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第十一章 客来の予兆
第二百十六話 客来の予兆(13)
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「し、仕事です」
やましいことが満載なので思わず視線をそらす。仕事は仕事だが、今とても個人的な事情で質問をしていたところだ。隣で案内役が恐れ多いといわんばかりに腰を低くしている。エリッツもラヴォート殿下の相変わらずの眩しさに視線を戻せない。
「仕事?」
案の定、ラヴォート殿下は大袈裟な声をあげる。
「あんた、第二王子のラヴォートか」
そしてシュクロはまた偉そうな口の利き方をしていた。ラヴォート殿下は意に介さずといった様子でちらりとシュクロを見ただけで、空いている椅子に優雅に腰掛ける。横柄といえばそうだが、こちらは立ち居振る舞いが上品である。これが本当の王族というものだろう。エリッツは納得したようにひとつ頷いた。やはりシュクロは下品な感じだ。
そういえば近くにダフィットがいないのはめずらしい。城内とはいえ、誰も共をつけずに歩いていたのだろうか。エリッツは思わず辺り見渡した。殿下が下品な外国人のシュクロと同席するのは大丈夫なのか不安だ。
「おい。それで何を話していたんだ? 行き先は決まったか?」
きょろきょろしているエリッツにいつも通り不機嫌そうな声をあげる。間にシェイルがいないと少し緊張する。
「いえ、あの……」
シュクロを連れ出す話はまだ全然進んでいない。
「今エチェット・カウラニーについていろいろと聞かれていた」
いつも人の話など無視するくせに何故こんなときに限ってシュクロは素直に状況を説明するのか。
「ああ、なるほどな」
すべてを理解したとばかりにラヴォート殿下は蔑むような目でエリッツを見る。
殿下も殿下でさっきはシュクロを無視していたのに、なぜここでは無視しないのだろう。
シュクロはそんなラヴォート殿下とエリッツを交互に見てはっとしたように手を打った。
「そういうことか。なんか様子が変だと思ったら、あんた、上官に劣情を抱いてるわけか」
「れっ……!」
エリッツは思わず立ち上がる。
「そんな下品な言い方をしないでください! もう本当に存在が下品なんですよ、シュクロさんは」
「なんだと。ヤギの赤ちゃんを食っちまうぞ」
「ひどい! 鬼畜!」
そう叫びつつもエリッツはやはりヤギの赤ちゃんは「食糧」に見えるのかと内心どきりとする。
「随分と仲がよくなったじゃないか。しかしな、客人の言う通り、お前は目つきがいやらしい」
ラヴォート殿下までそんなことを言う。なぜエリッツが二人から標的にされるような構図になっているのか。
「おれはただ、エチェットさんがシェイルの好みのタイプの女性かどうかちょっと興味があったというか、それくらいの軽い気持ちで……」
しまった。言えばいうほど深みにはまる感覚がする。ラヴォート殿下は片眉を大きくあげて腕を組んだ。
「好みのタイプではないだろうな」
殿下はあっさりと否定した。
「……そう……なんですか?」
エリッツはすとんと椅子に腰をおろした。非常に興味のある話だ。しかもラヴォート殿下が言うのだから信憑性がある。
「俺も違うと思うな」
なぜかシュクロまでそんなことを言う。シェイルの何を知っているつもりなんだとエリッツはイラ立ったが、ラヴォート殿下の話が気になるのでとりあえずここは無視する。
「あの、シェイルの好みのタイプってわかるんですか?」
「どれほど一緒にいると思ってるんだ」
エリッツは思わず身を乗り出す。
「どういう方がシェイルのタイプなんでしょうか」
ラヴォート殿下は真面目な顔で大きな球体を抱え込むようなポーズで両手を前に出す。
「こう、胸がふくよかな感じで……」
「ええっ。そっちですか」
エリッツは思わず自分の胸に両手をそえた。
「ああ、わかる。好きそう」
シュクロが余計な合いの手を入れる。
「それから年上」
「年上!」
さらなるラヴォート殿下の言葉に絶望する。すべてがエリッツの属性とは正反対だ。
「年上というか……母親」
付け足すような殿下の言葉にシュクロが盛大に吹き出す。
「お母さん! 好きそう」
シュクロは横でげらげらと下品に笑っている。
「殿下、真面目に話してます?」
だが殿下は無表情でエリッツの背後をじっと見ていた。先ほどまでとは様子が違う。
「殿下? 後ろに何か?」
エリッツは不安になってそっと振り返る。
そこには盛大に眉根を寄せたダフィットが無言で立っていた。すさまじい威圧感だ。
「わっ」
エリッツは思わず椅子から転げ落ちそうになる。
「ラヴォート様、子供ではないんですから仕事中に抜け出すような真似はおやめください」
そしてついでといわんばかりにエリッツを虫でも見るような目で見てくる。今回はさすがに悪いことはしてない。いや、仕事中に関係ない話はしていたが、ダフィットには気づかれていないはず。今、しょうもない話をしていたのはラヴォート殿下だ。
「休憩が必要だとおっしゃってくだされば、散歩なり、お茶の準備なり手配させていただきます。勝手に部屋を抜け出すなんて……」
ダフィットは呆れたようにゆっくりと首をふっている。それからまたエリッツをちらりと見て舌打ちをした。
え? 自分が悪いの?
