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3.5章 攻略前夜

39ー1.厄介なアリバイ

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コンコン
渋い茶色のドアに付属しているドアノブを鳴らす。
「入れ」
前に聞いた声とは随分小さく、弱々しい声だった。
毒を盛られたのは本当らしい。

「失礼します」
初めて入る王の部屋だ。
いったいどんな部屋なんだろう。
俺はドアをガチャリと開けた。

王の部屋はーーー質素だった、というわけでもなく普通に金持ち全開の黄金と芸術のコラボレーションが繰り広げられていた。
あの人派手好きそうだもんな。

そしてそのど真ん中にドンと構える男が1人。
「待っていたぞ」
フンッと偉そうにしているが声はガラッガラだ。顔も青い。
大丈夫だろうか?体も頭も。

「まあ、座れ」
そう言って指し示されたのはのは黄金の縁にふわふわのクッションのソファーだ。
これ高いだろうなあ。
おそるおそる座ると低反発枕のようにズブリと沈みーーというかはまった。
立ち上がれないんですが.....。

「ゴホンッ。話というのはお前も聞いているであろう、俺の毒殺の件だ」
やっぱりか。まあそうだろうな。
だが俺と話すようなことあるっけ?

「そしてお前に頼みたいのは、その毒殺を仕掛けた犯人を探して欲しい、ということだ」
「犯人....?もうご存知ではないんですか?」
「知ってるわけないだろう。知ってたらとっくに死刑だよ.....」
呆れながらため息をつく王。
ということでシルクさん残念でした。深読みのし過ぎだな。
まあ俺は推理すらしてないが。

「まあわかりました。ですがなぜ僕に?」
「それはーーお前が一番信用できるからだ。身元の信用性にアリバイの有効さ、ましてや子供だからなあ」
その子供に犯人探しを命じる王って....。

「まあ本題に入ろうか。お前に任せた理由、それはもう一つある」
ニヤリと不敵に笑う王。
顔は真っ青だが元はハリウッドスターなので映画のワンシーンみたいだ。
ここは俺もなりきっていこうか。

「もう....一つ.....とは?」
やけに重苦しく答えたら王はちょっとびっくりし、そしてまた不敵に笑う。
あ、まだこれ続けるんですか?

「.....お前の攻略チームに犯人がいる」
「な!なんですって!!!???」
勢いよく立ち上がろうとしてーーーソファのハマりから脱出できず再びはまるという珍行動を起こす。
王は訝しげな表情で俺を見ていた。
こ、このソファーのせいです!断じて俺のせいでは!

「ふざけとる?」
「い、いえー?ナンノコトダカ?」
「そうか。話を続けるぞ。お前のチーム、Bチームに犯人がいるというのはある理由がある」
と言って王は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。

「これは?」
「毒殺当時に居た部屋の周りの間取りじゃ。あの時、俺がいたのはここ」
羊皮紙の真ん中に書かれている部屋を指でさす。
「そして紅茶を入れたキッチンはここだ」
再び指で指した部屋は、先ほどの部屋とは隣り合わせの部屋だ。
.....別にキッチン紹介されなくてもいいんですが。
「紅茶がどうかしたんですか?」
「ふむ。まだ未発表だった。毒は紅茶に入っていたのだ」
紅茶に毒....か。
本格的にコ○ンくん連れてきた方がいいなこりゃ。

「そして面白いのはここからだ」
再びニヤリと笑うと一息おいてまた喋りだした。

「なんとBチームのメンバー五人がこの部屋の周りにいたんだよ。王部屋の向かい合わせの部屋にはフレッドとルカク。少し離れた小部屋にエーミール。なぜかこの階の階段付近にガーリス。そして俺と会っていたミルフィーユを合わせ5人。それが事件の容疑者だ」
うーん見事にBチーム超怪しいな。
もうチームがかりの犯行とか言われても良いレベルだぞこれ。

「だが問題はここからだ。困ったことにな、全員にアリバイがあるんだよ」
出ましたっーーー!推理系のもので一番面倒なやつっー!
もう土曜ワイドショーとかでやってくれ。

「紅茶に毒を入れられたのはメイドが目を離した14時から14時5分の間。その時、ルカクとフレッドはお互いに会話していたし、入り口には騎士がいたため不可能。エーミールは荷物の運搬作業で騎士数名が近くにいたため不可能。ミルフィーユは俺と話していたので不可能。ガーリスは階段付近でモジモジしているのを騎士が見ていたため不可能。全員無理なのだ」

「ではなぜ5人の中に犯人がいると?」

「犯行に及べるのはそいつらしかいないのだ。全員騎士の目をくぐり抜けて5分以内に行動できるものばかりだしな。ともかく、お前で何が手がかりを探してくれないか?」

「.....まあ、できるだけ頑張りますが」

「できれば攻略に行く前、つまり3日以内に犯人を見つけて欲しーー」
「無理です」
「即答!?....まあ別に迷宮内で仕留めても構わん。お前たちが困るだけだがなあ」
なんてやつだ....。どっちにしろやるしかねえな。

「捜査は遠慮なく城を動き回っても構わん。よろしく頼むぞ」




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39話は複数話に分かれます。
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