上 下
106 / 119
8章 勇者の国

88.怒り

しおりを挟む

 「やはり俺の王選に参加しろ」

 真剣に、そしてにやけながらバーニングは手を差し出してくる。
 ・・・これを掴めと?やなこった!

 「は、なんでだ?」
 「その方がお前にも俺にも得があるからな」

 だからそれはなんなんだよこの熱血某マツオカめ。

 「ふふふ、問題点は『王都へ入れない』。ただ一点だけ。理由は、封鎖されているからだ」
 「・・・そうだな」

 だから?

 「だがな、その封鎖を通り抜ける方法がある!それも、合法的な手段で!」

 つまり、正攻法で乗り込むことができる、と。

 「どうやって?」
 「ふふ、その前にある話をしよう。
 クーデターで建国された国は過去にもある。しかし、それらの国はある1つの悩みを持っていたのさ。クーデターゆえに抱える悩みをな」

 クーデターだからこその悩み?
 うーーん、要は、言ってしまえば不正に国を建てたのだからそこの弊害.....。

 「他の国に認められなかったとか?」
 「お、あたり!」

 まさかのビンゴ。俺氏冴えてるぅ!
 
 「他の国は、クーデターで建てた国なんかと関わりたくないわけだ。つまり、外交や貿易にも影響が出る。んでやがては経済が行き詰まって滅亡するわけだが.....」

 俺の言いたいことわかる?
 と俺を見てくるがさっぱりですゴメンナサイ。

 「・・・だから、その悩みをつくのだ」

 悩みをつく?それが王選となんの関係があるんだよ。
 
 「・・・だから、シュウスイとクーデター国とで外交を持ちかけるんだよ」

 外交を持ちかける?あ、なるほど。向こうとしては外交は嬉しいから例え王都を封鎖してても入れてくれるってわけか。
 ・・・で、王選......。

 「あ、国を取れば外交官になれる、ってそういうこと!?」

 つまりはこの国の外交官として俺を派遣すれば合法的に入国できるってわけ?

 「うむ」
 「面倒な言い方するなぁ」

 だが確かに有効的ではある。非常に遠回りではあるけども。

 「で、俺の王選に参加するか?」

 そして話は最初に戻る。
 遠回りっちゃあ遠回りだが正攻法で乗り込める方法。ありがたく提示してくれたわけだ。
 しかし王都へ強引に乗り込めなくもない。
 あと1つなにか欲しいところである。

 「ちなみに、シュウスイは権力が結構強い。乗り込んだ後の後始末も簡単に済むだろうな」
 「よし乗ろう」

 基本、俺は面倒臭いものは嫌いである。
 ちゃっちゃと王選終わらしてちゃっちゃとエミリア助けだすのがベスト。
 正直、後始末なんてやってらんね。
 
 「ふ、参加してくれて助かるぜ。じゃあさっさと国でも取るとしようぜ!」
 「ああ!」

 俺とバーニングは拳をガッチャンコする。
 なんだかんだ言ってコイツとは気があいそうだ。・・・まあコイツが王になりさえすれば俺は甘い蜜を吸える。その保障だけで十分王選に参加する価値はあるのだ。

 「あ、もし俺が王になったらお前には国軍の長官になってもらうぜ?」
 「あ?」

 え?

 「そんでその美人さん達は有力大臣とか貴族だな」
 「う?」

 いきなり話が飛躍。

 「俺、あんまり人とのコネ持ってねえし取り敢えず近いやつを重役につけるつもりだから」 
 「あ、そんなんですか」

 要は友達いないってことだな。納得。

 「んでお前に裏切られたら困るから俺の妹と結婚な」
 「・・・はい?」
 「要は政略結婚てやつだな。トールストンと結婚させんのも良かったんだけど、あいつ俺を裏切れないし、やっぱお前じゃん?」
 「はいはい?」
 「ま、俺が王になったらの話だけどな!ガハハハハ!!」

 いやガハハハハ!じゃねえよ。
 え?ケッコン?血痕?