確かにラヴォート殿下とあやしげな異国人であるシュクロを同席させるのはいかがなものかと思ったのは確かだが、だからといってどうすればよかったのか。
「ちょっと外の空気を吸ってすぐに戻るつもりだったんだがな」
ラヴォート殿下はそう言うなり、ちらりとエリッツを見る。なんかエリッツのせいで散歩が長引いたみたいな感じになっている。
「あんたもロイか」
シュクロは誰に対しても無礼だ。ダフィットはシュクロを見てやはり眉間にしわを寄せる。来訪が早すぎる使者の秘書のせいでみんなが仕事に追われているのだから、嫌な顔をされるのはいた仕方ないだろう。しかしダフィットは再度エリッツに視線を戻して舌打ちをした。
「早くこの客人をどこかへお連れしろ。どこでもいいだろう」
そうだった。それがエリッツたちの仕事だった。
「いや、その、どこでもというのはちょっと。せっかくなのでレジスでもおもしろい場所というか、一応希望とかもあるでしょうし」
ダフィットにすごまれると弱い。
「そうだな……」
そんな窮地を救ってくれたのは意外にもシュクロだった。ポケットから小さな帳面を取り出すと、何かのメモを確認しつつ口を開く。
「レジスの田舎の風景が見たい。ルグイラと気候が違う方がおもしろいから北の方がいいな。森や山というよりは小さな町くらいの感じだ。人々の様子とか生活とか、そういうのにも興味がある。ずっと一つの町にとどまるよりは少し……旅がしたいな。セシ族の遺跡があるという話を聞いたことがある。それも見たい。あと、有名な焼き物の産地があるよな。そこも。後は、そうだな。まだいろいろとあるんだが……」
シュクロは帳面を繰りながら訥々と述べている。あまりに希望が詳細でかつ流ちょうに話すので、エリッツは少なからず驚いていた。全然興味がないような素振りだったが、ここへ来る前からレジスのことを調べていたみたいだ。
ふと見ると、なぜかラヴォート殿下とダフィットはシュクロではなくエリッツの方を見ている。
「あの、では、そういう方向で話を進めますけど、いいでしょうか」
ラヴォート殿下とダフィットははっとしたように顔を見合わせた。
「本当にこいつが何とかするとはな」
ラヴォート殿下は満足そうな顔をしている。いつも蔑まれているのでちょっと気持ちが悪い。
「あの方がそう判断されたのですから、当然そうなるでしょう」
ダフィットは当たり前だというような顔でそんなことを言っている。もしかしてシェイルは事前にエリッツが客人の旅行をなんとかするということをこの二人に宣言していたのだろうか。
「――よし。上出来だ。希望の行き先を書類にまとめて提出しろ」
ラヴォート殿下は晴れ晴れとした顔でさっと立ちあがると、執務室のある方へと歩いてゆく。それを追うように無言でダフィットが続いた。
二人の姿が完全に見えなくなってから、シュクロはぱたんと帳面を閉じた。
「あんたの手柄になったのか、これ。なんか癪だな」
シュクロは本当につまらなそうに上体をそらせて空を見る。
「シュクロさん、おれはいやらしい感じのご褒美ももらえるかもしれません」
「はぁ?」
「ありがとうございます」
「あんた、本当に目つきがいやらしいな」
やましいことが満載なので思わず視線をそらす。仕事は仕事だが、今とても個人的な事情で質問をしていたところだ。隣で案内役が恐れ多いといわんばかりに腰を低くしている。エリッツもラヴォート殿下の相変わらずの眩しさに視線を戻せない。
「仕事?」
案の定、ラヴォート殿下は大袈裟な声をあげる。
「あんた、第二王子のラヴォートか」
そしてシュクロはまた偉そうな口の利き方をしていた。ラヴォート殿下は意に介さずといった様子でちらりとシュクロを見ただけで、空いている椅子に優雅に腰掛ける。横柄といえばそうだが、こちらは立ち居振る舞いが上品である。これが本当の王族というものだろう。エリッツは納得したようにひとつ頷いた。やはりシュクロは下品な感じだ。
そういえば近くにダフィットがいないのはめずらしい。城内とはいえ、誰も共をつけずに歩いていたのだろうか。エリッツは思わず辺り見渡した。殿下が下品な外国人のシュクロと同席するのは大丈夫なのか不安だ。
