢だ。
 
藤宮「へぇ。こんなチンチンなんだ」
翔はニヤリと笑った。
藤宮「俺の指導って、こういう事なんだけど」
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