 「いや、待て待て!だから俺婚約者いるし!」

 今にでもバーニングを殺しそうな婚約者が。お、恐ろしいよカルナさん。

 「あ、そうか!うーん、じゃあ取り敢えず保留ってことで!」

 その返事で、取り敢えずバーニングの命も保留された。カルナも心のナイフを抑えたようである。

 「んじゃあ、王選の打ち合わせはまた後日ってことで。今日は夜遅いから俺は失敬するぜ」

 と言って暴虐無人で自分勝手で唯我独尊のバーニング野郎は店を出て行った。
 アンはすでにグースカ寝ているし、ハクリもうとうとしている。ちなみにトールストンはいつの間にか姿を消していた。あの雰囲気が耐えられなかったようだ。逃げやがって。

 つまり、オコなカルナとほぼ2人きりである。

 「ケッコン?」

 目が、怖い。え?こんな人だったっけ?

 「ま、まさかするわけがないだろ?俺にはカルナがいるんだからさ!」

 はずかしめの極刑を受ける俺。必要な犠牲なんだ、耐えろ俺のメンタルっ!

 「も、もう!レイさんったら!誤魔化されませんよー?」

 するとコロンとカルナの態度が変わる。照れ照れだ。
 チョロくて良かった。

 が、再びカルナの目が黒くなる。

 「で、助けにいく女性とはどのような関係で?」

 あ、そっちに戻ります?

 「ただの幼馴染だよ」
 「幼なじみ......。その人可愛いんですか?」
 
 可愛い?そりゃあーーー

 「可愛いけど」
 「・・・へえ」

 うん、ちょっと間違えた。完全に殺人モード入っちゃったよカルナさん。

 「ま、まあカルナの方が可愛いけどね?」

 と慌ててフォロー。女性はとにかく褒めるべし!と教わったんだ。彼女いない歴=年齢の友人から。え?デジャブ?

 「!!???」

 すると、途端に顔を真っ赤にするカルナ。黒だったり赤だったり彩り豊かである。いや黒は彩りじゃないけど。
 まあ、正直1年前ぐらいのエミリアと今のカルナを比べたらカルナの方が優っている。
 エルフの血、というやつだろう。なんか、圧倒的な可愛さが存在しているのだ。

 って、俺何言ってんだろ。

 「レイさん」

 すると改まってカルナがこちらを向いた。耳が真っ赤だ。

 「好きです」
 「ぐはっ!!!」

 破壊力絶大だ。なんでこの子はこうも可愛いんだ?

 「だから、あの......」

 顔をりんごにさせながらしどろもどろに言葉をつなげる。

 「・・・一緒に寝てもいいですか」

 ・・・うん。

 「・・・それはダメーーー」
 「ダメじゃな」

 俺の声を上書きするようなハクリのとげとげしい声。
 さっきまでウトウトしてたくせにいきなり起こるとか情緒不安定なやつだ。

 「な、なんでですか!?」
 「だって......」

 そしてハクリは自嘲気味に笑う。

 「お主らにイチャつかれたら妾らの寝るところなくなるし?」

 ・・・ああそうだ。そういえば俺らはあのバカアンのおかげで金がないんだった。
 食いあらすイナゴめ。


 結局、その日はボロ宿で寝たのだった。女子勢は。
 俺?もちろん廊下です。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回から王選編へ。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

転生したので、とりあえず最強を目指してみることにしました。

和麻
ファンタジー
俺はある日、村を故郷を喪った。 家族を喪った。 もう二度と、大切なものを失わないためにも俺は、強くなることを決意する。 そのためには、努力を惜しまない! まあ、面倒なことになりたくないから影の薄いモブでいたいけど。 なにげに最強キャラを目指そうぜ! 地球で生きていた頃の知識と、転生するときに神様から貰ったチートを生かし、最強を目指します。 主人公は、騎士団に入ったり、学園に入学したり、冒険者になったりします。 とにかく、気の向くままに、いきあたりばったりに書いてるので不定期更新です。 最初シリアスだったのにギャグ要素が濃くなって来ました。 というか登場人物たちが暴走しすぎて迷走中です、、、。 もはや、どうなっていくのか作者にも想像がつかない。 1月25日改稿しました!多少表現が追加されていますが、読まなくても問題ありません。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手

Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。 俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。 そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。 理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。 ※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。 カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...