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3章 王宮魔法使い
29.王女と呪い
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「水球!」
ビッチャーン
生み出された水球はその姿を保つことなく顔面にヒットした。俺の。
これで5回目だ。
「アルシア様......」
「は、はいーなんでしょう......」
「ぶん殴っていいですか?」
「ひいいいぃぃ!」
「アルシア様、多少の失敗で手をあげるゴミクズから離れてこちらへ」
「ゴミクズ!?」
相変わらずシルクの毒舌っぷりがすごい。
しかしアルシア様の魔法っぷりはすごいを通り越してもはやエグい。
魔法を使うたびに、あら不思議。見事に俺の顔に一直線だ。もうプロ野球選手にもなれるのではないだろうか。毎回デッドボールだが。
「なんで俺の顔ばかりに.....」
風魔法で水を吹き飛ばしながらため息をつく。
「す、すみません.......」
アルシア王女はしょぼんと落ち込み、その後ろでシルクが俺をゴミを見るような目で睨んでいた。断じて俺のせいではない気がするんだが。
「レイ様、シルク様。今更なのですがアルシア様の体質についてお話ししなければなりません」
侍女が唐突にそう持ち出した。
「リーナ!あ、あれを言うのですか!?」
リーナはこくんと頷く。
やけに重々しい雰囲気だ。シルクでさえも困惑した表情でリーナと王女様を見比べている。
「アルシア様は実はーーーーー」
呪いとか病気とかかかっている系か?それともーーー
「アルシア様はドジなのです」
「・・・・・・え?今なんと?」
「アルシア様はドジなのです」
知ってたああぁぁぁ!!
本当に今更だな!!!
「ドジ....なんですか!?」
驚いたように目を見開くシルク。
いや、わかるだろ!
「はい。そう.....なんです」
神妙に頷く王女様。
なに?そういうノリ?
「小さい時から何かとハプニングを起こすので気にはなっていたのですが、それがドジだとわかったのは最近で」
いや、遅くね!?こんな分かりやすいドジ見たらわかるだろ!
「それで........解呪の方は?」
「ドジの解呪には腕のいい呪術師が要りまして、なかなか見つからないのです。」
ん?かいじゅ?なんの話してんだ?
「あのーシルク?かいじゅって何?ドジってそういう属性のことじゃないの?」
場がシーンとなる。
なんか問題発言したらしい。
「はあ?何言ってるのよ。ドジはれっきとした呪いじゃない!」
「ノロイ?ノロイってあのノロイ?」
「それ以外に何があるのよ」
ドジが呪い.....?イミワカンネ。
「はぁぁーー。いい?呪いには危害が直接加わるものじゃないのもあるのよ。日常生活に支障をきたす種の呪いね。ドジもその一種よ。生まれた時にたまたまかかってしまう呪いだから」
俺の意味不明な心中を察したのか、シルクが盛大なため息をつきながらも説明してくれた。
「呪いってたまたまかかるものなんですか?」
「いるのよ。そういう稀な人が。生まれ持った呪いは解けないっていうしなかなか厄介なものだけどね」
へ、へえー。
なんか意外と異世界物騒だな......
にしてもドジが呪いって、なかなかシュールな話だ。
「しかし何かのきっかけで解けることもあります。なのでお二人様にはこのまま魔法を教えていただいて欲しいのです」
「ええ。もちろんです」
シルクは快く頷くが、俺としては複雑だ。
ドジが呪いとわかった今、間違いなく王女様の魔法は俺の顔面直航便だ。
そんなリスクを負うべきなのか......
答えかねた俺を見て、侍女がにこりと笑う。
「レイ様もやってくれますよね?」
「え、はい。ソウデスネー」
またもや侍女の恐怖の圧力に屈してしまった.....!
