20 / 119
2章 魔法使いと戦争
18.超級魔法使いVS極級剣士
しおりを挟む「俺の名はバルドル。シリル公国の第3将軍。極級の剣闘流剣士だ」
わざわざ自己紹介してくれたが、嫌なことを知ってしまった。
極級。
それは俺が一度も勝てていないガドより強いということ。
1人で1000人を相手に出来ると言われるレベルだ。
間違いなく強い。今までとは比べものにならないくらい強い。
A級と呼ばれる大蛇でさえ極級には届かないだろう。
「ガキのくせに中々強いじゃないか。その強さは認めよう。だがな、俺の配下に手を出したのは許さん。覚悟するがいい」
ええ。どちらかと言えば配下を無碍に扱ったのはお前じゃないか。
とんだ言いがかりである。
だがコイツは強い。言いがかりが通じる程に、普通にやったら負けるだろう。
だが俺もガドとの戦いで何も剣士対策を考えなかったわけじゃない。
いくぜ!剣士対策その1!空に逃げる!
「岩石塔!!」
ズブズブ、と俺の足元が盛り上がり、土が塔となって俺を10m程度の高さまで持ち上げる。
「ほう。空へ逃げるか。だが射程範囲だ。」
バルドルが右手の剣を一振りする。その途端、塔の半分ぐらいのところが真っ二つになった。
「は?」
岩石だぞ?
真っ二つにするにも限度があるだろうが。
バランスを崩した塔はそのまま流れるように落ちていく。
さっきのは斬撃だろうか。
ガドもたまに飛ばしていた。
しかしアレはレベルが違う。
まともにやれば勝機はない。
「白霧!!」
落ちながら地面に真っ白の霧を発生させる。
「む。霧か!」
これが剣士対策その2!
相手の視界を奪い、その間に範囲魔法で攻撃するのだ。
俺はそのまま水で着地した。
「そこだ!」
瞬間、その着地音を聞いたのかバルドルの声とともに
ブゥオン、と横1mぐらいのところがえぐれた。
身体が凍りついた。少しの油断も命取りだ。
“大雨!“
位置バレを防ぐため無詠唱で大雨を唱える。
「雨.....?」
さらに見通しが悪くなった。これでどちらも姿など全く見えないはずだ。
“硬石岩!“
俺の周りをなるべく硬くした石で囲む。右左上後ろを囲み、前だけ開けて呼吸を整えた。
やるしかない。水蒸気が舞うこの状況。もう魔力はそんなに残っていない。一撃でヤツを倒すような範囲魔法は無理だ。
だが魔法でなければ良い。
「太陽炎!!」
「噴水!!」
「硬石岩!!」
3つの魔法を連続して唱えた。
それぞれは中級程度の魔法だが、状況次第ではそれ以上に化ける。
超高熱の太陽炎はかなり前方に、噴水は目の前に、そして硬石岩で完全に自分を囲んだ。完全にふさいだせいで視界が真っ暗になる。
そして真っ暗な硬石岩の中でその時を待った。
ヒュウウゥーーーーーー
風の吸い込まれるような音が聞こえる。
まだか?まさか失敗した....?
知識だけでは無理があるか———
バアーーーアアァーーーン
その時、鼓膜が破れるような爆発音が鳴り響いた。
かなり近くだ。だが俺は生きている。作戦成功だ。
俺が狙ったのは水蒸気爆発。多量の水を高熱の炎にぶつけると蒸発による気体の膨らみで爆発する反応。
その威力は大量の水と超高熱の炎で作ったんだからものすごいものだろう。
少ない魔力でも強い威力は生み出せる。
暇な時に考えた技だ。
勝った。
そう思い、硬石岩を解除した。
目の前に設置したはずの噴水は跡形もなく消えていた。爆発を暖和する役割だったからナイスな働きだ。
霧もすっかり晴れ、数々の陣が張ってあった場所には大穴があき、焼け野原になっていた。
これで生きているのは無理だろう。ここにいた兵士たちは骨すら残らず消し飛んだはずだ。
何人、いや何十人何百人が死んだんだろうな。
後ろを振り返るとちゃんと硬石岩で守ってあげた領主が驚いた顔で俺を見つめていた。
違った。俺の後ろを見つめていた。
「!?」
恐怖を感じ、後ろを振り返ると、そこにはーーーーーーー倒したはずのバルドルがいた。
「やってくれるじゃねえか」
バルドルはやはり傷だらけの身体で恨めしそうに俺を見つめる。
「なっ!」
どうやったらコイツは死ぬんだ!?
「もうお前を侮ることはやめる。本気で、殺す!!」
バルドルが目にも止まらぬ早さで突っ込んできた。
「.....ッ!」
動転し、強すぎる風を体にぶち当てた。
転がって体が痛かったがそんなこと言ってる場合じゃない。
俺の元いた場所を見ると、そこにはバルドルの姿がーーーーーもういなかった。
「死ね」
「くっ!!」
後ろを振り返らず俺は再び風で自分を吹っ飛ばす。
ギュオンッ、と風切り音が聞こえて背中に壮絶な痛みが突き刺さった。
「あああ!」
痛みに悶え、吹っ飛びながらも噴水を無詠唱で唱えた。
下から制御無視の噴水が湧き出てくる。
それに再び吹っ飛ばされ空中に投げ飛ばされた。
「そこは射程範囲と言ったはずだ」
バルドルは剣を一振りする。
斬撃だ。だがバルドルも先ほどのダメージがあるのか今回は遅い。
斬撃が、見える。
「風刃!!」
風波の一段階上の風の刃を作り出し、斬撃をレジストする———つもりが弱まっただけだった。
威力を弱めた斬撃は空中の俺を捉え、切り裂いた。しかしそれでもバラバラになるほどじゃない。
肉が少し切られ露出した程度だ。
アドレナリンが出ているのか痛みなど感じなかった。
落ちながらも俺は反撃の一手を繰り出す。
「氷柱雨!」
氷柱の雨をバルドルに降り注いだ。だがこの程度で倒せるとは思えない。
実際、かなりの速さ、威力の氷柱雨をバルドルは軽く受け流していた。
バルドルの体に氷柱雨の水しぶきが飛び上がる。目にも止まらぬ速さで粉砕されているのだ。
しかし、それを俺は待っていた。
「小細工もいい加減にしろ。もう終わりだ」
バルドルが剣を構えた。力の入れようから今度の斬撃はもう見えないだろう。
その剣を振るえば俺は確実に死ぬだろう。
だが、俺もコレで終わらせる!
「死ねっ!」
「雷撃!!」
俺とバルドルの声が重なる。
太陽も沈んでしまった薄暗い空の中、光り輝く雷と目にも止まらぬ鋭利な斬撃が放たれた———
34
お気に入りに追加
5,150
あなたにおすすめの小説

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~
まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。
よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!!
ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。
目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。
なぜか、その子が気になり世話をすることに。
神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。
邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。
PS
2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。
とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。
伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。
2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。
以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、
1章最後は戦闘を長めに書いてみました。

神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる