50 / 65
4巻
4-2
しおりを挟む
森を抜けると、普段は質素な里といった感じのエルリンクが、祭りのために彩られていた。
どこからか太鼓と笛の音も聞こえてくる。
周囲では大人が祭りの準備に勤しみ、子どもは楽しそうに走り回っていた。
「この『ソールの大祭』は太陽神ソールに豊穣と幸運を祈る祭りなのじゃ」
そんなフローラの解説が入る。
確かに里のあちこちに、お日様マークが刻まれている。
「ほう、これが太陽神の紋章か。確かに造形から趣深さを感じる……」
……と真剣な顔で、お日様マークの一つを指でなぞってみる。
「それは子供の落書きなのじゃ」
「え?」
「それよりも見るのじゃ、アレを!」
フローラが指さす先には、大樹に吊るされた、巨大な肉塊があった。
な、なんだこれ。普通に怖いんだが。
「あれが太陽神じゃ」
「あれが太陽神なの!?」
神を吊るしていいのか?
それにあの雰囲気、無限回廊で見たエルシャの死体と似たものを感じるが……。
「あ、あんな扱いでいいのか? 神様なわけだろ?」
そう聞くと、フローラが人差し指を立て、自慢げに語る。
「ふふん。太陽神ソールは預言の神。秘事の知識を得るために、あえて大樹にぶら下がっているのじゃ」
「なるほど、そうか」
理解を諦めたい。ちなみにラウラは最初から聞いていない。
だが、せっかくなので頑張ってもう少し聞いてみることにする。
するとフローラは、次のように説明してくれた。
『ソールの大祭』は『ブロート』と呼ばれる供儀を曖昧模糊な神々『ディース』に捧げるという。
そして天上の存在『アールヴ』が太陽神ソールを通じて人々に預言を伝え、人々は『ブロートヴェイスラ』を行って『ドレッカ・ミンニ』するという。
「…………」
どういうこと?
よくわからないが、凄いのだろう。祭りとはそういうものだ。
「ちなみにドレッカ・ミンニでは極上の蜂蜜酒をいただくのじゃ。これが美味くてのう」
よくわからないが、美味いのだろう。祭りとはそういうものだ。ゴクリ。
祭りの本番は夕方かららしいので、会場を見て回ることになった。
少し歩いたところで、族長のリーディンとその妻ラーフさんがやってきた。
「やあ、元気そうだね。わざわざ出向いてくれて嬉しいよ」
祭りの準備によるものか若干疲れの色が見えるが、それでもエネルギッシュなリーディンと、握手を交わす。
「こちらこそお招きいただき、ありがとうございます。今からドレッカ・ミンニが楽しみですよ。ああ、早くドレッカをミンニしたい」
よくわからない単語をそのまま使ってみたが、リーディンはうんうんと満足そうに頷いた。
どうやら正解のようだ。
リーディンは「そうだ」と口にして手をポンと打つ。
「ドレッカ・ミンニするなら『みそぎ』はやった方がいい。悪霊を払い落とすことで肉が美味くなるんだ。そうそう、体に塩をよく揉み込むんだぞ」
「ん?」
もしかして俺たちを食べようとしてないか?
「フローラ、みそぎの準備は任せたぞ」
「わ、私がやるのか!?」
「ふふふ、当たり前だろう」
バチン! とリーディンは大げさなウインクをしてから「では」と去っていく。
去り際にラーフさんが、俺の肩を掴んだ。
「据え膳……」
「ひっ」
「結婚……」
「怖っ!」
そうしてラーフさんも去っていった。何だったのだ。
「みそぎって?」
ラウラがどこからか持ってきた肉串を頬張りつつ言う。
相変わらず自由だ。というかエルフって肉食禁止じゃなかったか?
「ふむ……みそぎか。ラウラ、ドーマ。お主たち、覚悟はあるか?」
フローラの目がキランと光る。
覚悟? そうだなあ……。
「食事が美味しくなるんだろ? なら、やらない理由はないな!」
ラウラも肉串を持っていない方の拳を突き上げた。
「ん、やってみよー」
こうして俺たちは、エルフ族の謎儀式に参加することになったのだった。
☆
「ではドーマ様、こちらへどうぞ」
美人なエルフのお姉さんが先導するのについていくと、エルフの里の中でもかなり辺鄙な場所までやってきていた。
ちなみにラウラとフローラは別に案内されているので、今は俺一人だ。
フローラが内容を知っていることから考えると、変なことはされないと思うが……。
俺は恐る恐るエルフのお姉さんに聞いてみる。
「みそぎって、どういうものなんですか」
だがお姉さんは無表情でぼそっと呟いた。
「据え膳……」
「え?」
「結婚……」
「なんか呪われてる!?」
それ以上の情報は聞き出せなかった。怖すぎて。
やがてやってきたのは寂れた小屋だ。本当に何をされるんだ。
「ではここでお着替えください」
中に入ると、バスローブみたいなものが一枚置かれているだけ。パンツすらない。
なんとなくみそぎというからには滝行のようなものかとイメージしていたわけだが、案外間違っていないのか……?
