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7章 エルフの里
79.妖狐
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「ぜえ...ハア.....ハア......」
落ちてくる岩の塊を次々と壊し、十数個目になるというころ、やっとのことで岩の落下が止まった。
周りには1000はいたはずの我が亜人軍の姿はなく、ただただ焼けただれる何かが無残に散っているだけだ。
なぜ、こうなった。
「一体何が、何が起きたのだ.....」
圧倒的な兵力差で間違いなく勝てると思っていたのに。
「亜人王様、ご無事でしたか」
横目でチラリと見ると黒服が息を切らしながら生存しているのが確認できた。
どうやら生き残ったらしい。しかし黒服もやはり無傷ではなく、肩から出血し、顔は青ざめている。
「無事......」
そんな黒服の言葉を反芻すると、いかに自分が惨めなのかが胸をえぐる。
1000を超える大軍、それを率いて負けたのだ。それも生き残ったのは2人だけ。プライドはズタズタに引き裂かれ、いかに自分が愚将なのかがわかる。
いや、だが........。
「そうだ、我は無事だ。無事なのだ!」
黒服が不思議そうに我を見る。
「敵もまだまだ甘い。もし我なら岩の塊を落とした後、確実に仕留めるため軍をここに配置しておった。
それが無いということは天が我を見捨てなかったということよ!」
生きさえすればまた巻き返せる。生きていればチャンスなど幾らでもあるのだから。
そう思い、黒服を見ると彼も激しく同意するように首を縦にふっていた。
「な、なるほど!確かに敵は我々を甘く見ていたようでーーーー」
その瞬間黒服の首が飛んだ。
赤い鮮血が飛び散り、言葉を途中で遮られた黒服の首は虚しく地面を転がっていく。
「ーーーーは?」
突然すぎる出来事だった。
「残念だな。力の差がありすぎて実力がわからない」
そう言いながら、1人の少年が森から出てきた。小柄の、10歳ぐらいの少年だ。見たところエルフでは無い。
「だ、誰だ!!??」
「誰?知ってどうする。お前はもう死ぬんだから」
なっーーーーー
反論しようとして、一歩前に出ようとすると視界が歪んだ。
そして急に視界が低くなっていき、そしてようやく自らの状態がわかった。
自分の体は制御機関を失い、力を失ってパタリと倒れていたのだ。
つまり、とうに首が飛んでいた。
「あーーーーぁーーー」
頭が真っ白になっていく。目はとうに見えなくなっていて、同様に何も聞こえない、
まだだ........生きさえすれば、生きさえすればまたチャンスがーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「妖狐まじぱねえな.....」
俺は目の前の亜人王らしき人を瞬殺しちゃった妖狐の強さに歴然としていた。
ラグナロクでも十分やっていけるほどの強さだ。まあ流石に100層ぐらいまでだが。
そんな、当の妖狐はキツネの姿から可愛らしい幼女の姿へと変わる。妖狐はニコニコ笑顔を浮かべ、「さあ、どうだすごいでしょ!」と視線で訴えていた。
その姿に思わず和んでしまう。今まで殺伐とした戦場ばっかだけに砂漠の中のオアシスを見つけた気分だ。
まあやっていることは人殺しだがな。
「だけどあの巨大な姿は?」
そう、俺はあの半端ない化け物が見たかったのだ。狐が首を落とすところなど見たく無い。
どうせなら派手に行きたいでは無いか。
「アレは燃費が悪いのだ!このぐらいの相手ならアレで事足りるのだ!」
う、うーん燃費とかそういう問題じゃ無いんだよなぁ。何ていうか、男のロマンというか.....。
「全く、仕方がないのだな.....、では見せてあげるのだよ!」
幼女はそういうと木を駆け上がり、勢いよく空へとジャンプしたーーーー
ズドドォォォォォオンン!!!
と、その瞬間真昼間の雲1つなかった晴天の空に突如稲妻が響き渡った。
極台の稲妻はおそらく大樹があるであろう方向へと落ち、あまりの威力に大地が悲鳴をあげる。
「な、なんだあれ.......」
まだ敵はいたのか?それもあんな魔法を放てる超強力な魔法使いが.....。
「グオォォォォォオ!!!!」
さらに後ろからの雄叫び。
紛れもない幼女だったものだ。
振り返ると、そこには美しい白毛をなびかせる大きな獣がいた。
そこらへんの木よりも随分大きく、また威圧感がある。ひょっとするとちょっとしたマンションぐらいはあるかもしれない。
ともかくヌッとした巨大な獣なのだ。
そして多分、理性が飛んでいる。
「グオォォォォォオ!!!」
獣は周りの木々を踏み倒し、唯一の生き物である俺を見つけると何も考えもせずに一瞬で踏みつぶしたーーーつもりだったのだろうが、俺は踏み潰されることなく外側に2歩ほど移動していた。
確かに獣は強いし速い。だが迷宮の魔物ほどでもないし、ましてやハクリには遠く及ばない。負ける要素がないのだ。
「よしよし、落ち着け」
俺は強引に獣の頭部分に飛び乗ると、魔力を放出して威圧しながら穴の少し上を撫でる。
こうすれば犬は大人しくなると聞いたことが.....あれ?あれって猫だったっけ?てか狐って何科だ?
