日曜と水曜

あさかわゆめ

文字の大きさ
上 下
3 / 10

定休日の関係

しおりを挟む
ケンタは揚げ春巻を一つ俺のチキンライスの皿に乗せてから、いただきます、と汁なし麺に頭を下げた。
「え、くれるんだ」
「おお」
生返事で、丼の中身を混ぜる作業に入っている。俺は空腹で、チキンライスはもう半分以上なくなっていた。
「鶏肉、小さいのしかないけど、味見してみる?」
「ここよく来るから、俺はいいよ」
「ごめん、今日お昼食べられなくて腹減っててさあ」
ケンタは箸で麺を高く持ち上げては戻し、熱心にかき回しながら、俺をちらっと見た。
「仕事、忙しいんだ」
「たまたま打ち合わせと来客が重なって。ケンタさんは、どういう仕事なの?」
「まあ、接客業かな」
揚げ春巻を口に放り込んで、染み出す油を味わいながら、接客業について少し考える。ケンタはやっと食べ始めて、俺の視線に気づくと目元に笑いを浮かべた。
「揚げ春巻、素晴らしいっしょ」
「揚げ春巻、美味い」
彼が聞いてこないので、俺も仕事や住んでいる場所は質問しないようにしていた。しばらく黙って食べていた彼が箸を置き、水を飲んで、
「俺、店長やってる」
と言ったのは意外だった。
「へええ、店長さんなんだ。お店やってるんだ」
「そういうこと。水曜日が定休日」
「なるほどね」
「キヨは、土日休みだよなあ」
「そ、俺は会社員。基本は週末休み」
キョウと呼ぶのが、キヨに聞こえた。
「水曜日が休みって、不動産屋さんとか」
へーえ、と彼は愉快そうに声をあげた。
「鋭いじゃん」
「当たった?」
「どうかな」
ケンタも、俺の出方を見てあえて聞かないだけかもしれないという気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

処理中です...