着替えて外に出ると、相変わらずお姉さんは無表情で立っていた。
「流石ノーパンのドーマ様。ではこちらへ」
「パンイチな……って、どっちにせよ嫌な二つ名だぜ」
かつてエルリンクに囚われた際にパンイチで脱獄したことから『パンイチのドーマ』という些か不本意なあだ名がついているんだよな。
これを機にノーパンのドーマって呼ばれるようになったら最悪だ。
ともあれ、なおもエルフのお姉さんについていくと、異質な小屋が見えてくる。
木造のその小屋の隙間には、びっしり苔が詰められている。
さらに屋根からは煙突が生えていて、モクモクと蒸気が発されているのだ。
「こ、これは……?」
「全てラーフ様のご指示通りですので」
エルフのお姉さんはどこからか葉を茂らせた木の枝を持ってきて、俺に渡す。
すると突然ドンドコ太鼓が鳴る。
それと同時に、ヒョロヒョロと笛の音も聞こえてきた。
小屋の中を、エルフのお姉さんが手で示す。
「入れ……ってことだよな」
恐る恐る小屋に入ると、中には熱気が充満していた。
もわっと熱い蒸気が体に纏わりつき、呼吸が苦しい。
小屋の中は板張りで、中央には何故か赤く熱せられた石の炉がある。
奥には長椅子が置かれており、そこに座って驚いた顔をしているのは……フローラだった。
半透明の前掛けタイプのエプロンみたいな薄っぺらい布を腰で縛った、謎スタイル。
正直スケスケで目のやり場に困る。
「これって……なんなの?」
俺がそう聞くと、フローラは「ぐぬぬ……」と唸った。
「何故ラウラではなく私がここに案内されたのかとは思ったのだが……手違いか?」
ラウラが? こんな熱気にぶち込んだら溶けそうだが。
「ともかく一度出てみるのじゃ」
そうフローラは口にしてから扉へ向かった。
だが――
「…………開かぬ」
「え?」
「ふむ、どうやらみそぎが終わるまで、出てはならぬようじゃ」
「だからみそぎって何!?」
フローラは即答しない。
しかし腕を組み、数秒黙ったあと、観念したように言った。
「いわゆる蒸し風呂じゃ。悪いものを落とすためのな。仕方がない、定式通りやるとするか」
蒸し……風呂? 風呂なのに水に入らないのか。
確かに全身から汗が噴き出して、体の中の悪いものがどんどん排出されている気はする。
なんて思っていたらフローラが急にバスローブの中に手を突っ込んでくるような形で、ペタペタと背中に触れてくる。
「うわあ、何するんだ!」
「何って、塩を揉みこんで肉を柔らかくするのじゃ」
「やっぱ食べようとしていないか!?」
そんなことはないらしい。
蒸気が霧のように舞う小部屋で、フローラはひたすら腕、背中、お腹、脚に塩を揉みこんでくる。
彼女の長い金色の髪がぺったりと背中に張り付いているのが見えた。
「はあ……はあ……」というフローラの呼吸音だけが聞こえてくる。
…………気まずっ!
「よし、これで良いかのう!」
「お、終わったのか?」
「次は石鹸を揉み込むのじゃ」
「まだあるのか……」
今度は石鹸の泡を揉み込むことで皮膚をしなやかにし、味わいをよくするらしい。
……ってやっぱり食う気じゃねえか!
フローラはどこからか石鹸を取り出すと手で泡立たせ、俺の背後に回る。
「んっ、なかなか泡立たないのう……んっ、こうか?」
フローラは何やら後ろで試行錯誤しているようだ。
にゅるにゅると奇妙な感触が背中を伝ったかと思えば、背中からフローラが抱き着いてきた。
フローラは全身に石鹸の泡を纏っているようで、互いの体同士を擦り合わせることで泡を揉み込もうとしているのだろう。
柔らかく、もちもちした感覚が石鹸とともに脳内に刷り込まれたところで、ようやくフローラは動きを止めた。
ふ、ふう。俺の理性も動きを止めるところだったぜ。
「さ、では水で流すぞ?」
フローラは俺の前に立つと、魔術で生み出した温水を俺にかけていく。
凛とした顔立ちは美男美女ぞろいのエルフの中でもひと際美しく、白く透明感のある肌に、曲線美を感じさせる滑らかなスタイル。黙っていれば、ポンコツエルフにはとても見えないくらい美人なんだよな。
……というかフローラの服、体にぴっとり張り付きすぎだろ。服を着ていないも同然じゃないか。
「どうかしたのか?」
フローラは気付いていないようだ。
ならば俺も知らぬふりをするのが礼儀というもの。
俺の目はもはや現実を見ていない。明日だけを見ているのだ!
