異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

文字の大きさ
上 下
19 / 119
2章 魔法使いと戦争

17.奪還作戦

しおりを挟む
 
 「投石岩フロンドロック!」

 その声と共に大きな岩の塊が俺たちの進路を妨害する兵たちにぶち当たった。
 冷静になったので死なない程度にしてあげている。
 後遺症は残るかもしれないが。

 「ぐわああ!!」
 「だれか!やつらを止めろ!!」

 散らばっていた兵たちが口々に叫んでいる。
 突如現れた二人組に驚いているようだった。
 まあ、俺しか敵を倒していないがな。
 領主は想像以上に使えなかった。
 ていうか戦闘面では邪魔だ。案内役でしかなかった。

 「次はどっちですか!?」
 
 息を切らしながらたずねる。

 「えっーと、あれ?どっちだ?」

 使えねーー!!
 ただの邪魔野郎じゃねぇか!

 「.....どうすれば。.....!?」

 そうだ!
 あのブレスレットだ!
 色は青。青は通常状態を示している。だからまだ死んでないし、危険な目にもあっていないようだ。
 ホッとする。
 だが今後もそうだとは限らない。出来る限り急がなければ。
 方向は....北西?
 真逆!領主方向間違ってるじゃないか。

 「わかったか?」
 「ええ。北西でした。このままじゃ間に合わない。どっかの誰かが間違えたせいでね。」
 「どっかの誰か....誰だ?」

 領主はいもしない人物を睨みつけていた。アンタだよ。皮肉も通じないのか。
 しかし逆方向となれば時間が惜しい。

 これは魔力消費が尋常じゃないので使いたくなかったが仕方ない。

 「領主様、俺に捕まってください」
 「ああ?」

 疑問気に領主が腕に捕まるのを確認し、俺は大きく息を吸い込んだ。
 
 「地噴火テラデフェール!!」

 ボッフンっと俺の足元の地面が吹っ飛んだ。
 いや、押し上げられた。
 爆発したような地面のエネルギーを受け、俺たちもとてつもないスピードで空中に放り出される。
 ここからだ。一歩間違えれば死ぬ。

 「突風ゲイル!!」

 北西に向かって風を発生させる。かなり強い風だ。揉みくちゃにされないように微調整しながら体勢を整える。
 空中に投げ出された俺たちはその風を受けて北西に吹っ飛ばされる。
 しかし、これだけじゃほぼ進まない。
 次だ。次の作業は痛いから嫌なんだが。

 「爆発バースト!!」

 背中に強い爆発を受けた。

 「いったああああ!」

 背中に強い痛み。
 それと引き換えに強い推進力を獲得した。
 前に進むためには犠牲は必要なのである。

 「うわあああああああ!!!!」

 俺と領主の叫び声がまだ夕焼けの残る空に響き渡った。
 落ちながらぐんぐん進んでいく。

 ブレスレットを見ると斜め下を指し示していた。
 下を見ると広大な丘に陣が貼られていた。
 最奥地の陣はあの赤色の陣だろう。
 そのままあそこに着地してやる。折角だ。敵兵の度肝を抜いてやろう。

 俺は風魔法で速度を調整しつつ、赤い陣の真上から垂直に落下するよう仕向けた。

 推進力が止まり、真下に落ち始める。
 風で勢いを弱めつつ真下に水を発生させ衝撃を和らげた。

 「うおあおあああ!!」

 悲鳴か雄叫びかわからない声をあげつつ落下する。
 ばっちゃーん
 水が全身を包み込んできた。
 窒息死してしまいそうだったので水を散らせると丁度赤い陣のなかに飛び込めたみたいだった。
 周りにいるおびただしい数の兵士を見ればわかる。
 これはやばいかもしれない。

 「ど、どうも」

 挨拶をしたが、周りの兵士はポカーンとしているようだった。

 「泥波マッドウェーブ!!」

 とりあえず固めておこう。
だんだん戦いに慣れていくにつれ冷静になっている気がする。

 「敵襲だぁ!!向かい打て!!」

 固まっていた兵士が我に帰り叫んだ。
 まずい。これ以上集まられたら助ける暇がなくなる。

 「!!いたぞ!」
 「!!!」

 ここで領主のお手柄だった。
 いた。陣の端っこに縛られたエミリアとルシアがいた。気絶はしているようだが死んではいない。
 子供だからか油断しているようだった。

 「急げ!!敵は赤陣の中だ!!」

 遠くから兵士の怒声が聞こえてくる。

 「領主様は縄を解いてあげてください!俺は敵を食い止めます!」

 というか無事とわかったんだ。
 食い止めるどころが吹き飛ばしてやる。
 今こそ練習していた混合魔法を見せてやるぜ。

 「いたぞ!!かかれ!!」

 敵兵が突っ込んできた。
 ガチャガチャと音をさせながら斬りかかってくる。

 「泥波マッドウェーブ!」

 その足を泥波で固め止める。
 剣士タイプの敵は足を止めてしまえば遠距離魔法の餌食でしかなかった。

 「流星岩エストレアロック!!」

 然魔法で発生させた岩を風魔法でただ吹き飛ばすだけの混合魔法。
 だがその威力はかなりのものだ。特に多数相手ではな。

 数々の岩岩がグォンという風切り音とともに飛んでった。

 「岩だ!避けろ!!」
 「ダメです!泥で動けません!」
 「そんな....うわあああ!」

 ゴツゴツゴツ、という鈍い音ともに兵士たちが崩れ落ちた。
 死んで.....はいないはずだ。

 「レイ君!解けたぞ!ここからどうする!?」

 どうするって....どうしよう。
 逃げないとダメだが空中移動は負担がかかりすぎる。もう一度やる気力ないし、気絶中の子供などもってのほかだ。

 「仕方ありません。突っ切りましょう」
 「ほ、本気で言ってるのか....?」
 「ええ。それに兵士といってもこいつら大したことありません。いけます」
 「......わかった。突っ切ろう。頼んだ」 
 「では僕がまず切り開くのでついてきてください。」
 「ああ!」

 「では行きーーーーー」

 スパッ、と俺の前の地面がえぐれた。
 いや、切り刻まれている。背筋が凍った。
 もう一歩進んでいたら死んでいたかもしれない。

 「お前、なかなかの強者だな」

 その男は俺が気絶させた兵士たちを剣で・・吹き飛ばし、俺の前に現れた。
 冷や汗が湧き出してくる。
 直感でわかる。こいつはヤバい。
 人を殺すことに躊躇いがない。

 「俺の名はバルドル。シリル公国の第3将軍。極級の剣闘流剣士だ」
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

処理中です...