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6章 吸血鬼と魔法使い
66.従う者
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【従イ申ソウ......我ガ主人ヨ......】
「あ.........え?」
コイツは何を言っている?従い申そう?誰に?
あまりの可笑しな状況に脳が悲鳴をあげ、頭がクラクラする。
強すぎるハクリでも見えない強すぎる黄金の鳥が手も足も出ない最強の死神が跪いている?
なんなんだこれは。
「問おう!お前の主人とは誰だ!」
そんな中ハクリは堂々と声を張り上げだ。
先ほどまでの動揺した様子は無く、いつもの凜とした佇まいを見せている。
【従イ申ソウ、我ガ主人ヨ】
死神は先程の言葉を繰り返す。
それにハクリは舌打ちをかますと俺に向き直る。
「こいつはガラクタじゃ。放っておこう」
そしてハクリはいつの間にか開いていた次への扉へとスタスタ歩いていく。
「ちょっ、ガラクタ?こんな化け物がか?
取り敢えずコイツはなんなんだ?」
俺がそう聞くとハクリは歩みをピタリと止め、忌々しそうに呟いた。
「お主が妾達の争いに加わる気があるのなら話しても良いが?
中途半端な覚悟で聞くことはお勧めせんぞ。一つ間違えれば身を滅ぼしかねぬ」
ハクリ達の争い?
それっていつか話してた神話のことか?あの魔神がなんたらかんたら~って。
それがこれと何の関係が?
まず話が見えない。
なぜ跪いている?こいつは誰だ?そしてコイツの主人は誰だ?
ハクリは一言も喋らないし死神もまるで動かない。俺に一体何を求めているんだ。
思考が堂々巡りを繰り返し、場には静寂な時間だけが流れていく。
そんな時、ハクリが舌打ちをしたかと思うと魔力を全開にした。
凄まじい殺気に悪寒を覚え、俺の脳は考えることをピタリとやめる。
「妾は『吸血鬼族の王』!質問に答えよ!お主の主人は誰じゃ!」
すると死神が少し身じろぎし、口を開いた。
【王......。我ガ主人.......闇ト復讐ノ神ゲアボルグ.....ソシテ『救世主』】
「救世主じゃと.....?」
そこはハクリの問いかけには答えず死神は俺の方を向いた。
【契約ニ基ヅキ御身ノ槍トナラン。我、眷属タナトス御身ノモトニ】
その死神が一層頭を下げた瞬間、死神の黒い因子が俺の周りを漂う。
そして俺の胸のあたりに集まるとスーッと中へ入っていった。
「な、な、な、何だこれっ!!」
「なっ!やられた!」
なんだ!?何が起こってる?
救世主?眷属?闇の神?難易度イージーでお願いしたいんだけど。
「やられた......。レイよ、何か異常は?」
この展開がまさに異常です、とは言えない。
「い、いや何も.....」
そう答えるとハクリは思考の波に潜った。
しばらくしてハクリは俺をまっすぐに見、悔しそうに言った。
「すまない。妾のせいで巻き込んだ」
「巻き込む?なぜだ?」
「闇と復讐の神ゲアボルグ、そしてその五本指の1人、死神のタナトス。
どちらも神話の七人の王と神の争いに関係している者じゃ。そのタナトスをお主は配下に付けた」
「だから俺も巻き込まれると?」
ハクリは頷く。
「い、いや!だけどっ!そんな1人配下にしたぐらいで」
「ぐらい?
お主は事の重大さをわかっておらん。お主は今まで王の血を引いていながらもノーマークじゃった。不思議なぐらいにのぅ。
しかし今はタナトスを配下に、即ちゲアボルグと同盟関係にあるということじゃ。ならどうなる?」
「........狙われる。快く思わない奴から」
「そうじゃ。今までゲアボルグは中立を保っておった。闇の神と言いながら魔神に付かないのは疑問じゃがな。
そのゲアボルグが王と同盟関係を結ぶ、それはゲアボルグが王側で参戦することを意味する。
よって魔神側は都合が悪いわけじゃ。ならばそれを断ち切ろうとする。そしてーーー」
「俺を殺そうとする、か」
ハクリは無言で頷くと話を続けた。
「これからお主は常時狙われ続けることになるのじゃ。いつも、ずっとな。
安心して眠れる日は無くなり、穏やかに過ごすことも無くなる
というのは少しオーバーじゃが今よりはずっと過酷になるじゃろう」
・・・人生ゲームで一気に100億の借金背負った感じだこれ。
何?闇と復讐の神ゲアボルグ?ふざけやがって。
「じゃがそう悪いことばかりでもない。
そのタナトスはもうお主の配下、強力じゃぞ?
それに他の王もいる、他の神もいる、協力すればなんとかなるじゃろうて」
「いやだが」
【忠義ヲ尽クソウ、我ガ主人ヨ】
「・・・・」
いや待てよ?確かにこのタナトスは強い。それはもう気持ち悪すぎて引くぐらいに。
忠義ヲ尽クス!とか言ってくれてるんだから護衛にして争いから逃げれば良いじゃないか!