「よし。あとは最後の儀礼じゃ!」
「ま、まだあるのか?」
「そうじゃ。あとはこれでお主をシバくのよ」
フローラはにっこりとしながら、例の木の枝を取り出した。
葉が茂っていて、団扇かあるいは鞭のようにも見える。
「え? シバかれるの? 俺が?」
「うむ。半死半生になるまで打つ!」
フローラは有無を言わさずピシャアンと枝を振った。
俺の背中に激痛が走る。
いや……そこまで痛くない。
むしろ……気持ちいい?
ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。
「もっと! もっと打ってくれ!」
ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。
「な、なんだこの感覚は!」
ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。
「て、天国が見える……! ここが聖地か!」
「いかんいかん、やりすぎた」
そんなフローラの慌てたような声が聞こえた。
意識が遠のく……。
「わぶ!」
冷水をぶっかけられ、俺は目覚めた。
ここは、小屋の外か。
やり遂げた顔のフローラが、俺を団扇で扇いでくれている。
「これが『みそぎ』! どうじゃ、すっきりしたか?」
「あ、うん、どうなんだろ。よくわかんない」
「ええ!?」
フローラは心底驚いていた。
でもだって、途中から記憶が曖昧なんだもん。
ヘロヘロで会場に戻ると、肉を貪るラウラとイフがいた。
「どこいってたの?」
「いやあ、蒸し風呂にだな……」
「ふたりで?」
艶々になった俺とフローラを見比べたあと、ラウラの目になんとも寂しげな影が差した。
あらぬ思い違いをされているような……。
俺は一から経緯を説明した。
ラウラはジッと俺を見つめ、嘘はついていないと判断したようで、すぐに興味を食べ物に移した。
食い意地に助けられたような形である。
ちなみに『みそぎ』は本来俺とフローラでやるものじゃなかったらしい。
というのも、祭りも佳境に差し掛かろうかという頃に荊でできた冠を持ってきたラーフさんと話していたら、彼女はふとこう口にしたのだ。
「あら? フローラとドーマくんが結婚するんじゃないの?」
「ち、違うのじゃ! 道理でおかしいと思ったわ! 結婚するのはラウラとドーマと言っておったろう!」
確かにさっきもフローラは『手違いか?』なんて言っていたな。
俺は口を挟む。
「いや、俺たちも結婚はしないが」
どうやらフローラが俺とラウラをお祝いするべく祭りに呼んだところ、リーディンとラーフさんが勘違いしたらしい。
「ハッハッハ! それはすまなかったなあドーマくん! いやあ、てっきりドーマくんはうちの娘と結婚するものかと! いや、人間相手なら重婚でも別に構わないか?」
リーディンがそんなことを言うと、ラーフさんはにっこりと微笑んだ。
「そうね。既成事実さえあれば十分よ。ね、あなた?」
「げふんげふん」
リーディンは何かを思い出したのか、青い顔をしていた。
そんな間にもエルリンクの空を色とりどりの花火が彩っていく。
広場には様々な大道芸で技を競い合うエルフたち。テーブルにはあらゆる美味珍味が並ぶ。
ごちそうを食べ、蜂蜜酒を飲み、詩を朗誦し、ダンスを踊る。
それがエルフ族の祭りなのだ。
祭りも終盤に差し掛かると、今年一番の大きな獲物が運ばれてきた。
その肉が全員に配られる。
さらにグラスに入った特製の蜂蜜酒が渡された。
フローラが上機嫌に話す。
「祭りの最後は、このグラスをあの太陽神に掲げてこう言うのじゃ。『あなたに祝福を!』とな!そうすれば、太陽神ソールが私たちに祝福を返してくれるのじゃよ」
なるほど。祝福をやり取りするのか。
素敵な儀式じゃないか。
俺とラウラは顔を見合わせた。
そしてフローラとも視線を交わし、グラスを掲げた。
「「「あなたに祝福を!」」」
☆
ローデシナに冬が訪れ、辺りは白銀に染まった。
ルエナがローデシナにやってきたのは、そんな真冬のことだった。
「えへへ! 兄さん、来たよ」
扉を開けると、見目麗しい我が妹が猛吹雪の中、立っていた。
くりんとした目に愛嬌のある口元、そして自慢げにぶいっと突き出されたダブルピース。
猛吹雪が兄妹を包み込み、大自然さえも俺たちを祝福する。
ああ、我が妹よ……なんという天使。
この寂然としたローデシナに訪れたるは、この世に知らざる人なき天使なり。
「兄さんがなんか詠い出したよ!?」
「はいはい、寒いので早く閉めるのですよ」
「はッ!?」
危なかった。ニコラが正気に戻してくれなければ、雪と同化するところだった。
ルエナは頭にちょこんと乗った雪を払い、くるくるとマフラーを外してコートを脱ぐ。
それをニコラが受け取ると、弾んだ声を発しながら家の中に案内する。
「ご主人様の妹様……ようこそなのです!」
ニコラはスキップでリビングへ向かっていく。
数日前からニコラはこんな調子だった。
王都で俺たちだけルエナに会っていたことをずっと羨ましがっていたのだ。
その様子を見て、ルエナはくすりと微笑む。
「ふふ、兄さんの手紙で知ってたけど、可愛い妖精さんだね」
「ああ、ルエナは可愛い妖精さんのようだからな」
「ルエナの話はしていないんだよ?」
おっと。そうだったか?
