異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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4章 ラグナロクの大迷宮

44.暴かれる正体

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「ーーーーーーそういえばルカクとフレッドはね、同郷出身なんだ」
長い緑の髪の毛をいじりながらマーリンは言った。

「.......だからどうしたんです?」
「同郷、すなわち北の一族、ファドルド族ってことなんだけど、ファドルド族には面白い能力があるんだ」
マーリンは俺の顔を見てニヤリと笑う。
そんなのいいからはよ言えよ。

「どんな能力だと思う?」
「世界一の魔法使いをボコれる能力だったらいいですね」
「.......もうちょっとゆとり持とうよ」
呆れた顔をしてお手上げだともいう様に手をヒラヒラさせるマーリン。何故サービスポイントの幼女がこんな腹立つやつなんだ。

「ファドルド族の能力、それは"物体移動"の能力だよ」
「物体移動?転移とは違うんですか?」
「転移は自身が移動するけど、物体移動は"物体"しか移動できない。そんなに精度も良くないしねー。使いにくいよ」
「使えるんですか?」
「まあ、この世の魔法なんでも使えるし?ドヤッ」
.....ほんとコイツ腹立つ奴だな。実際チートだから口だけじゃねえし。

「それにしても物体移動か......」
なんか厄介な能力が出てきたな。魔法使われた犯行とかお手上げなんだけど.....。

「あ、そういえばフレッドは物体移動使えないや。あいつクオーターだった」
フレッドは使えない.....物体移動......。
うん。さっぱりだ。

「まあ」
まあ、だけいうとマーリンは一息つき、真剣な顔になった。
「犯人は迷宮内で確実に仕掛けてくる。チームが劣勢であるときがあれば、確実にそこで」




ふとフラッシュバックしたマーリンの言葉。それは俺の確信をより確かにさせた。

「フレッドさん!!その薬を飲ますな!」
「「なっ.....!?」」
ルカクさんとフレッドの声がかぶる。

「な、何を言っているんだいレイ君?こんなにエーミールさん達が傷ついているんだよ?薬を使わないといけないじゃないか」
「ああ。レイ、お前まだルカクを疑ってるんじゃ.....」
ああもう!そういえば2人は同郷だから仲いいのか。他にはーーーー

「.......えっ?」
そこで俺は気付いてしまった。メンバーの俺を見る疑心暗鬼の目線に。
ーーーダメだ。みんなルカクを信用しきってる。
そのルカクを見ると今にでもエーミールに薬を入れようとしていた。
ダメだ。あれは毒なのに.......!

火球ファイアボール
ルカクが薬の袋を千切ってそれをエーミールの口に入れようとした時、それは燃えた・・・・・・

「.......何するんだい?シルク。君もレイと同じ意見か?」
今までのルカクからは考えられない冷徹な声がシルクに問いかけられる。
「.......ええ。だってそれは薬ではないもの」
それに対してシルクはルカクの声にも動じず堂々と言い放った。

「シルク.....!」
「.......べ、別に私がそう思っただけだからやっただけよ!」
ナイスツンデレですシルクさんっ!

「チッ。せっかくのチャンスを.....」
ルカクは恨めしそうにフラフラ立ち上がった。
「!?ル、ルカク?」
「フンッ。まあいい。君たちはどうせここで全滅する。僕が手を下すまでもないさ」
憎々しげに言い放ち、ルカクは颯爽と踵を返し歩き出した。
俺たちは唖然として止めることも出来なかった。
ただ1人を除いて。


「ーーールカクよ。リーダーの指示なしで勝手に動いてはならんぞ」
その一声に歩き出していたルカクの足がピタリと止まる。
「.......何故お前が.....!?」
「何故?いつワシがやられたと言ったかのう?」
今まで虫の息だったのが嘘の様に簡単に立つエーミール。
ここまでは予想通り・・・・だ。

「.......フェイク!くそっ!生意気な真似しやがって!」
剣を抜きながら吐きすてるルカク。その姿には今までの面影は一つも残っていない。人はここまで変わるもんなのか。

「ここまではレイの予想通りじゃが.....。わからんのう。何故お前はこんなことをした?」
その言葉に驚いた様に俺を見るルカク。
ふふふ。エーミールには事前にやられたフリをしておく様に言ってあったのさ。まあそのせいでみんなボロボロだが。

「何故?お前には決してわからねえよ。全ては彼の方のため。そうさ!彼の方のためさ!」
ハッハッハッハーと高らかに笑うルカク。
出たよー"彼の方"。こういうのって絶対黒幕いるんだよなーやっぱり。
最後には王様とかに辿り着くのかね。まああの王が黒幕だったら自分に毒盛らせたりはしないか。

「ふむ。やっぱりそんなことはどうでもいい。取り敢えず、死ね!」
一瞬でエーミールは姿を消した。
それに合わせてすでに高笑いを止めていたルカクは剣を構えると一太刀振る。
相変わらず見えない。だがあのエーミールが負けはせんだろう。

ブゥゥゥン
という豪快な風切り音のあと、誰かの手・・・・が飛び散った。

「チッ!さすがに俺じゃあ、勝てねえか」
ルカクは恨めしそうに今はない剣を持っていた右手を眺める。
一方エーミールは余裕そうな表情で空中のドラゴンを睨みつけていた。
.......そういえばドラゴンいたな。空気すぎて忘れてたわ。

「グルォォォォォォォオ!!!!」

忘れ去られていたことと、二度も炎を防がれた怒りで赤竜は暴れ狂っていた。
その衝撃で岩がずっと落ちてきていたのをフウが全て破壊していたらしく、フウはいかにも限界そうに肩で息をしていた。

「やれやれ、うるさいのう.....」

鬱陶しそうにエーミールは空中に向かって剣を振る。

グゥオオオンン

と風切り音とともに斬撃が飛んだ。いつかの帝級剣士の二倍は強いし早い。
そのまま斬撃は赤竜の首元に到達し、なんの抵抗もなくすり抜けた。

「.......ん?」

ほんとになんの抵抗もなくすり抜けた。
あれだけ猛威を振るっていた赤竜の頭が落ちてくる。
まじで強すぎだろあの爺さん。

「なっ!赤竜を!!?」
頼りにしていたらしい赤竜を倒されたルカクはあんぐりしていた。
まああんだけ苦戦した赤竜を一撃でいとも容易く殺されたら誰だって驚くわな。

「さあ、邪魔がいなくなったところで再戦と行こうかのう?」

悪魔の笑みを顔に貼りつかせながらエーミールは再び姿を消した。
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