2 / 10
№2 友人
しおりを挟む
「ええ~~~~!! そんな話になったの!?」
「ええ……そうなの」
ローラ・ツインズ伯爵令嬢とホルムズ・ナイトメア侯爵との婚約破棄が決まってから数日が経過した。ローラは友人の伯爵令嬢であるミリム・ペンドラゴンと会っていた。自分の近況報告などを兼ねてのことである。
「ホルムズ様との仲はあんまり良くないとは聞いていたけれど……まさか、婚約解消? 婚約破棄? になっているなんてね」
「私としても望んでいたわけじゃないわ……でも、これ以上耐えるのは厳しかったの」
「まあ、それはそうなんでしょうけれど……妹のレイラはホルムズ様に求婚されるわけでしょう?」
「ええ……そうなるわね」
ローラは婚約破棄が成立した時は、自由になれたことを嬉しく思っていたが、レイラの苦労を考えると罪悪感のようなものは拭えなかった。
「レイラには悪いことをしてしまったかもしれないわ……自分のことしか考えられずに……私は駄目な姉ね」
「あれだけ追い詰められていたんですもの。ある程度は仕方ないわよ。それに……」
「それに?」
「ホルムズ様はレイラの性格を好んでいるんでしょう? だったら二人が婚約したとしても、特に問題はないんじゃないの?」
「それは……まあ、確かにそうね」
レイラが納得すれば特に問題はない。この数日、ローラは妹のレイラとは会えていない。彼女は別荘地に泊まりに行っているからだ。話として連絡は執事等を通して伝わっているはずだが、そういった意味合いでもローラ少し不安を感じていた。
「ミリム……レイラには私から謝罪しておくわ」
「そんなに気にし過ぎないようにね。ローラの悪い癖よ、そういうところは」
過ぎたことをいつまでも引きずってしまう……ローラにはそういう癖があった。反省出来る部分が多いのでプラスにはたらく時が多いが、今回はマイナスに働いていると言えるだろうか。友人のミリムはその部分を的確に指摘している。
同じ年齢の二人ではあるが、どちらかと言えばミリムの方がお姉さん気質があると言えるだろう。それは、彼女が既に結婚目前まで進んでいることと連動している。
「ありがとうミリム……なんだか、少し元気が出たわ。あ、もうすぐミリム・リシュート夫人になるんだったわね」
「気にしないで。私に関してはその通りね」
ミリムはリシュート公爵の下に嫁ぐことになっている。ミリム・リシュート公爵夫人の誕生であった。
「これからは敬語で話さないといけなくなるわね。リシュート家と言えば、ハイエルド王国の中でもトップクラスの貴族家系だもの……その夫人って言ったら凄いことだわ」
「肩書きが変わるだけよ、私は何も変わらないわ。第一、第三夫人だからね? リシュート公爵としては愛人に近い存在かも」
「それって幸せなの?」
「貴族令嬢は時には幸せでない婚約もするでしょう? ただ、私の場合は幸せな部類だと思うわ。マルクス・リシュート公爵は私の外見などを気に入ってくれたわけだから。恋愛結婚に近いからね」
「なるほど……そういう考え方もあるのね」
それも幸せの形の1つだ。ミリムからそう言われ、ローラは勉強になった気がしていた。今の自分ではなかなかそこまで割り切ることは出来ない為に、彼女のことを尊敬しているのだ。
「まあ、ローラが同じような結婚をする必要はないと思うわ。色んな愛の形だってあるんだし」
「ありがとう、ミリム。少し勉強になったわ」
「どういたしまして。また、結果の方は聞かせてね」
「ええ、また報告するわ」
彼女達二人はその後もしばらく談笑を続けることになったが、話題はまったく違うものになっていた。ローラ自身はやるべきことが、しっかりと分かったので、元気さを取り戻していた。それを見たミリムは彼女の心境を読み、微笑みで返す。
二人は互いになくてはならない存在でもあった。
屋敷に戻った後は、妹のレイラと話をしよう……ローラの心の中にはそんな決意が芽生えたのだ。
「ええ……そうなの」
ローラ・ツインズ伯爵令嬢とホルムズ・ナイトメア侯爵との婚約破棄が決まってから数日が経過した。ローラは友人の伯爵令嬢であるミリム・ペンドラゴンと会っていた。自分の近況報告などを兼ねてのことである。
「ホルムズ様との仲はあんまり良くないとは聞いていたけれど……まさか、婚約解消? 婚約破棄? になっているなんてね」
「私としても望んでいたわけじゃないわ……でも、これ以上耐えるのは厳しかったの」
「まあ、それはそうなんでしょうけれど……妹のレイラはホルムズ様に求婚されるわけでしょう?」
「ええ……そうなるわね」
ローラは婚約破棄が成立した時は、自由になれたことを嬉しく思っていたが、レイラの苦労を考えると罪悪感のようなものは拭えなかった。
「レイラには悪いことをしてしまったかもしれないわ……自分のことしか考えられずに……私は駄目な姉ね」
「あれだけ追い詰められていたんですもの。ある程度は仕方ないわよ。それに……」
「それに?」
「ホルムズ様はレイラの性格を好んでいるんでしょう? だったら二人が婚約したとしても、特に問題はないんじゃないの?」
「それは……まあ、確かにそうね」
レイラが納得すれば特に問題はない。この数日、ローラは妹のレイラとは会えていない。彼女は別荘地に泊まりに行っているからだ。話として連絡は執事等を通して伝わっているはずだが、そういった意味合いでもローラ少し不安を感じていた。