リビングに入ると、家のメンバーが勢ぞろいして待っていた。
ラウラやサーシャとはすっかり既知の仲だが、フローラやノコとは初対面だ。
「は、初めまして! 兄さんの妹のルエナですっ!!」
カチンコチンになったルエナはぎこちなく挨拶をする。
みんなの前に立ち、緊張しているのだろう。
するとルエナの前にラウラがにゅるりと滑り込んできた。
「ひさしぶり。会いたかった」
「ラウちゃん! えへへ、私もだよー!」
二人は手を握り合い、抱擁を交わす。
その瞬間、家中に爽やかで優しい風が吹き、サーシャと俺は血反吐を吐いた。
「と、尊いわ……!」
「春? 春がもう来たのか!?」
「お主ら何をしておるのじゃ……?」
フローラはやれやれとため息をつく。
そうだ、フローラを紹介しないとな。
「そうそう、こっちはエルフ族のフローラだ」
「ふふん、ドーマの妹ということは私の妹も同じ! 私のことはフローラお姉さんと呼ぶのじゃ!」
自信満々にフローラはそんなことを言った。それが間違いだとも知らず。
ルエナは一瞬で冷めた表情になり、淡々と返す。
「ルエナの兄妹は、兄さんだけだよ……?」
フローラは俺を見た。
『どうすればいいのじゃ?』と言いたげだ。
……うん、フローラとはあんまり相性が良くないようだ。
ドンマイ! フローラ。
「グロウ! わふっ!」
ルエナの足元をイフがぱたぱたと駆け回る。
それに気付いたルエナは、「わあ!」と小さな悲鳴を上げてから、優しくイフの毛並みを撫でた。
「モフモフだねっ! このわんちゃん」
「一応虎だけどな」
「わふっ!」
イフは嬉しそうに尻尾を振る。魔物も恐れる伝説の白虎――という自身の設定はもう忘れたようだ。
ちなみにノコはソファーの陰に隠れてこちらを窺っている。人見知りな奴め。
まあルエナはもう数日いるんだ。そのうち打ち解けるだろう。
そのあとはみんなで食事をして、会話を交わし……なんてやっているうちに、夜は深まっていく。
俺は暖炉の前でうとうとしていた……ところに、風呂上がりのルエナがやってくる。
今ルエナは、可愛らしいフリル付きのパジャマを着ていた。
遠慮なく俺の膝に座ると、ルエナがぽすんともたれかかってきた。
石鹸の香りがふわっと鼻をくすぐる。
「兄さんの腕の中、相変わらず落ち着くなあ」
「そうか? ルエナは前より少し重くなったな」
「……兄さんの馬鹿」
「いててててて」
げしげしと足を踏んできた。
事実なのだから仕方ないだろう。
ルエナは眉を顰めつつ、俺を見上げる。
「兄さんのデリカシーのなさは、心配だよっ! こんなに女の人に囲まれてるのにねっ。でも……」
あれ? 心なしかルエナの目に光がなくなっていっているような……。
「そっか。今は兄さんと心臓が並んでるんだね。いっそのこと、一緒の心臓なら、ずっと離れずに済むのかな……」
なんか不気味なことまで言い出した。
汗が噴き出し、額に髪が張り付く。
まずい。俺は今、生殺与奪の権をルエナに握られているっ!
