時の番人〜現実と虚界を守りし者〜

胡蝶あやめ

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8ー⑤

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 「フィナちゃんの話からしてそれは、時の欠片が集まっている水晶玉に関係があると思うよ」

 「あの水晶玉にですか?」

 「そう」

 マスターは紙と三色のペンを持ってきてまずは紙に黒いペンで丸い円を書いて、真ん中に線を入れて赤と青のペンで色を塗ったの。

 「これって時の水晶玉ですよね」

 「そう、こっちの赤は虚界。青は現実の記憶を表している。人の記憶が2つあることで水晶玉の色も2つに別れ、時計塔の鐘の音で水晶玉も力を発揮され、虚界への扉が開く。その時、主に水晶玉の赤色の部分がエネルギーとして使われる。ここまでは分かるかい?」

 「はい」

 「そして時間が来ると使った分のエネルギーを戻すのに虚界から現実へと変わる。これが時の流れ。しかし、水晶玉には、もう1つ使ってはいけない力がある」

 黙ってマスターの話を聞いていた私。水晶玉の力、つまり時の流れについては私も知っていたの。時の番人に選ばれて力が強い人はそれなりの教育、まぁ、いわゆる勉強はしていたから。でも、水晶玉に使ってはいけない力があることは知らなかった。

 「マスター、使ってはいけない力とはなんですか?」

 「それは……人の願いを叶える道具として使ってはいけない」

 「人の願い……ですか?」

 「そう。もしかしたら黒い影は水晶玉には、人の願いを叶える力があると思っているのかも知れない。けど、それは間違えだ。人の願いを叶える為に人の記憶の欠片を集めているのだろう」

 「人の願い……欠片……まさか!」

 「どうしたの、フィナちゃん?」

 「今のマスターの話を聞いて思い出したことがあります」

 「なんだい?」

 「実は……こんなメールが流れて……」

 私はマスターに突然流れ出した差出人不明のメールについて説明をしたの。私の話を聞いてマスターの解答は。

 「間違いないね。それを送ったのは、黒い影で1人では大変だから黒い影じぶんを見つけた人に説明して欠片集めの仲間を増やそうとしているのかも知れないね」

 「そんな……」

 「今の黒い影はどちらの欠片を集めればいいのか、模索しているのかも知れないね」

 「欠片って……それは2つの記憶の事ですか?」

 「そうだよ。現実と虚界のどちらも。しかし、人から無理矢理……欠片を取ることで水晶玉のバランスが崩れ、不安定にある。不安定になれば、もちろん現実も虚界のどちらも不安定に。そして水晶玉が不安定で壊れてしまったら、両方の世界はもちろん、使った人もただでは済まないだろう。運悪く存在自体が消えてしまうだろう……」

 「消える……」

 「そう。だから水晶玉が不安定なる前になんとしても止めるんだよ、フィナちゃん」

 「はい。でも、マスターはどうして知っているんですか?」

 「僕がまだ時の番人だった頃に同じ現象があった。なんとか止めたし、酷い状況までは行かなかった。まぁ、未遂で終わった感じだよ」

 「そうですか……。ありがとうございます、マスター」

 「いいよ。僕のさっきの話したことをラインにも伝えたほうがいいかもしれないよ」

 「はい、そうします」

 椅子から立ち上がった私はカフェから出ようとした。
 ドアの近くに来てもう一度、マスターを見た。

 「マスターご馳走様でした。美味しかったです」

 「ありがとう。いつでもおいで。フィナちゃん、気を付けてね」
 
 「はい」

 カフェから出た私はラインのもとに向かったの。さっきマスターから聞いた話をラインにもするために。
 もし、出来なかったらあとですればいいかなと思った。だってもうそろそろ朝がやって来るなぁ~と思ったから。
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