「おい。それで何を話していたんだ? 行き先は決まったか?」
きょろきょろしているエリッツにいつも通り不機嫌そうな声をあげる。間にシェイルがいないと少し緊張する。
「いえ、あの……」
シュクロを連れ出す話はまだ全然進んでいない。
「今エチェット・カウラニーについていろいろと聞かれていた」
いつも人の話など無視するくせに何故こんなときに限ってシュクロは素直に状況を説明するのか。
「ああ、なるほどな」
すべてを理解したとばかりにラヴォート殿下は蔑むような目でエリッツを見る。
殿下も殿下でさっきはシュクロを無視していたのに、なぜここでは無視しないのだろう。
シュクロはそんなラヴォート殿下とエリッツを交互に見てはっとしたように手を打った。
「そういうことか。なんか様子が変だと思ったら、あんた、上官に劣情を抱いてるわけか」
「れっ……!」
エリッツは思わず立ち上がる。
「そんな下品な言い方をしないでください! もう本当に存在が下品なんですよ、シュクロさんは」
「なんだと。ヤギの赤ちゃんを食っちまうぞ」
「ひどい! 鬼畜!」
そう叫びつつもエリッツはやはりヤギの赤ちゃんは「食糧」に見えるのかと内心どきりとする。
「随分と仲がよくなったじゃないか。しかしな、客人の言う通り、お前は目つきがいやらしい」
ラヴォート殿下までそんなことを言う。なぜエリッツが二人から標的にされるような構図になっているのか。
「おれはただ、エチェットさんがシェイルの好みのタイプの女性かどうかちょっと興味があったというか、それくらいの軽い気持ちで……」
しまった。言えばいうほど深みにはまる感覚がする。ラヴォート殿下は片眉を大きくあげて腕を組んだ。
「好みのタイプではないだろうな」
殿下はあっさりと否定した。
「……そう……なんですか?」
エリッツはすとんと椅子に腰をおろした。非常に興味のある話だ。しかもラヴォート殿下が言うのだから信憑性がある。
「俺も違うと思うな」
なぜかシュクロまでそんなことを言う。シェイルの何を知っているつもりなんだとエリッツはイラ立ったが、ラヴォート殿下の話が気になるのでとりあえずここは無視する。
「あの、シェイルの好みのタイプってわかるんですか?」
「どれほど一緒にいると思ってるんだ」
エリッツは思わず身を乗り出す。
「どういう方がシェイルのタイプなんでしょうか」
ラヴォート殿下は真面目な顔で大きな球体を抱え込むようなポーズで両手を前に出す。
「こう、胸がふくよかな感じで……」
「ええっ。そっちですか」
エリッツは思わず自分の胸に両手をそえた。
「ああ、わかる。好きそう」
シュクロが余計な合いの手を入れる。
「それから年上」
「年上!」
さらなるラヴォート殿下の言葉に絶望する。すべてがエリッツの属性とは正反対だ。
「年上というか……母親」
付け足すような殿下の言葉にシュクロが盛大に吹き出す。
「お母さん! 好きそう」
シュクロは横でげらげらと下品に笑っている。
「殿下、真面目に話してます?」
だが殿下は無表情でエリッツの背後をじっと見ていた。先ほどまでとは様子が違う。
「殿下? 後ろに何か?」
エリッツは不安になってそっと振り返る。
そこには盛大に眉根を寄せたダフィットが無言で立っていた。すさまじい威圧感だ。
「わっ」
エリッツは思わず椅子から転げ落ちそうになる。
「ラヴォート様、子供ではないんですから仕事中に抜け出すような真似はおやめください」
そしてついでといわんばかりにエリッツを虫でも見るような目で見てくる。今回はさすがに悪いことはしてない。いや、仕事中に関係ない話はしていたが、ダフィットには気づかれていないはず。今、しょうもない話をしていたのはラヴォート殿下だ。
「休憩が必要だとおっしゃってくだされば、散歩なり、お茶の準備なり手配させていただきます。勝手に部屋を抜け出すなんて……」
ダフィットは呆れたようにゆっくりと首をふっている。それからまたエリッツをちらりと見て舌打ちをした。
え? 自分が悪いの?