「ミリム……レイラには私から謝罪しておくわ」
「そんなに気にし過ぎないようにね。ローラの悪い癖よ、そういうところは」
過ぎたことをいつまでも引きずってしまう……ローラにはそういう癖があった。反省出来る部分が多いのでプラスにはたらく時が多いが、今回はマイナスに働いていると言えるだろうか。友人のミリムはその部分を的確に指摘している。
同じ年齢の二人ではあるが、どちらかと言えばミリムの方がお姉さん気質があると言えるだろう。それは、彼女が既に結婚目前まで進んでいることと連動している。
「ありがとうミリム……なんだか、少し元気が出たわ。あ、もうすぐミリム・リシュート夫人になるんだったわね」
「気にしないで。私に関してはその通りね」
ミリムはリシュート公爵の下に嫁ぐことになっている。ミリム・リシュート公爵夫人の誕生であった。
「これからは敬語で話さないといけなくなるわね。リシュート家と言えば、ハイエルド王国の中でもトップクラスの貴族家系だもの……その夫人って言ったら凄いことだわ」
「肩書きが変わるだけよ、私は何も変わらないわ。第一、第三夫人だからね? リシュート公爵としては愛人に近い存在かも」
「それって幸せなの?」
「貴族令嬢は時には幸せでない婚約もするでしょう? ただ、私の場合は幸せな部類だと思うわ。マルクス・リシュート公爵は私の外見などを気に入ってくれたわけだから。恋愛結婚に近いからね」
「なるほど……そういう考え方もあるのね」
それも幸せの形の1つだ。ミリムからそう言われ、ローラは勉強になった気がしていた。今の自分ではなかなかそこまで割り切ることは出来ない為に、彼女のことを尊敬しているのだ。
「まあ、ローラが同じような結婚をする必要はないと思うわ。色んな愛の形だってあるんだし」
「ありがとう、ミリム。少し勉強になったわ」
「どういたしまして。また、結果の方は聞かせてね」
「ええ、また報告するわ」
彼女達二人はその後もしばらく談笑を続けることになったが、話題はまったく違うものになっていた。ローラ自身はやるべきことが、しっかりと分かったので、元気さを取り戻していた。それを見たミリムは彼女の心境を読み、微笑みで返す。
二人は互いになくてはならない存在でもあった。
屋敷に戻った後は、妹のレイラと話をしよう……ローラの心の中にはそんな決意が芽生えたのだ。
3
お気に入りに追加
1,794
あなたにおすすめの小説
私には何もありませんよ? 影の薄い末っ子王女は王の遺言書に名前が無い。何もかも失った私は―――
西東友一
恋愛
「遺言書を読み上げます」
宰相リチャードがラファエル王の遺言書を手に持つと、12人の兄姉がピリついた。
遺言書の内容を聞くと、
ある兄姉は周りに優越を見せつけるように大声で喜んだり、鼻で笑ったり・・・
ある兄姉ははしたなく爪を噛んだり、ハンカチを噛んだり・・・・・・
―――でも、みなさん・・・・・・いいじゃないですか。お父様から贈り物があって。
私には何もありませんよ?
お姉さまとの真実の愛をどうぞ満喫してください
カミツドリ
ファンタジー
「私は真実の愛に目覚めたのだ! お前の姉、イリヤと結婚するぞ!」
真実の愛を押し通し、子爵令嬢エルミナとの婚約を破棄した侯爵令息のオデッセイ。
エルミナはその理不尽さを父と母に報告したが、彼らは姉やオデッセイの味方をするばかりだった。
家族からも見放されたエルミナの味方は、幼馴染のローレック・ハミルトン公爵令息だけであった。
彼女は家族愛とはこういうものだということを実感する。
オデッセイと姉のイリヤとの婚約はその後、上手くいかなくなり、エルミナには再びオデッセイの元へと戻るようにという連絡が入ることになるが……。
姉妹差別の末路
京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します!
妹嫌悪。ゆるゆる設定
※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
初恋の幼馴染に再会しましたが、嫌われてしまったようなので、恋心を魔法で封印しようと思います【完結】
皇 翼
恋愛
「昔からそうだ。……お前を見ているとイライラする。俺はそんなお前が……嫌いだ」
幼馴染で私の初恋の彼――ゼルク=ディートヘルムから放たれたその言葉。元々彼から好かれているなんていう希望は捨てていたはずなのに、自分は彼の隣に居続けることが出来ないと分かっていた筈なのに、その言葉にこれ以上ない程の衝撃を受けている自分がいることに驚いた。
「な、によ……それ」
声が自然と震えるのが分かる。目頭も火が出そうなくらいに熱くて、今にも泣き出してしまいそうだ。でも絶対に泣きたくなんてない。それは私の意地もあるし、なによりもここで泣いたら、自分が今まで貫いてきたものが崩れてしまいそうで……。だから言ってしまった。
「私だって貴方なんて、――――嫌いよ。大っ嫌い」
******
以前この作品を書いていましたが、更新しない内に展開が自分で納得できなくなったため、大幅に内容を変えています。
タイトルの回収までは時間がかかります。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる