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番外編 ~攻略者達の記憶~
記憶の片鱗ー1
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「おい!何か喋れよぉ!」
赤髪の、頬に擦り傷を負った少年がやんややんや言ってきた。
更にその周囲の少年たちが同調するように騒ぐ。
私はまたかとため息を吐きつつその場を立ち去る。この年頃の少年たちほど面倒な人はいない。
「おい、何か言えよぉ!」
その言葉とともに私は後ろへ引っ張られる。
見ると私の大事な大事な髪を、蒼髪を引っ張っていた。信じられない。
「・・・・・離して?」
私がどういう顔をしていたがわからないが少年は不味いものでも見たように気まずそうな顔をして「ご、ごめん」と小さく呟いた。
謝るくらいなら最初からやらなければいいのに。
私がくるりと回って歩き出すと少年は無言で立ち去っていった。
少年は隣の家の同世代。言わば幼馴染というものだ。
私としてはもっと物静かで語り合える幼馴染が良かったな。
そう思い家への道をトボトボ歩いていると後ろから誰かが抱きついてきた。
こんな事をするのは1人しかいない。
「またアンタちょっかいかけられてたの?」
少年と同じ赤い髪の毛が私の頬をくすぐる。ただ、今度は長い髪の毛だった。
「・・・嫌われているもの」
そう返すと赤い髪の少女は呆れた顔をして私を見つめる。
「アンタ鈍ちんだね。こりゃアイツも浮かばれないよ」
私は彼女の言っていることがさっぱりわからなかった。
彼女の言うことは毎度毎度難しい。見た目の軽さとは大違いに。ただ、その言葉が核心を突いてるのは間違いなかった。
だから無口な私を指摘できるただ1人の友人なのかもしれない。
「まあ、いいや。明日って予定ある?」
そして急に話を転換するのが彼女の得意技だった。
「・・・ない」
「よしゃ!じゃあ町行こう町!」
彼女は興奮したように私の手を掴んだ。
彼女は興奮すると手を握る癖がある。
彼女は私の力のない手を散々ぶんぶんすると私の肩に手を置き「絶対な!」と言って自身の家へと帰って行った。
あんなに彼女が喜ぶのは久しぶりに見た。
丁度1ヶ月と1日前に彼女の母親が亡くなってしばらく元気が無かったから心配してたのだ。
死因は確か.......思い出せないけど確か事故だったはず。
明日は丁度1ヶ月だし励ましてあげないとな。
そう思い、私も帰路に着いた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、お母さんに町へ行くなら、といつもは着ないようなワンピースを着て約束の場所へ向かった。
蒼が基調のワンピースで、私はこれをいたく気に入っていたものだ。
そのために朝からご機嫌で鼻歌を交えながら村の噴水へ向かう。
約束の彼女は見た目に反してきっちりした性格なので約束の10分前には来ているはず。だから私もいつも10分前に行ってお互い笑い合うのがいつもの習慣だった。
ただ、何かが違うと噴水がある広場に着いてから気付いた。
ーーー約束の彼女がいない。
まあこんな事もあるだろうと私は噴水に座って待つことにした。
しかしとてもとても気になることがある。
「な、なあ?聞いてる?」
ーーー隣に何故か幼馴染くんがいた。
それも何故かオシャレな格好をして。
それにさっきからずっと私に話しかけてきている。これはもう気のせいじゃないはず。
「・・・・なに」
やっと私が口を聞いたからか、少年はあからさまにホッとしたように胸を下した。
「だ、だからさ!アイツ急に来れなくなったらしいんだ。だ、だから俺たち2人で行けって」
少年は何が恥ずかしいのかわからないけど、頬を少し染めて顔を背ける。
それにしてもアイツーーと言うのは彼女のことだろうか。
だけれども別に彼も一緒に行く予定は無かったはず。
「っ?どこ行くんだ?」
急に立った私に焦ったように尋ねる彼。
「・・・・帰る」
「えっ?いやちょっ」
私が無表情で家に帰ろうとすると、昨日と同じく後ろに引っ張られた。
ただ、今度は髪の毛ではなく手を握られたけど。
「い、いいじゃん!俺と行こうぜ町!たまにしか行けないんだしさ!」
「・・・・」
「何か買ってあげるからさ!そ、そうだ!町に新しく焼き菓子の店が出来ーー」
「行く」
「・・・・・」
少し食い気味に答えたのが間違えたらしくシーンと静まってしまった。
「あ、ありがとう?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ちょ、ちょっと食べすぎじゃ?」
財布がすっからかんになった彼が目の前にお菓子を山盛り積んでいる私に尋ねる。
「・・・・成長期」
実際私は10歳にしても身長も低く、成長が来ていなかった。
だからいっぱい食べる必要があるのだ。
それにしてもこのお菓子はおいしい。
「じゃ、じゃあさ!次寄りたいとこあるんだけどいい?」
「・・・・いい」
なんだかお菓子を奢らせてしまって悪い気がしてきたので付き合うことにした。
これで男の趣味丸出しな武具店とか行ったら即帰ることにするけど。
赤髪の、頬に擦り傷を負った少年がやんややんや言ってきた。
更にその周囲の少年たちが同調するように騒ぐ。
私はまたかとため息を吐きつつその場を立ち去る。この年頃の少年たちほど面倒な人はいない。
「おい、何か言えよぉ!」
その言葉とともに私は後ろへ引っ張られる。
見ると私の大事な大事な髪を、蒼髪を引っ張っていた。信じられない。
「・・・・・離して?」
私がどういう顔をしていたがわからないが少年は不味いものでも見たように気まずそうな顔をして「ご、ごめん」と小さく呟いた。
謝るくらいなら最初からやらなければいいのに。
私がくるりと回って歩き出すと少年は無言で立ち去っていった。
少年は隣の家の同世代。言わば幼馴染というものだ。
私としてはもっと物静かで語り合える幼馴染が良かったな。
そう思い家への道をトボトボ歩いていると後ろから誰かが抱きついてきた。
こんな事をするのは1人しかいない。
「またアンタちょっかいかけられてたの?」
少年と同じ赤い髪の毛が私の頬をくすぐる。ただ、今度は長い髪の毛だった。
「・・・嫌われているもの」
そう返すと赤い髪の少女は呆れた顔をして私を見つめる。
「アンタ鈍ちんだね。こりゃアイツも浮かばれないよ」
私は彼女の言っていることがさっぱりわからなかった。
彼女の言うことは毎度毎度難しい。見た目の軽さとは大違いに。ただ、その言葉が核心を突いてるのは間違いなかった。
だから無口な私を指摘できるただ1人の友人なのかもしれない。
「まあ、いいや。明日って予定ある?」
そして急に話を転換するのが彼女の得意技だった。
「・・・ない」
「よしゃ!じゃあ町行こう町!」
彼女は興奮したように私の手を掴んだ。
彼女は興奮すると手を握る癖がある。
彼女は私の力のない手を散々ぶんぶんすると私の肩に手を置き「絶対な!」と言って自身の家へと帰って行った。
あんなに彼女が喜ぶのは久しぶりに見た。
丁度1ヶ月と1日前に彼女の母親が亡くなってしばらく元気が無かったから心配してたのだ。
死因は確か.......思い出せないけど確か事故だったはず。
明日は丁度1ヶ月だし励ましてあげないとな。
そう思い、私も帰路に着いた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、お母さんに町へ行くなら、といつもは着ないようなワンピースを着て約束の場所へ向かった。
蒼が基調のワンピースで、私はこれをいたく気に入っていたものだ。
そのために朝からご機嫌で鼻歌を交えながら村の噴水へ向かう。
約束の彼女は見た目に反してきっちりした性格なので約束の10分前には来ているはず。だから私もいつも10分前に行ってお互い笑い合うのがいつもの習慣だった。
ただ、何かが違うと噴水がある広場に着いてから気付いた。
ーーー約束の彼女がいない。
まあこんな事もあるだろうと私は噴水に座って待つことにした。
しかしとてもとても気になることがある。
「な、なあ?聞いてる?」
ーーー隣に何故か幼馴染くんがいた。
それも何故かオシャレな格好をして。
それにさっきからずっと私に話しかけてきている。これはもう気のせいじゃないはず。
「・・・・なに」
やっと私が口を聞いたからか、少年はあからさまにホッとしたように胸を下した。
「だ、だからさ!アイツ急に来れなくなったらしいんだ。だ、だから俺たち2人で行けって」
少年は何が恥ずかしいのかわからないけど、頬を少し染めて顔を背ける。
それにしてもアイツーーと言うのは彼女のことだろうか。
だけれども別に彼も一緒に行く予定は無かったはず。
「っ?どこ行くんだ?」
急に立った私に焦ったように尋ねる彼。
「・・・・帰る」
「えっ?いやちょっ」
私が無表情で家に帰ろうとすると、昨日と同じく後ろに引っ張られた。
ただ、今度は髪の毛ではなく手を握られたけど。
「い、いいじゃん!俺と行こうぜ町!たまにしか行けないんだしさ!」
「・・・・」
「何か買ってあげるからさ!そ、そうだ!町に新しく焼き菓子の店が出来ーー」
「行く」
「・・・・・」
少し食い気味に答えたのが間違えたらしくシーンと静まってしまった。
「あ、ありがとう?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ちょ、ちょっと食べすぎじゃ?」
財布がすっからかんになった彼が目の前にお菓子を山盛り積んでいる私に尋ねる。
「・・・・成長期」
実際私は10歳にしても身長も低く、成長が来ていなかった。
だからいっぱい食べる必要があるのだ。
それにしてもこのお菓子はおいしい。
「じゃ、じゃあさ!次寄りたいとこあるんだけどいい?」
「・・・・いい」
なんだかお菓子を奢らせてしまって悪い気がしてきたので付き合うことにした。
これで男の趣味丸出しな武具店とか行ったら即帰ることにするけど。
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