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ちょっとだけ
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ドアが開く音の後、すぐにベッドが軋み、足元が沈み込んだ。
目を開けた時には、吉村さんが俺に馬乗りになっていた。
「えっ」
ドアから踊り場の明かりが差し込んで、顔は逆光でよく見えない。
「何か……どうしたんですか」
次の瞬間、吉村さんは俺の胸に崩れ落ちるようにもたれかかった。
「ちょっとだけ」
細い声だった。
「吉村さん」
返事はなく、しばらくして彼はふうっと息を吐いた。その息と体温がシャツ越しにひどく熱い。
俺は息を詰めて、喉元に突き上げる自分の鼓動を感じながら、天井を眺めた。
そのうち、吉村さんが俺の腕に手を掛けて体を起こし、一瞬だけ唇を重ねた。
髪が右頬を掠めて離れていくのを、腕を掴んで止める。
引き寄せて唇を塞ぎ、薄い舌を舐めると、小さく呻いて体重を預けてくる。片手を頸に回して舌を絡めた。体の奥に痛いほどの衝撃が走った。
「ちょっとだけって、何?」
唇が離れた隙に聞くと、吉村さんは何か言おうとするが声にならず、俺はキスを続ける。
次に目が合った時、かすかに震えを帯びた声で、
「ちょっとだけ、したかった」
と彼は呟いた。
「そんなの無理だろ」
俺は上半身を起こして、吉村さんと向かい合った。後ろにずり下がろうとするので肩を掴んで止めたが、彼は抵抗するでもなく、うっすら微笑んだ。
「無理か」
薄明かりに光る目で覗き込まれて、ぱっと火が燃え広がる。そのまま押し倒そうとする俺を、吉村さんは両手で押しとどめた。
「あっちの部屋で」
「は?」
「このベッド、狭いから」
彼の寝室のベッドは確かに広めだったが、何かする度にぎしぎしと音が響いた。
二人とも下だけ脱いで触り合い、
「吉村さん、男とこういうことするんですか?」
と途中で尋ねた。枕に背中を預けた彼はゆっくり目を開けて、
「こういうこと自体、そんなしない」
と言った。
「ほんとかよ」
俺の手の動きに合わせて揺れている腰を、もう片方の手で撫でる。
「こんなにエロいくせに」
彼は急に我に返った、という顔をして、
「エロいってお前、何つう言葉を使うんだ」
と言い、俺は笑ってしまう。
「そう言われても。エロいはエロいでしょ」
腰からTシャツの隙間に手を突っ込んで腹へ、胸の方へと滑らせると、彼は顔を背けた。
「口でしていいですか?」
返事がないので、更に脚を開かせた。ベッドのスプリングが歪んでいるのか、くぐもった妙な音が鳴り、同時に床が軋んでぎっと重い音がする。
それほど時間が経たずに、吉村さんの手が俺の頭に掛かる。
「もう、だめ」
口から出して舐め上げると、彼は息を詰まらせて、立てた膝に力を込めた。
「気持ちよさそ」
「それ、もう」
もう一度口に入れて、喉の奥まで飲み込む。荒い呼吸音に混ざって、途切れ途切れに喘ぎ声が漏れてくる。
「南、ほんとに」
彼は指に俺の髪を絡ませて強く掴む。脚が閉じてくるのを片手で押し開いた。
「離せって、ほんとにいく」
「いいですよ、いって」
「だって、あ、だめだって……」
そのまま続けていると、吉村さんは自分の手で口を塞ぎ、声を押し殺して達した。
口の中で全部受け止めてから、弛緩した白い腿を舐めると、あ、と声を上げて体を震わせた。
「かわいい」
腕で顔を隠してぐったり横たわった彼を見下ろして、つい声に出して言ってしまった。吉村さんは腕をずらして、片目で俺を見上げる。
「飲んじゃいました」
聞かれる前に答えると、吉村さんは手を伸ばして俺を引き寄せた。
「え、だから飲んだって」
「いい」
請われるまま唇を重ねる。薄い舌が遠慮がちに俺の口の中を探り、俺は彼の体を抱きしめた。
吉村さんの腕が俺の背中に回されて、やはり最初は遠慮がちに、次第に力を込めて俺を抱いた。
目を開けた時には、吉村さんが俺に馬乗りになっていた。
「えっ」
ドアから踊り場の明かりが差し込んで、顔は逆光でよく見えない。
「何か……どうしたんですか」
次の瞬間、吉村さんは俺の胸に崩れ落ちるようにもたれかかった。
「ちょっとだけ」
細い声だった。
「吉村さん」
返事はなく、しばらくして彼はふうっと息を吐いた。その息と体温がシャツ越しにひどく熱い。
俺は息を詰めて、喉元に突き上げる自分の鼓動を感じながら、天井を眺めた。
そのうち、吉村さんが俺の腕に手を掛けて体を起こし、一瞬だけ唇を重ねた。
髪が右頬を掠めて離れていくのを、腕を掴んで止める。
引き寄せて唇を塞ぎ、薄い舌を舐めると、小さく呻いて体重を預けてくる。片手を頸に回して舌を絡めた。体の奥に痛いほどの衝撃が走った。
「ちょっとだけって、何?」
唇が離れた隙に聞くと、吉村さんは何か言おうとするが声にならず、俺はキスを続ける。
次に目が合った時、かすかに震えを帯びた声で、
「ちょっとだけ、したかった」
と彼は呟いた。
「そんなの無理だろ」
俺は上半身を起こして、吉村さんと向かい合った。後ろにずり下がろうとするので肩を掴んで止めたが、彼は抵抗するでもなく、うっすら微笑んだ。
「無理か」
薄明かりに光る目で覗き込まれて、ぱっと火が燃え広がる。そのまま押し倒そうとする俺を、吉村さんは両手で押しとどめた。
「あっちの部屋で」
「は?」
「このベッド、狭いから」
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「吉村さん、男とこういうことするんですか?」
と途中で尋ねた。枕に背中を預けた彼はゆっくり目を開けて、
「こういうこと自体、そんなしない」
と言った。
「ほんとかよ」
俺の手の動きに合わせて揺れている腰を、もう片方の手で撫でる。
「こんなにエロいくせに」
彼は急に我に返った、という顔をして、
「エロいってお前、何つう言葉を使うんだ」
と言い、俺は笑ってしまう。
「そう言われても。エロいはエロいでしょ」
腰からTシャツの隙間に手を突っ込んで腹へ、胸の方へと滑らせると、彼は顔を背けた。
「口でしていいですか?」
返事がないので、更に脚を開かせた。ベッドのスプリングが歪んでいるのか、くぐもった妙な音が鳴り、同時に床が軋んでぎっと重い音がする。
それほど時間が経たずに、吉村さんの手が俺の頭に掛かる。
「もう、だめ」
口から出して舐め上げると、彼は息を詰まらせて、立てた膝に力を込めた。
「気持ちよさそ」
「それ、もう」
もう一度口に入れて、喉の奥まで飲み込む。荒い呼吸音に混ざって、途切れ途切れに喘ぎ声が漏れてくる。
「南、ほんとに」
彼は指に俺の髪を絡ませて強く掴む。脚が閉じてくるのを片手で押し開いた。
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「いいですよ、いって」
「だって、あ、だめだって……」
そのまま続けていると、吉村さんは自分の手で口を塞ぎ、声を押し殺して達した。
口の中で全部受け止めてから、弛緩した白い腿を舐めると、あ、と声を上げて体を震わせた。
「かわいい」
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「飲んじゃいました」
聞かれる前に答えると、吉村さんは手を伸ばして俺を引き寄せた。
「え、だから飲んだって」
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