異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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間話

20,5.食レポ

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 「着いた.....!!」

 ここがアリア王国東の都、ウルスア領の城下町、ファクトリアか!
 ずいぶん王都からは遠かった。

 「へい!いらっしゃーーい」
 「そこの美しい奥さん!ここの商品は美しい奥さんにぴったりだぜ!」
 「新商品が入荷したぞーーー!」

 商店街にはあちこち声が飛び交っている。
 賑やかなのは好きだが、正直うるさい。

 「そこの旅人さん!ファクトリアに来たならコレを食べなきゃ損だぜ!」

 どうやらその声は私に向かって放った言葉らしい。
 ファクトリアの特産物は有名だ。
 噂で聞いていたので試しに覗いてみよう。

 「何が売っているんだ?」
 「それはな....領主様に仕える大魔法使い様が生み出したこの“どーなつ“だ!」
 「どーなつ?」

 売り手は見た方が早いから、と言って私に紙袋を渡してきた。
 中を開けてみる。

 「うおおおおおお!!」

 なんという香りだ!食欲をそそる甘い匂い!それでいてしつこさがない匂いだ!
 実物はどんなのだ!?

 「.......?」

 なんだこれは?
 一見するとパンのようなものだか真ん中に穴が空いている。  
 不思議な形だった。
 その不思議なものを口に運ぶ。

 「.......!!なんと!なんということだ!」

 おそらく揚げられたものだろうか!外はサクサク、中はふわふわの食感!その上に乗った砂糖がさらに美味い。先ほどの匂いがさらに美味しさを増させ、食べる口が止まらない!

 「ははは!すごいだろ!俺も初めて食べた時は驚いたものだ!このどーなつはこの町みんなの大好物だしな!」

 私はさらに5つ買った。
 どーなつを頬張りながら通りを歩く。

 「へい兄ちゃん!新商品食べていかないか!」

 もちろんですとも!

 「新商品.....それは大魔法使い様が生み出した、この“たいやき"だ!」
 「たいやき!?」

 見た方が早いから、と店主が紙袋を渡してくる。

 さっそく開けると先ほどと同じような匂いが私の鼻を包む。
 ふむ。いい匂いだがさっきと同じじゃないのか?
 私は半信半疑で中からそれを取り出してみる。

 「.......?」

 形はまるで魚のような形をしている。
 ふにゃふにゃの魚だ。ふざけているのか?
 さっきと同じ、不思議な形のものを口に運ぶ。

 「うおおおおおぉぉ!!な!なんだこれは!」

 外はサクサク、中はふわふわとどーなつと変わらないが変わるのは中身!
 このなめらかな食感と甘い口どけが最高ッッッだッッッ!
 さっきのといい、ファクトリアの食べ物は素晴らしいな!

 私はたいやきを5つ買い、通りを歩き始める。

 「へい!そこの旦那!歩いてても暑いだろう?ちょっとここの食べ物で涼んでいかないかい!?」

 もちろんだとも!

 「それで涼める食べ物というのは?」
 「それはな.......大魔法使い様が生み出したこの“あいすきゃんでえ”だ!」
 「あいすきゃんでえ?」

 聞いたことのない不思議な響きだ。

 「ちょいとこちらへ」

 と案内されたのは地下にあるひんやりとした部屋だった。氷が多く見える。
 ふむ。氷室か。珍しいがないものではない。
 しかし氷でも渡されるのか?

 「これだ!溶けないうちに食べるんだぞ!」

 と渡されたのは木の棒に固まりついている色のついた氷だった。

 「.......?」

 なんだこれは。本当にただの氷ではないか。
 確かに涼まるが馬鹿にしてるのか?
 と思いつつそれを口に運ぶ。

 「.......!?うわああああぁ!!なんてこった!!!」

 ただの氷だと思いきや味のついた氷だった!
 これはケリーの実リンゴの味か!
 そしてひんやりとした舌触り!シャキシャキした暑い今にぴったりな食べ物!
 なんという!なんという食べ物だ!!
 ファクトリアはこんなにも美味しい食べ物の宝庫だったのか!

 私はさらに3つ買うとペロリと平らげ、通りに出た。

 「へい!兄ちゃんーーーーーー」

 その後、旅人が所持金が底をつくまで食べ続けたのは言うまでもない。
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