なんて戦慄していたのだが、ルエナはふっと笑ってから口を開く。
どこからか太鼓と笛の音も聞こえてくる。
周囲では大人が祭りの準備に勤しみ、子どもは楽しそうに走り回っていた。
「この『ソールの大祭』は太陽神ソールに豊穣と幸運を祈る祭りなのじゃ」
そんなフローラの解説が入る。
確かに里のあちこちに、お日様マークが刻まれている。
「ほう、これが太陽神の紋章か。確かに造形から趣深さを感じる……」
……と真剣な顔で、お日様マークの一つを指でなぞってみる。
「それは子供の落書きなのじゃ」
「え?」
「それよりも見るのじゃ、アレを!」
フローラが指さす先には、大樹に吊るされた、巨大な肉塊があった。
な、なんだこれ。普通に怖いんだが。
「あれが太陽神じゃ」
「あれが太陽神なの!?」
神を吊るしていいのか?
それにあの雰囲気、無限回廊で見たエルシャの死体と似たものを感じるが……。
「あ、あんな扱いでいいのか? 神様なわけだろ?」
そう聞くと、フローラが人差し指を立て、自慢げに語る。
「ふふん。太陽神ソールは預言の神。秘事の知識を得るために、あえて大樹にぶら下がっているのじゃ」
「なるほど、そうか」
理解を諦めたい。ちなみにラウラは最初から聞いていない。
だが、せっかくなので頑張ってもう少し聞いてみることにする。
するとフローラは、次のように説明してくれた。
『ソールの大祭』は『ブロート』と呼ばれる供儀を曖昧模糊な神々『ディース』に捧げるという。
そして天上の存在『アールヴ』が太陽神ソールを通じて人々に預言を伝え、人々は『ブロートヴェイスラ』を行って『ドレッカ・ミンニ』するという。
「…………」
どういうこと?
よくわからないが、凄いのだろう。祭りとはそういうものだ。
「ちなみにドレッカ・ミンニでは極上の蜂蜜酒をいただくのじゃ。これが美味くてのう」
よくわからないが、美味いのだろう。祭りとはそういうものだ。ゴクリ。
祭りの本番は夕方かららしいので、会場を見て回ることになった。
少し歩いたところで、族長のリーディンとその妻ラーフさんがやってきた。
「やあ、元気そうだね。わざわざ出向いてくれて嬉しいよ」
祭りの準備によるものか若干疲れの色が見えるが、それでもエネルギッシュなリーディンと、握手を交わす。
「こちらこそお招きいただき、ありがとうございます。今からドレッカ・ミンニが楽しみですよ。ああ、早くドレッカをミンニしたい」
よくわからない単語をそのまま使ってみたが、リーディンはうんうんと満足そうに頷いた。
どうやら正解のようだ。
リーディンは「そうだ」と口にして手をポンと打つ。
「ドレッカ・ミンニするなら『みそぎ』はやった方がいい。悪霊を払い落とすことで肉が美味くなるんだ。そうそう、体に塩をよく揉み込むんだぞ」
「ん?」
もしかして俺たちを食べようとしてないか?
「フローラ、みそぎの準備は任せたぞ」
「わ、私がやるのか!?」
「ふふふ、当たり前だろう」
バチン! とリーディンは大げさなウインクをしてから「では」と去っていく。
去り際にラーフさんが、俺の肩を掴んだ。
「据え膳……」
「ひっ」
「結婚……」
「怖っ!」
そうしてラーフさんも去っていった。何だったのだ。
「みそぎって?」
ラウラがどこからか持ってきた肉串を頬張りつつ言う。
相変わらず自由だ。というかエルフって肉食禁止じゃなかったか?
「ふむ……みそぎか。ラウラ、ドーマ。お主たち、覚悟はあるか?」
フローラの目がキランと光る。
覚悟? そうだなあ……。
「食事が美味しくなるんだろ? なら、やらない理由はないな!」
ラウラも肉串を持っていない方の拳を突き上げた。
「ん、やってみよー」
こうして俺たちは、エルフ族の謎儀式に参加することになったのだった。
☆
「ではドーマ様、こちらへどうぞ」
美人なエルフのお姉さんが先導するのについていくと、エルフの里の中でもかなり辺鄙な場所までやってきていた。
ちなみにラウラとフローラは別に案内されているので、今は俺一人だ。
フローラが内容を知っていることから考えると、変なことはされないと思うが……。
俺は恐る恐るエルフのお姉さんに聞いてみる。
「みそぎって、どういうものなんですか」
だがお姉さんは無表情でぼそっと呟いた。
「据え膳……」
「え?」
「結婚……」
「なんか呪われてる!?」
それ以上の情報は聞き出せなかった。怖すぎて。
やがてやってきたのは寂れた小屋だ。本当に何をされるんだ。
「ではここでお着替えください」
中に入ると、バスローブみたいなものが一枚置かれているだけ。パンツすらない。
なんとなくみそぎというからには滝行のようなものかとイメージしていたわけだが、案外間違っていないのか……?
着替えて外に出ると、相変わらずお姉さんは無表情で立っていた。
「流石ノーパンのドーマ様。ではこちらへ」
「パンイチな……って、どっちにせよ嫌な二つ名だぜ」
かつてエルリンクに囚われた際にパンイチで脱獄したことから『パンイチのドーマ』という些か不本意なあだ名がついているんだよな。
これを機にノーパンのドーマって呼ばれるようになったら最悪だ。
ともあれ、なおもエルフのお姉さんについていくと、異質な小屋が見えてくる。
木造のその小屋の隙間には、びっしり苔が詰められている。
さらに屋根からは煙突が生えていて、モクモクと蒸気が発されているのだ。
「こ、これは……?」
「全てラーフ様のご指示通りですので」
エルフのお姉さんはどこからか葉を茂らせた木の枝を持ってきて、俺に渡す。
すると突然ドンドコ太鼓が鳴る。
それと同時に、ヒョロヒョロと笛の音も聞こえてきた。
小屋の中を、エルフのお姉さんが手で示す。
「入れ……ってことだよな」
恐る恐る小屋に入ると、中には熱気が充満していた。
もわっと熱い蒸気が体に纏わりつき、呼吸が苦しい。
小屋の中は板張りで、中央には何故か赤く熱せられた石の炉がある。
奥には長椅子が置かれており、そこに座って驚いた顔をしているのは……フローラだった。
半透明の前掛けタイプのエプロンみたいな薄っぺらい布を腰で縛った、謎スタイル。
正直スケスケで目のやり場に困る。
「これって……なんなの?」
俺がそう聞くと、フローラは「ぐぬぬ……」と唸った。
「何故ラウラではなく私がここに案内されたのかとは思ったのだが……手違いか?」
ラウラが? こんな熱気にぶち込んだら溶けそうだが。
「ともかく一度出てみるのじゃ」
そうフローラは口にしてから扉へ向かった。
だが――
「…………開かぬ」
「え?」
「ふむ、どうやらみそぎが終わるまで、出てはならぬようじゃ」
「だからみそぎって何!?」
フローラは即答しない。
しかし腕を組み、数秒黙ったあと、観念したように言った。
「いわゆる蒸し風呂じゃ。悪いものを落とすためのな。仕方がない、定式通りやるとするか」
蒸し……風呂? 風呂なのに水に入らないのか。
確かに全身から汗が噴き出して、体の中の悪いものがどんどん排出されている気はする。
なんて思っていたらフローラが急にバスローブの中に手を突っ込んでくるような形で、ペタペタと背中に触れてくる。
「うわあ、何するんだ!」
「何って、塩を揉みこんで肉を柔らかくするのじゃ」
「やっぱ食べようとしていないか!?」
そんなことはないらしい。
蒸気が霧のように舞う小部屋で、フローラはひたすら腕、背中、お腹、脚に塩を揉みこんでくる。
彼女の長い金色の髪がぺったりと背中に張り付いているのが見えた。
「はあ……はあ……」というフローラの呼吸音だけが聞こえてくる。
…………気まずっ!
「よし、これで良いかのう!」
「お、終わったのか?」
「次は石鹸を揉み込むのじゃ」
「まだあるのか……」
今度は石鹸の泡を揉み込むことで皮膚をしなやかにし、味わいをよくするらしい。
……ってやっぱり食う気じゃねえか!
フローラはどこからか石鹸を取り出すと手で泡立たせ、俺の背後に回る。
「んっ、なかなか泡立たないのう……んっ、こうか?」
フローラは何やら後ろで試行錯誤しているようだ。
にゅるにゅると奇妙な感触が背中を伝ったかと思えば、背中からフローラが抱き着いてきた。
フローラは全身に石鹸の泡を纏っているようで、互いの体同士を擦り合わせることで泡を揉み込もうとしているのだろう。
柔らかく、もちもちした感覚が石鹸とともに脳内に刷り込まれたところで、ようやくフローラは動きを止めた。
ふ、ふう。俺の理性も動きを止めるところだったぜ。
「さ、では水で流すぞ?」
フローラは俺の前に立つと、魔術で生み出した温水を俺にかけていく。
凛とした顔立ちは美男美女ぞろいのエルフの中でもひと際美しく、白く透明感のある肌に、曲線美を感じさせる滑らかなスタイル。黙っていれば、ポンコツエルフにはとても見えないくらい美人なんだよな。
……というかフローラの服、体にぴっとり張り付きすぎだろ。服を着ていないも同然じゃないか。
「どうかしたのか?」
フローラは気付いていないようだ。
ならば俺も知らぬふりをするのが礼儀というもの。
俺の目はもはや現実を見ていない。明日だけを見ているのだ!
