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3章 王宮魔法使い

33.魔導

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「いっくよ!」
マーリンが手を掲げる。俺も魔法使いなのでわかることだが、手を掲げる行為というのは大して意味がない。何もしなくてもイメージさえ出来れば魔法は発動する。なのでただのかっこつけだ。

「"魔装"!!」
ーーー魔装?魔導じゃなくて?
と思ったところで俺はあることに気付いた。

ーーーー魔力が尋常ではないほどでている。
普通魔力は目に見えないが、それ・・は見えるのだ。黒いもやとして体に纏われている。
一目で見ても神級レベルの魔力があるとわかった。

これが魔装・・・・・!体の耐久力と基本能力が底上げされるんだ。ちょっと魔法撃ってみて!」
とお許しを頂いたので早速魔力を込める。そりゃもう膨大に。
衝撃で部屋とかぶっ壊れるかもしれんが、まあいいだろう。
「刃閃!」
光属性の上級魔法を無詠唱でできるだけ魔力をつぎ込む。
光の刃は眩く輝くとその純度をどんどん増し、鋭くなっていく。
「いや!どんだけ魔力込めてんのさ!」
焦った声を出すマーリンを尻目に、魔力をつぎ込め終えた刃閃を発射した。

キイイィィィィン!!

金切音のような音が響き、まるでレーザービームのように一瞬でマーリンにぶつかる。あれを避けるのは例え帝級のものでも難しいはずだ。

ドオォォオオォォン!!

目の前が盛大に爆発した。さながら花火のように。
「ちょっとやりすぎたかも....」
マーリン死んだら俺どうしよう。幼女に手をあげてなおかつ殺したとなれば、不名誉な宣伝文句とともに指名手配される。少なくとも地球ではそうだった。
冷や汗がタラーっと額を流れる。
相変わらず目の前は煙ったままだ。

「ーーーーちょっと!殺す気か!?」
ブワァァン、と煙を払ってでてきたのは無傷のマーリンだった。
どんだけ頑丈なんだよ、と思いつつも煙が晴れた景色に驚愕する。
「なんで.....部屋も無傷なんだ?」
魔力を込めまくったはずなのに、さすがに無傷はありえん。

「ふっふっふー!驚いたか!驚いたよね?これが二つ目の"魔導"、魔惑まわくだぁー!」
イラッッッとしたがなんとか抑え込む。
「これはねっ!相手の魔法を消し去るんだよ。相手の魔力の波長を崩すといったほうがいいかな。さっきの魔法も相殺したから、ダメージゼロ!だからねっ」
やけにダメージゼロを強調する幼女。
そろそろ腹パンしていいだろうか。

「というか魔導って何個あるんです?」
さっきからどんどん増えているが。
「うーんっと沢山!」
大雑把!
「まだ説明してなかったけど、魔導は名前の通り"魔力"を"導く"ものだから、導き方によっては魔導はどんな可能性もある。例えばーーー」
マーリンはそこで言葉を切ると、魔力を地面に集める。
そして出来たのは、「魔力の壁」だった。
「これは"魔壁"。魔法を通さないもの。こんな風に色々できるんだよ、魔導は」
イメージ次第で可能性は無限大、ということか。面白い。

「んじゃあ一回なんでもいいからやってみて!まあ最初は無理ーーーー」
「できた」
「できるんかいっ!!」
俺の手に浮く、"魔力の槍"を見てマーリンがため息をこぼす。簡単に槍をイメージして魔力を絞り出していく感覚だ。
「なんでできるの.....。私も1年かかったのに.....。」
しょぼん、と肩を落とすマーリン。
ざまぁだ。

「ってあれ?」
手の上の槍が急速に崩れ始める。
「魔導は強力な替わりに発動と維持が難しいのー。短期決戦のための魔法だからねー」
落ち込みながら、今更言うかレベルの基礎情報を口々に喋るマーリン。
だが、維持が難しい、というのはよくわかる。常に頭の中でイメージしてなきゃならんのだ。そうしながら戦うなど、お手玉しながらリフティングするようなものだ。
ハイリスクハイリターンということか。そりゃトップクラスの奴らしか使わないわけだな。

「それじゃ、最後に面白いものを見せてあげる。」
といって、魔力を空中に散らばし始めるマーリン。
「ってことで"転移"!」
目の前のマーリンが消えた。
転移、か。いよいよ本格的になってきたな。
「はい後ろに注目ーー!!」
振り返るとドヤってるマーリンがいた。
「なるほど、魔力と自分を変換魔法で移動しているわけですね」
「....!!?なんでわかったの!?」
変換魔法、とは右手と左手のものを交代するだけの魔法だ。それを魔力に伝達し、人と他の魔力を"魔力"が変換魔法を使って交代させているのだ。
と、なぜかこの頭は理解してくれた。前世の俺と違ってやはり優秀なようだ。

そして変換魔法なら俺もできる。
すなわち俺にも転移が使えるかもしれない。
魔力をひねり出し、ばらまく。そこに変換魔法を伝えてーーー
「え?やるの?さすがにできな」
「転移!」
シュウウウウン
と一瞬にして景色が変わった。
「できるんかいっ!!」
できた、のはできたがいきなり景色が変わったせいか酔いがすごい。もの凄いフラフラするが、これ使えんのか?
「あー転移酔いかー。最初は辛いよね」
そんなもんあんのかよ....はよ言えよ!
「......私もなんか自信無くしてきたし、もう帰っていい?」
「ああ。どうぞ」
俺が簡単に転移できたのが癪なのか、激しく落ち込みながら、トボトボと部屋を出る。俺は口からボトボト何かが出そうだ。

「あ、あと1ヶ月は王都にいるから用があったら訪ねて.....」
そう言い残し、なぜか勝手にバタンッとしまった扉を背にマーリンは帰って行った。



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