・・・もういいや。
「おいポンコツぎつね、大樹の所まで連れてけ」
「グオォォォォォオ!!???」
獣は少々戸惑い、迷ってるみたいだったので、少し鼻を撫でると大人しく連れて行き始めた。
俺は獣の頭の上に乗り、某20世紀少年映画のような気分を味わいながら大樹へと向かった。
落ちてくる岩の塊を次々と壊し、十数個目になるというころ、やっとのことで岩の落下が止まった。
周りには1000はいたはずの我が亜人軍の姿はなく、ただただ焼けただれる何かが無残に散っているだけだ。
なぜ、こうなった。
「一体何が、何が起きたのだ.....」
圧倒的な兵力差で間違いなく勝てると思っていたのに。
「亜人王様、ご無事でしたか」
横目でチラリと見ると黒服が息を切らしながら生存しているのが確認できた。
どうやら生き残ったらしい。しかし黒服もやはり無傷ではなく、肩から出血し、顔は青ざめている。
「無事......」
そんな黒服の言葉を反芻すると、いかに自分が惨めなのかが胸をえぐる。
1000を超える大軍、それを率いて負けたのだ。それも生き残ったのは2人だけ。プライドはズタズタに引き裂かれ、いかに自分が愚将なのかがわかる。
いや、だが........。
「そうだ、我は無事だ。無事なのだ!」
黒服が不思議そうに我を見る。
「敵もまだまだ甘い。もし我なら岩の塊を落とした後、確実に仕留めるため軍をここに配置しておった。
それが無いということは天が我を見捨てなかったということよ!」
生きさえすればまた巻き返せる。生きていればチャンスなど幾らでもあるのだから。
そう思い、黒服を見ると彼も激しく同意するように首を縦にふっていた。
「な、なるほど!確かに敵は我々を甘く見ていたようでーーーー」
その瞬間黒服の首が飛んだ。
赤い鮮血が飛び散り、言葉を途中で遮られた黒服の首は虚しく地面を転がっていく。
「ーーーーは?」
突然すぎる出来事だった。
「残念だな。力の差がありすぎて実力がわからない」
そう言いながら、1人の少年が森から出てきた。小柄の、10歳ぐらいの少年だ。見たところエルフでは無い。
「だ、誰だ!!??」
「誰?知ってどうする。お前はもう死ぬんだから」
なっーーーーー
反論しようとして、一歩前に出ようとすると視界が歪んだ。
そして急に視界が低くなっていき、そしてようやく自らの状態がわかった。
自分の体は制御機関を失い、力を失ってパタリと倒れていたのだ。
つまり、とうに首が飛んでいた。
「あーーーーぁーーー」
頭が真っ白になっていく。目はとうに見えなくなっていて、同様に何も聞こえない、
まだだ........生きさえすれば、生きさえすればまたチャンスがーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「妖狐まじぱねえな.....」
俺は目の前の亜人王らしき人を瞬殺しちゃった妖狐の強さに歴然としていた。
ラグナロクでも十分やっていけるほどの強さだ。まあ流石に100層ぐらいまでだが。
そんな、当の妖狐はキツネの姿から可愛らしい幼女の姿へと変わる。妖狐はニコニコ笑顔を浮かべ、「さあ、どうだすごいでしょ!」と視線で訴えていた。
その姿に思わず和んでしまう。今まで殺伐とした戦場ばっかだけに砂漠の中のオアシスを見つけた気分だ。
まあやっていることは人殺しだがな。
「だけどあの巨大な姿は?」
そう、俺はあの半端ない化け物が見たかったのだ。狐が首を落とすところなど見たく無い。
どうせなら派手に行きたいでは無いか。
「アレは燃費が悪いのだ!このぐらいの相手ならアレで事足りるのだ!」
う、うーん燃費とかそういう問題じゃ無いんだよなぁ。何ていうか、男のロマンというか.....。
「全く、仕方がないのだな.....、では見せてあげるのだよ!」
幼女はそういうと木を駆け上がり、勢いよく空へとジャンプしたーーーー
ズドドォォォォォオンン!!!
と、その瞬間真昼間の雲1つなかった晴天の空に突如稲妻が響き渡った。
極台の稲妻はおそらく大樹があるであろう方向へと落ち、あまりの威力に大地が悲鳴をあげる。
「な、なんだあれ.......」
まだ敵はいたのか?それもあんな魔法を放てる超強力な魔法使いが.....。
「グオォォォォォオ!!!!」
さらに後ろからの雄叫び。
紛れもない幼女だったものだ。
振り返ると、そこには美しい白毛をなびかせる大きな獣がいた。
そこらへんの木よりも随分大きく、また威圧感がある。ひょっとするとちょっとしたマンションぐらいはあるかもしれない。
ともかくヌッとした巨大な獣なのだ。
そして多分、理性が飛んでいる。
「グオォォォォォオ!!!」
獣は周りの木々を踏み倒し、唯一の生き物である俺を見つけると何も考えもせずに一瞬で踏みつぶしたーーーつもりだったのだろうが、俺は踏み潰されることなく外側に2歩ほど移動していた。
確かに獣は強いし速い。だが迷宮の魔物ほどでもないし、ましてやハクリには遠く及ばない。負ける要素がないのだ。
「よしよし、落ち着け」
俺は強引に獣の頭部分に飛び乗ると、魔力を放出して威圧しながら穴の少し上を撫でる。
こうすれば犬は大人しくなると聞いたことが.....あれ?あれって猫だったっけ?てか狐って何科だ?
・・・もういいや。
「おいポンコツぎつね、大樹の所まで連れてけ」
「グオォォォォォオ!!???」
獣は少々戸惑い、迷ってるみたいだったので、少し鼻を撫でると大人しく連れて行き始めた。
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