そんな俺の心中を悟ったのかハクリが自虐的に笑う。
「争いは世界規模。どこに逃げるというのじゃ.....」
「・・・・・え」
「あ.........え?」
コイツは何を言っている?従い申そう?誰に?
あまりの可笑しな状況に脳が悲鳴をあげ、頭がクラクラする。
強すぎるハクリでも見えない強すぎる黄金の鳥が手も足も出ない最強の死神が跪いている?
なんなんだこれは。
「問おう!お前の主人とは誰だ!」
そんな中ハクリは堂々と声を張り上げだ。
先ほどまでの動揺した様子は無く、いつもの凜とした佇まいを見せている。
【従イ申ソウ、我ガ主人ヨ】
死神は先程の言葉を繰り返す。
それにハクリは舌打ちをかますと俺に向き直る。
「こいつはガラクタじゃ。放っておこう」
そしてハクリはいつの間にか開いていた次への扉へとスタスタ歩いていく。
「ちょっ、ガラクタ?こんな化け物がか?
取り敢えずコイツはなんなんだ?」
俺がそう聞くとハクリは歩みをピタリと止め、忌々しそうに呟いた。
「お主が妾達の争いに加わる気があるのなら話しても良いが?
中途半端な覚悟で聞くことはお勧めせんぞ。一つ間違えれば身を滅ぼしかねぬ」
ハクリ達の争い?
それっていつか話してた神話のことか?あの魔神がなんたらかんたら~って。
それがこれと何の関係が?
まず話が見えない。
なぜ跪いている?こいつは誰だ?そしてコイツの主人は誰だ?
ハクリは一言も喋らないし死神もまるで動かない。俺に一体何を求めているんだ。
思考が堂々巡りを繰り返し、場には静寂な時間だけが流れていく。
そんな時、ハクリが舌打ちをしたかと思うと魔力を全開にした。
凄まじい殺気に悪寒を覚え、俺の脳は考えることをピタリとやめる。
「妾は『吸血鬼族の王』!質問に答えよ!お主の主人は誰じゃ!」
すると死神が少し身じろぎし、口を開いた。
【王......。我ガ主人.......闇ト復讐ノ神ゲアボルグ.....ソシテ『救世主』】
「救世主じゃと.....?」
そこはハクリの問いかけには答えず死神は俺の方を向いた。
【契約ニ基ヅキ御身ノ槍トナラン。我、眷属タナトス御身ノモトニ】
その死神が一層頭を下げた瞬間、死神の黒い因子が俺の周りを漂う。
そして俺の胸のあたりに集まるとスーッと中へ入っていった。
「な、な、な、何だこれっ!!」
「なっ!やられた!」
なんだ!?何が起こってる?
救世主?眷属?闇の神?難易度イージーでお願いしたいんだけど。
「やられた......。レイよ、何か異常は?」
この展開がまさに異常です、とは言えない。
「い、いや何も.....」
そう答えるとハクリは思考の波に潜った。
しばらくしてハクリは俺をまっすぐに見、悔しそうに言った。
「すまない。妾のせいで巻き込んだ」
「巻き込む?なぜだ?」
「闇と復讐の神ゲアボルグ、そしてその五本指の1人、死神のタナトス。
どちらも神話の七人の王と神の争いに関係している者じゃ。そのタナトスをお主は配下に付けた」
「だから俺も巻き込まれると?」
ハクリは頷く。
「い、いや!だけどっ!そんな1人配下にしたぐらいで」
「ぐらい?
お主は事の重大さをわかっておらん。お主は今まで王の血を引いていながらもノーマークじゃった。不思議なぐらいにのぅ。
しかし今はタナトスを配下に、即ちゲアボルグと同盟関係にあるということじゃ。ならどうなる?」
「........狙われる。快く思わない奴から」
「そうじゃ。今までゲアボルグは中立を保っておった。闇の神と言いながら魔神に付かないのは疑問じゃがな。
そのゲアボルグが王と同盟関係を結ぶ、それはゲアボルグが王側で参戦することを意味する。
よって魔神側は都合が悪いわけじゃ。ならばそれを断ち切ろうとする。そしてーーー」
「俺を殺そうとする、か」
ハクリは無言で頷くと話を続けた。
「これからお主は常時狙われ続けることになるのじゃ。いつも、ずっとな。
安心して眠れる日は無くなり、穏やかに過ごすことも無くなる
というのは少しオーバーじゃが今よりはずっと過酷になるじゃろう」
・・・人生ゲームで一気に100億の借金背負った感じだこれ。
何?闇と復讐の神ゲアボルグ?ふざけやがって。
「じゃがそう悪いことばかりでもない。
そのタナトスはもうお主の配下、強力じゃぞ?
それに他の王もいる、他の神もいる、協力すればなんとかなるじゃろうて」
「いやだが」
【忠義ヲ尽クソウ、我ガ主人ヨ】
「・・・・」
いや待てよ?確かにこのタナトスは強い。それはもう気持ち悪すぎて引くぐらいに。
忠義ヲ尽クス!とか言ってくれてるんだから護衛にして争いから逃げれば良いじゃないか!
そんな俺の心中を悟ったのかハクリが自虐的に笑う。
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