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5章 奈落の底の魔法使い
60.新たなスタート
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ズルズルズル......。
地面に何かが引きずられる音が洞窟内に響き、その流れ落ちる血に反応したネズミがカサカサ音を立て忍び寄ってくる。
しかし一定距離まで近づくとピタリと止まり、猛獣にでも会ったかのように体を震わせた。
ネズミも身の丈をわかっているのだろう。
やがて洞窟の行き止まっているところに突き当たる。
パッと見ただの岩壁に見えるがそれはカモフラージュ、実は入り口になっているのだ。
岩壁に手をつくと自動で壁が開くーーわけでも無く手動で岩壁を押す仕組みになっている。ただの力技とも言うが。
そんな岩壁をどかすと綺麗に整えられた空間が広がっている。洞窟とは思えないほど煌びやかな照明、さらには生活を快適にする家具まである。
魔物の皮と骨で作られたものだ。
そんな洞窟内に1人の美女が座っていた。彼女は目を瞑り、眠っているように見える。
そんな彼女をスルーするとポッカリと空いた穴に引きずっていたものを放り込んだ。
その音で美女が目を開け、大きく息をついた。深く、決心したように一点を見据える彼女の視線の先には開いたままの入り口が映っており、その時間がもう直ぐに迫っていることを伝えていた。
「準備は出来た」
その彼女に語りかけると無言で彼女は頷く。そして音も無く立ち上がった。
「それじゃーーーー」
そう切ると、彼女はニヤリと笑う。
「迷宮攻略と行くかのぅ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ここに来てからどれぐらい時間が経っただろうか。
多分、半年ぐらいは経った。その間、俺は気絶しまくったのだ。
そしてそのおかげで俺は強くなった。まだハクリの全力パンチにはお陀仏する俺だがこの辺の魔物など目では無くなった。
そう、俺は強くなったのだ。
「・・・何を気持ち悪い顔をしておる。毒でも飲んだか?」
「飲んでねぇよ!てか気持ち悪いの!?」
考え事をしているといつの間にかムフフフフしていたらしい。
だがな....半ば諦めかけてきた俺TUEEE!!が出来るかもしれないのだ。そりゃあ、ニヤけてても仕方ないだろ?
と、思っていたのもつかの間ハクリが爆弾発言をする。
「・・・言うておくがお主ではまだこの迷宮に通用せんぞ?」
「・・・・ん?」
「妾が何で今まで脱出しなかったか。その理由は簡単じゃ。単純に妾では勝てなかった。それだけじゃ」
「んええええぇぇぇえ!!??」
俺が手も足もでないハクリが手も足も出ない魔物がいるってことか!?
詰みゲーじゃんそれ。
「じゃ、じゃあどうやって倒すんだ?」
「安心せい。妾では20%の確率でしか勝てなくてもお主がいれば22%に上がる」
「2%だけかよっ!!??」
なんて嬉しい真実でしょう。嬉しすぎてぶっ倒れそうだ。
ほんとに....勘弁してください。
「え、じゃあ」
「博打じゃな」
やめてぇぇぇええ!!
何その人生がかかる博打!?カ○ジか!
うん?ちょっと待てよ....?確かコイツは七大列強だったよな?そんな奴でも勝てない迷宮だ?よくそんな化けもんにあの戦力で俺ら挑んでたなあ....。
「ともかくやるしかないのじゃ。お主は強くなった。それだけは妾が保証する。
よいか?妾が勝てなかったとは言え最後に戦ったのは200年前程じゃ。それ以降確実に妾は強くなっとる。お主もいるしな。
だから勝てる勝てないは五分五分。最後は気持ちの問題じゃて」
「あ、あぁ。そう思うことにするよ」
気休め程度にしかならないがな。
ドドドドドドドドドド......
そんな会話をしていると魔物の足音がした。足音的には象....だ。この階層で一番弱い魔物らしいが間違いなくいつかのガーゲイルより強い。
「氷槍」
俺は周りに10本程度の槍を生成する。
修行で一番重要視したのは「いかに効果的な魔法でいかに致命傷を与えるか」だった。無闇に魔法を放ったところでこの迷宮の魔物には敵わない。ハクリに教えられたことだ。
なるべく一撃でしとめる。そのために一番使うべき魔法を判断する。それが一番魔力消費が少なく、死ににくい戦闘なのだ。
そしてやはり俺が進化したのは『魔導』だろう。ハクリ曰く「お主はまだまだ魔装の無駄遣いが多すぎる。もっと効果的に纏うのじゃ」らしく、俺の魔装は分散していたらしい。
そこで思い出すのは地獄の日々....うん、それは思い出さないでおこう。
そんな日々を経験し、俺はある日気づいた。『魔装』は物にも纏えるのでは?と。
ハクリに相談すると「それが本当の使い方じゃ」と言われた。元々は『魔装』は武器を強くするために開発されたらしい。だから物に纏う方が使い勝手が良いのだと。
まあそんなわけで俺の魔導技術は飛躍的に進歩したわけだ。
だからーーーー
「おー。お主はこの階層では苦労しないようじゃな。良かった良かった」
「当たり前だろ?」
ドヤ顔出来るわけだフフフ。
俺は氷槍で無残に打ち果てた象をスルーすると新たな魔物の足音にニヤリと笑う。
ようやくだ。いくらかの地獄の月日でようやくここまで来た。『王』の血だか何だか知らんが俺は関わらず好き勝手生きていくつもりだ。そのための新たなスタートを、俺は歩む。
「覚悟は出来たようじゃな」
「・・・・・・あぁ」
「・・お主の今の顔気持ち悪いぞ?」
「台無しだよ!!」
地面に何かが引きずられる音が洞窟内に響き、その流れ落ちる血に反応したネズミがカサカサ音を立て忍び寄ってくる。
しかし一定距離まで近づくとピタリと止まり、猛獣にでも会ったかのように体を震わせた。
ネズミも身の丈をわかっているのだろう。
やがて洞窟の行き止まっているところに突き当たる。
パッと見ただの岩壁に見えるがそれはカモフラージュ、実は入り口になっているのだ。
岩壁に手をつくと自動で壁が開くーーわけでも無く手動で岩壁を押す仕組みになっている。ただの力技とも言うが。
そんな岩壁をどかすと綺麗に整えられた空間が広がっている。洞窟とは思えないほど煌びやかな照明、さらには生活を快適にする家具まである。
魔物の皮と骨で作られたものだ。
そんな洞窟内に1人の美女が座っていた。彼女は目を瞑り、眠っているように見える。
そんな彼女をスルーするとポッカリと空いた穴に引きずっていたものを放り込んだ。
その音で美女が目を開け、大きく息をついた。深く、決心したように一点を見据える彼女の視線の先には開いたままの入り口が映っており、その時間がもう直ぐに迫っていることを伝えていた。
「準備は出来た」
その彼女に語りかけると無言で彼女は頷く。そして音も無く立ち上がった。
「それじゃーーーー」
そう切ると、彼女はニヤリと笑う。
「迷宮攻略と行くかのぅ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ここに来てからどれぐらい時間が経っただろうか。
多分、半年ぐらいは経った。その間、俺は気絶しまくったのだ。
そしてそのおかげで俺は強くなった。まだハクリの全力パンチにはお陀仏する俺だがこの辺の魔物など目では無くなった。
そう、俺は強くなったのだ。
「・・・何を気持ち悪い顔をしておる。毒でも飲んだか?」
「飲んでねぇよ!てか気持ち悪いの!?」
考え事をしているといつの間にかムフフフフしていたらしい。
だがな....半ば諦めかけてきた俺TUEEE!!が出来るかもしれないのだ。そりゃあ、ニヤけてても仕方ないだろ?
と、思っていたのもつかの間ハクリが爆弾発言をする。
「・・・言うておくがお主ではまだこの迷宮に通用せんぞ?」
「・・・・ん?」
「妾が何で今まで脱出しなかったか。その理由は簡単じゃ。単純に妾では勝てなかった。それだけじゃ」
「んええええぇぇぇえ!!??」
俺が手も足もでないハクリが手も足も出ない魔物がいるってことか!?
詰みゲーじゃんそれ。
「じゃ、じゃあどうやって倒すんだ?」
「安心せい。妾では20%の確率でしか勝てなくてもお主がいれば22%に上がる」
「2%だけかよっ!!??」
なんて嬉しい真実でしょう。嬉しすぎてぶっ倒れそうだ。
ほんとに....勘弁してください。
「え、じゃあ」
「博打じゃな」
やめてぇぇぇええ!!
何その人生がかかる博打!?カ○ジか!
うん?ちょっと待てよ....?確かコイツは七大列強だったよな?そんな奴でも勝てない迷宮だ?よくそんな化けもんにあの戦力で俺ら挑んでたなあ....。
「ともかくやるしかないのじゃ。お主は強くなった。それだけは妾が保証する。
よいか?妾が勝てなかったとは言え最後に戦ったのは200年前程じゃ。それ以降確実に妾は強くなっとる。お主もいるしな。
だから勝てる勝てないは五分五分。最後は気持ちの問題じゃて」
「あ、あぁ。そう思うことにするよ」
気休め程度にしかならないがな。
ドドドドドドドドドド......
そんな会話をしていると魔物の足音がした。足音的には象....だ。この階層で一番弱い魔物らしいが間違いなくいつかのガーゲイルより強い。
「氷槍」
俺は周りに10本程度の槍を生成する。
修行で一番重要視したのは「いかに効果的な魔法でいかに致命傷を与えるか」だった。無闇に魔法を放ったところでこの迷宮の魔物には敵わない。ハクリに教えられたことだ。
なるべく一撃でしとめる。そのために一番使うべき魔法を判断する。それが一番魔力消費が少なく、死ににくい戦闘なのだ。
そしてやはり俺が進化したのは『魔導』だろう。ハクリ曰く「お主はまだまだ魔装の無駄遣いが多すぎる。もっと効果的に纏うのじゃ」らしく、俺の魔装は分散していたらしい。
そこで思い出すのは地獄の日々....うん、それは思い出さないでおこう。
そんな日々を経験し、俺はある日気づいた。『魔装』は物にも纏えるのでは?と。
ハクリに相談すると「それが本当の使い方じゃ」と言われた。元々は『魔装』は武器を強くするために開発されたらしい。だから物に纏う方が使い勝手が良いのだと。
まあそんなわけで俺の魔導技術は飛躍的に進歩したわけだ。
だからーーーー
「おー。お主はこの階層では苦労しないようじゃな。良かった良かった」
「当たり前だろ?」
ドヤ顔出来るわけだフフフ。
俺は氷槍で無残に打ち果てた象をスルーすると新たな魔物の足音にニヤリと笑う。
ようやくだ。いくらかの地獄の月日でようやくここまで来た。『王』の血だか何だか知らんが俺は関わらず好き勝手生きていくつもりだ。そのための新たなスタートを、俺は歩む。
「覚悟は出来たようじゃな」
「・・・・・・あぁ」
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