「よし。あとは最後の儀礼じゃ!」
「ま、まだあるのか?」
「そうじゃ。あとはこれでお主をシバくのよ」
フローラはにっこりとしながら、例の木の枝を取り出した。
葉が茂っていて、団扇かあるいは鞭のようにも見える。
「え? シバかれるの? 俺が?」
「うむ。半死半生になるまで打つ!」
フローラは有無を言わさずピシャアンと枝を振った。
俺の背中に激痛が走る。
いや……そこまで痛くない。
むしろ……気持ちいい?
ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。
「もっと! もっと打ってくれ!」
ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。
「な、なんだこの感覚は!」
ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。ピシャアン。
「て、天国が見える……! ここが聖地か!」
「いかんいかん、やりすぎた」
そんなフローラの慌てたような声が聞こえた。
意識が遠のく……。
「わぶ!」
冷水をぶっかけられ、俺は目覚めた。
ここは、小屋の外か。
やり遂げた顔のフローラが、俺を団扇で扇いでくれている。
「これが『みそぎ』! どうじゃ、すっきりしたか?」
「あ、うん、どうなんだろ。よくわかんない」
「ええ!?」
フローラは心底驚いていた。
でもだって、途中から記憶が曖昧なんだもん。
ヘロヘロで会場に戻ると、肉を貪るラウラとイフがいた。
「どこいってたの?」
「いやあ、蒸し風呂にだな……」
「ふたりで?」
艶々になった俺とフローラを見比べたあと、ラウラの目になんとも寂しげな影が差した。
あらぬ思い違いをされているような……。
俺は一から経緯を説明した。
ラウラはジッと俺を見つめ、嘘はついていないと判断したようで、すぐに興味を食べ物に移した。
食い意地に助けられたような形である。
ちなみに『みそぎ』は本来俺とフローラでやるものじゃなかったらしい。
というのも、祭りも佳境に差し掛かろうかという頃に荊でできた冠を持ってきたラーフさんと話していたら、彼女はふとこう口にしたのだ。
「あら? フローラとドーマくんが結婚するんじゃないの?」
「ち、違うのじゃ! 道理でおかしいと思ったわ! 結婚するのはラウラとドーマと言っておったろう!」
確かにさっきもフローラは『手違いか?』なんて言っていたな。
俺は口を挟む。
「いや、俺たちも結婚はしないが」
どうやらフローラが俺とラウラをお祝いするべく祭りに呼んだところ、リーディンとラーフさんが勘違いしたらしい。
「ハッハッハ! それはすまなかったなあドーマくん! いやあ、てっきりドーマくんはうちの娘と結婚するものかと! いや、人間相手なら重婚でも別に構わないか?」
リーディンがそんなことを言うと、ラーフさんはにっこりと微笑んだ。
「そうね。既成事実さえあれば十分よ。ね、あなた?」
「げふんげふん」
リーディンは何かを思い出したのか、青い顔をしていた。
そんな間にもエルリンクの空を色とりどりの花火が彩っていく。
広場には様々な大道芸で技を競い合うエルフたち。テーブルにはあらゆる美味珍味が並ぶ。
ごちそうを食べ、蜂蜜酒を飲み、詩を朗誦し、ダンスを踊る。
それがエルフ族の祭りなのだ。
祭りも終盤に差し掛かると、今年一番の大きな獲物が運ばれてきた。
その肉が全員に配られる。
さらにグラスに入った特製の蜂蜜酒が渡された。
フローラが上機嫌に話す。
「祭りの最後は、このグラスをあの太陽神に掲げてこう言うのじゃ。『あなたに祝福を!』とな!そうすれば、太陽神ソールが私たちに祝福を返してくれるのじゃよ」
なるほど。祝福をやり取りするのか。
素敵な儀式じゃないか。
俺とラウラは顔を見合わせた。
そしてフローラとも視線を交わし、グラスを掲げた。
「「「あなたに祝福を!」」」
☆
ローデシナに冬が訪れ、辺りは白銀に染まった。
ルエナがローデシナにやってきたのは、そんな真冬のことだった。
「えへへ! 兄さん、来たよ」
扉を開けると、見目麗しい我が妹が猛吹雪の中、立っていた。
くりんとした目に愛嬌のある口元、そして自慢げにぶいっと突き出されたダブルピース。
猛吹雪が兄妹を包み込み、大自然さえも俺たちを祝福する。
ああ、我が妹よ……なんという天使。
この寂然としたローデシナに訪れたるは、この世に知らざる人なき天使なり。
「兄さんがなんか詠い出したよ!?」
「はいはい、寒いので早く閉めるのですよ」
「はッ!?」
危なかった。ニコラが正気に戻してくれなければ、雪と同化するところだった。
ルエナは頭にちょこんと乗った雪を払い、くるくるとマフラーを外してコートを脱ぐ。
それをニコラが受け取ると、弾んだ声を発しながら家の中に案内する。
「ご主人様の妹様……ようこそなのです!」
ニコラはスキップでリビングへ向かっていく。
数日前からニコラはこんな調子だった。
王都で俺たちだけルエナに会っていたことをずっと羨ましがっていたのだ。
その様子を見て、ルエナはくすりと微笑む。
「ふふ、兄さんの手紙で知ってたけど、可愛い妖精さんだね」
「ああ、ルエナは可愛い妖精さんのようだからな」
「ルエナの話はしていないんだよ?」
おっと。そうだったか?