確かにラヴォート殿下とあやしげな異国人であるシュクロを同席させるのはいかがなものかと思ったのは確かだが、だからといってどうすればよかったのか。
「ちょっと外の空気を吸ってすぐに戻るつもりだったんだがな」
ラヴォート殿下はそう言うなり、ちらりとエリッツを見る。なんかエリッツのせいで散歩が長引いたみたいな感じになっている。
「あんたもロイか」
シュクロは誰に対しても無礼だ。ダフィットはシュクロを見てやはり眉間にしわを寄せる。来訪が早すぎる使者の秘書のせいでみんなが仕事に追われているのだから、嫌な顔をされるのはいた仕方ないだろう。しかしダフィットは再度エリッツに視線を戻して舌打ちをした。
「早くこの客人をどこかへお連れしろ。どこでもいいだろう」
そうだった。それがエリッツたちの仕事だった。
「いや、その、どこでもというのはちょっと。せっかくなのでレジスでもおもしろい場所というか、一応希望とかもあるでしょうし」
ダフィットにすごまれると弱い。
「そうだな……」
そんな窮地を救ってくれたのは意外にもシュクロだった。ポケットから小さな帳面を取り出すと、何かのメモを確認しつつ口を開く。
「レジスの田舎の風景が見たい。ルグイラと気候が違う方がおもしろいから北の方がいいな。森や山というよりは小さな町くらいの感じだ。人々の様子とか生活とか、そういうのにも興味がある。ずっと一つの町にとどまるよりは少し……旅がしたいな。セシ族の遺跡があるという話を聞いたことがある。それも見たい。あと、有名な焼き物の産地があるよな。そこも。後は、そうだな。まだいろいろとあるんだが……」
シュクロは帳面を繰りながら訥々と述べている。あまりに希望が詳細でかつ流ちょうに話すので、エリッツは少なからず驚いていた。全然興味がないような素振りだったが、ここへ来る前からレジスのことを調べていたみたいだ。
ふと見ると、なぜかラヴォート殿下とダフィットはシュクロではなくエリッツの方を見ている。
「あの、では、そういう方向で話を進めますけど、いいでしょうか」
ラヴォート殿下とダフィットははっとしたように顔を見合わせた。
「本当にこいつが何とかするとはな」
ラヴォート殿下は満足そうな顔をしている。いつも蔑まれているのでちょっと気持ちが悪い。
「あの方がそう判断されたのですから、当然そうなるでしょう」
ダフィットは当たり前だというような顔でそんなことを言っている。もしかしてシェイルは事前にエリッツが客人の旅行をなんとかするということをこの二人に宣言していたのだろうか。
「――よし。上出来だ。希望の行き先を書類にまとめて提出しろ」
ラヴォート殿下は晴れ晴れとした顔でさっと立ちあがると、執務室のある方へと歩いてゆく。それを追うように無言でダフィットが続いた。
二人の姿が完全に見えなくなってから、シュクロはぱたんと帳面を閉じた。
「あんたの手柄になったのか、これ。なんか癪だな」
シュクロは本当につまらなそうに上体をそらせて空を見る。
「シュクロさん、おれはいやらしい感じのご褒美ももらえるかもしれません」
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