ごほん、とシルクが咳払いをした。
「では改めて、まずは初級の球系統のものからやりましょうか」
「今度は成功させます!見ててください!」
「いや、ちょっ」
「大いなる水の精霊よ、清涼なる水の力を今ここに『水球』!」
ビチャン
王女様の作った水球は、俺の顔面ーーーではなくシルクの頭にぶち当たった。
「・・・・・・」
「あわわわわわわわ」
シルクは無言で立ち尽くしている。
王女様は今にも口から泡を出しそうな勢いで震えていた。
「・・・・王女様」
「ひぃっ!は、はいぃ!?なんでしょう!?」
「失敗は成功のもとです。次は成功させましょう」
そう言って笑うシルク。
しかしずぶ濡れて水が滴り、髪が顔にへばりついた今ではホラーのようだ。
この姿で次は成功させましょう、などと言われても脅迫にしか見えない。
実際王女様はさっきよりもがたがた震えていた。
なかなかシュールな景色だ。
「それでレイ様はなぜ笑っているのですかね?」
シルクがこちらを向き、目を見開いてにこりと笑った。
ビッチャーン
生み出された水球はその姿を保つことなく顔面にヒットした。俺の。
これで5回目だ。
「アルシア様......」
「は、はいーなんでしょう......」
「ぶん殴っていいですか?」
「ひいいいぃぃ!」
「アルシア様、多少の失敗で手をあげるゴミクズから離れてこちらへ」
「ゴミクズ!?」
相変わらずシルクの毒舌っぷりがすごい。
しかしアルシア様の魔法っぷりはすごいを通り越してもはやエグい。
魔法を使うたびに、あら不思議。見事に俺の顔に一直線だ。もうプロ野球選手にもなれるのではないだろうか。毎回デッドボールだが。
「なんで俺の顔ばかりに.....」
風魔法で水を吹き飛ばしながらため息をつく。
「す、すみません.......」
アルシア王女はしょぼんと落ち込み、その後ろでシルクが俺をゴミを見るような目で睨んでいた。断じて俺のせいではない気がするんだが。
「レイ様、シルク様。今更なのですがアルシア様の体質についてお話ししなければなりません」
侍女が唐突にそう持ち出した。
「リーナ!あ、あれを言うのですか!?」
リーナはこくんと頷く。
やけに重々しい雰囲気だ。シルクでさえも困惑した表情でリーナと王女様を見比べている。
「アルシア様は実はーーーーー」
呪いとか病気とかかかっている系か?それともーーー
「アルシア様はドジなのです」
「・・・・・・え?今なんと?」
「アルシア様はドジなのです」
知ってたああぁぁぁ!!
本当に今更だな!!!
「ドジ....なんですか!?」
驚いたように目を見開くシルク。
いや、わかるだろ!
「はい。そう.....なんです」
神妙に頷く王女様。
なに?そういうノリ?
「小さい時から何かとハプニングを起こすので気にはなっていたのですが、それがドジだとわかったのは最近で」
いや、遅くね!?こんな分かりやすいドジ見たらわかるだろ!
「それで........解呪の方は?」
「ドジの解呪には腕のいい呪術師が要りまして、なかなか見つからないのです。」
ん?かいじゅ?なんの話してんだ?
「あのーシルク?かいじゅって何?ドジってそういう属性のことじゃないの?」
場がシーンとなる。
なんか問題発言したらしい。
「はあ?何言ってるのよ。ドジはれっきとした呪いじゃない!」
「ノロイ?ノロイってあのノロイ?」
「それ以外に何があるのよ」
ドジが呪い.....?イミワカンネ。
「はぁぁーー。いい?呪いには危害が直接加わるものじゃないのもあるのよ。日常生活に支障をきたす種の呪いね。ドジもその一種よ。生まれた時にたまたまかかってしまう呪いだから」
俺の意味不明な心中を察したのか、シルクが盛大なため息をつきながらも説明してくれた。
「呪いってたまたまかかるものなんですか?」
「いるのよ。そういう稀な人が。生まれ持った呪いは解けないっていうしなかなか厄介なものだけどね」
へ、へえー。
なんか意外と異世界物騒だな......
にしてもドジが呪いって、なかなかシュールな話だ。
「しかし何かのきっかけで解けることもあります。なのでお二人様にはこのまま魔法を教えていただいて欲しいのです」
「ええ。もちろんです」
シルクは快く頷くが、俺としては複雑だ。
ドジが呪いとわかった今、間違いなく王女様の魔法は俺の顔面直航便だ。
そんなリスクを負うべきなのか......
答えかねた俺を見て、侍女がにこりと笑う。
「レイ様もやってくれますよね?」
「え、はい。ソウデスネー」
またもや侍女の恐怖の圧力に屈してしまった.....!
ごほん、とシルクが咳払いをした。
「では改めて、まずは初級の球系統のものからやりましょうか」
「今度は成功させます!見ててください!」
「いや、ちょっ」
「大いなる水の精霊よ、清涼なる水の力を今ここに『水球』!」
ビチャン
王女様の作った水球は、俺の顔面ーーーではなくシルクの頭にぶち当たった。
「・・・・・・」
「あわわわわわわわ」
シルクは無言で立ち尽くしている。
王女様は今にも口から泡を出しそうな勢いで震えていた。
「・・・・王女様」
「ひぃっ!は、はいぃ!?なんでしょう!?」
「失敗は成功のもとです。次は成功させましょう」
そう言って笑うシルク。
しかしずぶ濡れて水が滴り、髪が顔にへばりついた今ではホラーのようだ。
この姿で次は成功させましょう、などと言われても脅迫にしか見えない。
実際王女様はさっきよりもがたがた震えていた。
なかなかシュールな景色だ。
「それでレイ様はなぜ笑っているのですかね?」
シルクがこちらを向き、目を見開いてにこりと笑った。
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