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1章 領主ファクトリア家

5.レイ・スペルガー精霊使いになる

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 直近のダイジェスト。

 俺はガドの息子となり、レイ・スペルガーとなった。
 そして騎士団長の息子として余裕ができたら訓練をすることになった。
 何故だ。


         ーーーーーーーーーー


 ガドの家は領主の邸宅の中にあった。
 中といっても領主は城に住み、その下の大きな庭にある屋敷の一つだ。
 それでも大きく立派な屋敷だが、ガドによると他の騎士団員と一緒に暮らしているらしい。
 汗臭そうだ。

 そして簡単に敷地内の説明をされた後、俺は与えられた自室にいた。
 綺麗に整えられたベッドと簡素な作りの机。
 ほっとする。
 
 空はオレンジ色に染まり、太陽は沈みかけていた。

 しかし今日はいろんなことがあった。
 神に会い、全裸で飛ばされ、裸を大男に晒し、その大男の養子となった。
 初日から大波乱だ。俺の人生これから大丈夫なんだろうか.....

 なんて浸っていたら突如ドアが開き、ガドが顔をのぞかせた。

 「落ち着いたか?」

 思春期の息子の部屋をノックもせずに覗くなんて...
 ガドには教育が必要なようだ。

 「はい。だいぶ落ち着きました。今日はもうこのまま休んでもいいですか?」
 「ああ。大丈夫なら明日から訓練をするが。いけるか?」
 
 軍隊かな?
 2日目から訓練とは相当ハードである。
 ガドは突然できた義理の息子にも容赦はないらしい。
 まぁ別に疲れてないからいいんだけどね。

 「大丈夫です。明日はよろしくお願いします」
 「しかし、お前は見た目のわりに礼儀正しいな」

 まぁ一応大人ですから。

 「そんなことないですよ」
 「そんな謙虚さが怖いところだ。まぁいい。明日は9時からだ。今日はゆっくり休むと良い」
 
 ガドは俺の返事を聞くとさっさと部屋から出て行った。
 無愛想な見た目をしているが歩み寄ろうとしてくれているのだろう。

 しかし今日はいろいろな事があったが、なんとかこれからやっていけそうだな。
 明日からもがんば

 「やっと出てこれた!」

 俺の心の声を遮るように何かの声が部屋に響く。
 今もう休む感じだったんだが...。空気読めよ。

 「??」

 若干イラつき気味の俺は部屋を見回すも誰もいないことを確認した。

 「ここだよ!ここ!」

 どこだ?いないぞ。
 そんな「俺だよ俺!」みたいな曖昧な返事はやめてほしい。

 「下!足元見て!」

 俺は下を見た。そこには身の毛もよだつ恐ろしい獣
 ———ではなく猫が尻尾を立ててこちらを見上げていた。

 「やぁ!こんにちは!」

 疲れているのか。やはり俺は疲れているのか。
 猫が喋るなどあるわけがない。
 全裸で転移するのは偶にあるみたいだが。

 「信じてないみたいだね。でも自己紹介をさせてもらうよ。
 僕は上級精霊、そして君の守護精霊だよ!」

 なんかいきなり超展開だな。
 猫が喋っているだけでなく、精霊とか言っている。
 正直頭がついていかない。
 俺の頭のスペック大丈夫かな?

 「名前はまだないからレイ君がつけてよ」

 吾輩は猫であるってか。
 名前....?
 そういや精霊は名前を付けることで正式に主従関係を結ぶってどこかで聞いたことがあるような気がしなくもない。
 名前か....

 「じゃあ『マーブル』で。」
 「うんいい名前だね。今日から僕はマーブルだ」

 マーブルは俺が実家で飼ってた犬の名前だ。
 センスがないとか言わないでほしい。

 「それでなんで精霊が急に?」
 「まぁ実は最初から居たんだけどね。あの森の中から。転移の前に光ったでしょ?アレ僕だよ」

 ......え?あのワープお前?

 「あの時はレイ...あ、レイって呼ぶね。レイが困ってたから、出るのは今じゃないかな?なんて思いながらレイの心の中に閉じこもるようにしたんだ。」

 ニートみたいなセリフだ。
 心の中に閉じこもれるのか。

 「だから余裕ができた今出てきたということですか」
 「そう!理解が早いね!」
 「それで、なんで僕なんですか?」

 それが一番気になるところだ。
 異世界に来て取り憑かれる。怪しすぎる。

 「んー。なんか面白そうだったかな。特に理由はないよ」

 案外適当だった。
 本当か?
 まあ敵対しないなら何でもいいけどさ。

 「.....マーブルは僕に何かしてくれるんですか?」
 「当たり前だよ!僕はレイの守護精霊!レイを守り、従うために存在するんだ」

 自ら率先して人の奴隷になる...ドMじゃないか。
 なんかすごいのと契約しちゃった。

 「いつもは心の中に閉じこもってるけど、時々出てくるからよろしくね」
 「....よろしくお願いします」
 「そんな畏まらなくていいよ!もっと命令口調とかでいいよ」

 命令...?
 いかん、もう全てがそういうセリフに聞こえてくる。

 「じゃあよろしく、マーブル」
 「うん!」

 そうしてマーブルは消えた。
 言葉通りなら俺の心の中にいるはずだ。ちょっと怖い。

 しかし1日目に養子になり、精霊を従える俺の人生って....
 そんなこんなで1日目が終わったのだった。
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