リビングに入ると、家のメンバーが勢ぞろいして待っていた。
ラウラやサーシャとはすっかり既知の仲だが、フローラやノコとは初対面だ。
「は、初めまして! 兄さんの妹のルエナですっ!!」
カチンコチンになったルエナはぎこちなく挨拶をする。
みんなの前に立ち、緊張しているのだろう。
するとルエナの前にラウラがにゅるりと滑り込んできた。
「ひさしぶり。会いたかった」
「ラウちゃん! えへへ、私もだよー!」
二人は手を握り合い、抱擁を交わす。
その瞬間、家中に爽やかで優しい風が吹き、サーシャと俺は血反吐を吐いた。
「と、尊いわ……!」
「春? 春がもう来たのか!?」
「お主ら何をしておるのじゃ……?」
フローラはやれやれとため息をつく。
そうだ、フローラを紹介しないとな。
「そうそう、こっちはエルフ族のフローラだ」
「ふふん、ドーマの妹ということは私の妹も同じ! 私のことはフローラお姉さんと呼ぶのじゃ!」
自信満々にフローラはそんなことを言った。それが間違いだとも知らず。
ルエナは一瞬で冷めた表情になり、淡々と返す。
「ルエナの兄妹は、兄さんだけだよ……?」
フローラは俺を見た。
『どうすればいいのじゃ?』と言いたげだ。
……うん、フローラとはあんまり相性が良くないようだ。
ドンマイ! フローラ。
「グロウ! わふっ!」
ルエナの足元をイフがぱたぱたと駆け回る。
それに気付いたルエナは、「わあ!」と小さな悲鳴を上げてから、優しくイフの毛並みを撫でた。
「モフモフだねっ! このわんちゃん」
「一応虎だけどな」
「わふっ!」
イフは嬉しそうに尻尾を振る。魔物も恐れる伝説の白虎――という自身の設定はもう忘れたようだ。
ちなみにノコはソファーの陰に隠れてこちらを窺っている。人見知りな奴め。
まあルエナはもう数日いるんだ。そのうち打ち解けるだろう。
そのあとはみんなで食事をして、会話を交わし……なんてやっているうちに、夜は深まっていく。
俺は暖炉の前でうとうとしていた……ところに、風呂上がりのルエナがやってくる。
今ルエナは、可愛らしいフリル付きのパジャマを着ていた。
遠慮なく俺の膝に座ると、ルエナがぽすんともたれかかってきた。
石鹸の香りがふわっと鼻をくすぐる。
「兄さんの腕の中、相変わらず落ち着くなあ」
「そうか? ルエナは前より少し重くなったな」
「……兄さんの馬鹿」
「いててててて」
げしげしと足を踏んできた。
事実なのだから仕方ないだろう。
ルエナは眉を顰めつつ、俺を見上げる。
「兄さんのデリカシーのなさは、心配だよっ! こんなに女の人に囲まれてるのにねっ。でも……」
あれ? 心なしかルエナの目に光がなくなっていっているような……。
「そっか。今は兄さんと心臓が並んでるんだね。いっそのこと、一緒の心臓なら、ずっと離れずに済むのかな……」
なんか不気味なことまで言い出した。
汗が噴き出し、額に髪が張り付く。
まずい。俺は今、生殺与奪の権をルエナに握られているっ!
なんて戦慄していたのだが、ルエナはふっと笑ってから口を開く。
0
お気に入りに追加
5,299
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
逃げた先の廃墟の教会で、せめてもの恩返しにお掃除やお祈りをしました。ある日、御祭神であるミニ龍様がご降臨し加護をいただいてしまいました。
下菊みこと
恋愛
主人公がある事情から逃げた先の廃墟の教会で、ある日、降臨した神から加護を貰うお話。
そして、その加護を使い助けた相手に求婚されるお話…?
基本はほのぼのしたハッピーエンドです。ざまぁは描写していません。ただ、主人公の境遇もヒーローの境遇もドアマット系です。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。