異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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8章 勇者の国

84ー2.婚期

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 「ダメ.....ですか?」
 「い、いややややややや!!」

 まだ11歳ぐらいの体に抱きつき、すでに私より高い身長に少しびっくりしながら、あざとく上目遣いでレイさんの顔を覗き込んだ。
 すると、目があっちこっちに行ってるレイさんがひどく動揺する。

 もう、私はなりふり構ってられないのだ。

 今現在、私は124歳。エルフの寿命は600前後で、人間でいう成人になるのは50歳ぐらい。
 そして、エルフ女性の一般的な婚期は50~130歳まで。つまり、フリーの私はギリギリなのだ。婚期が。

 それをお兄様も重々承知していたようで、度々お見合い話はあったものの、すべて断っている。
 だって相手が魅力的じゃないからーーーなんて言って、もう124歳になっているのは悲しい事実だ。

 だから村を出るときにも、お兄様は私に言った。
 「この旅で将来の伴侶を連れてこい」と。
 真剣な顔で、いかに結婚して夫婦生活が良いか語ってきた。だから絶対にこの機会を逃すなよ、と。
 ちなみにお兄様は独身である。

 そうして、私はこの道中素敵な出会いを探していた。運命なんてものがあると信じて。

 けど、実は近くにいたのだ。私の運命の人。

 「あ、あああああああ」

 そんなことを考えていると、ぷしゅう~とレイさんの顔から蒸気みたいのがあがる。見れば顔は真っ赤だ。わ、私の顔も多分真っ赤だろうけど。

 「け、結婚してくれますか?」

 その言葉にびくりとレイさんが反応する。
 もう一押しかもしれない。
 と、思った時、レイさんが予想外の言葉を投げた。

 「い、いや待てって!け、結婚てあれだろ、お互いに好きなもの同士がする物だろ?
 掟でそれを勝手に決められるのは嫌じゃないのか?」
 「・・・・え」

 多分、苦し紛れに言った言葉なのだろう。
 しかし、それは私の心をひどく揺らした。

 思わず抱きついていた体を引き離し、自分の心臓のリズムを整える。
 そして意を決した。

 「わ、私は好きですよ?」
 「・・・え?」
 「なんで好きでもない人にこんなに結婚を迫らないといけないんですか」

 え、そうなの?っといったレイさんの顔がさらに私の心を揺さぶる。
 今までの行動は全部、好きだからやっていた。なのに、なのにそうとは思われていなかった。ただの変な行動として見られていたのだ。
 そして、レイさんは間違いなく私に気がない。
 今の言葉でその事実を叩きつけられた。
 心が今すぐにでも崩れ落ちそうになる。

 でも、まだある。

 「レイさんは、私の命ーーーそれに村まで助けてくれて......。なんだか上手く言えないですけど、私の心も助けられたんです
 そんな、そんな人を好きになっちゃだめですか?」
 「いやけど年齢とか」
 「そんなの関係ないですもん!愛さえあればなんとかなるんです!」

 私は思わず叫び、周りの視線が集まってることに気づいた。しゅ~と顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
 だけど、まだ言いたいことはたくさんある!

 「だからっ....」
 「そこまでじゃ、カルナ」
 「っ!な、なんですかハクリさん?」

 ここぞという場面にハクリさんが割り込んできた。私がキッと睨むと、ハクリさんが冷笑を持って返した。
 ーーー背筋が凍るような恐ろしい冷笑を。

 「レイが困っておる。それにお主はさっきから自分のことしか話しておらんぞ?レイの気持ちは無視するのか?」

 そう言われて、私は初めて気づいた。
 レイさんが微妙な笑みを浮かべていることに。
 
 「っ・・・・・」

 あ、呆れられた....?
 そんな、せっかく心から慕える人に出会えたとーーー
 
 「・・・一旦ここでお開きじゃな。レイ、アンを頼む。妾は此奴の頭を少し冷やしてくる」

 そう言ってハクリさんは私の腕を強引に掴み、レイさんと反対方向へと引きずっていく。
 私は呆然とした気持ちでそのまま為されるがままに引きづられていく。
 なんで私はいつもこうなんだろう.......。

 「いや、ちょっと待ってくれ」

 そんな時、レイさんが口を開いた。
 それにハクリさんは反応して足を止める。

 「カルナの気持ちはわかった。
 だけど、やっぱり結婚はできないや」
 「や、やっぱり.....」

 もともとわかっていた。レイさんが私に気がないことぐらい。
 でも、やっぱりこれは堪えるなぁ......。

 「カルナ、だからさ、とりあえず婚約ってことでどう?」
 「お気遣いは大丈夫で......で婚約!!????」
 「あー、あぁ。そもそも俺年齢的に結婚できないし」
 「え、出来ますけどって婚約!!???」
 「いや出来るのかよ!」
 「出来ますよう?って婚約!???」
 「あ、ああ....」
 
 婚約??
 婚約ってあの結婚を前提にしてほぼ結婚することが決まってるものだよね!!!??
 
 「な、なんで.....?」

 思わず口に出たのはそんな言葉。まさかこんな返事が返ってくるとは思いもしなかったのだ。
 レイさんは少し顔を歪めて、苦笑いしながら答える。

 「俺もいろいろ考えてさ。けど結婚は早すぎるし、じゃあ婚約でってことで」
 「か、軽いですよ~」

 そう言いながら私の目には涙が溢れてくる。
 だって、だってまさかこんなことになるとは思いもしなかったから。
 今日は今まで最良の日かもしれない。
 だって婚約だ。124年間の終止符だ。

 「お兄様に報告しないと!」

 私の未来は今、今までにないぐらい希望に満ち溢れている!





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前回に引き続きなかなかぶっ飛んでおります。もう勢いで乗り切ります(遠い目)
さて、なんでレイくんは婚約を持ち出したのか。次回、明らかに!(まだ続くのか汗)
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