【R18】逆上がりの夏の空

藤原紫音

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第21話「露杏奈が秘密を告白すること」

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 八月二十日火曜日、その日は夏休み唯一の登校日だった。他の学校には夏休みの登校日なんてないのに、どうしてぼくたちの学校に登校日があるのか不思議だった。

 教室は日焼けした子供たちが仲のいい子どうしで集まって、どこに旅行に行ったとか、キャンプしたとか、花火観に行ったとか、遊園地に行ったとか、思い出話を交わす。そんな中、ぼくと露杏奈ろあな、唯、莉緒菜りおな陽菜ひなの五人はまったく日焼けもせず、白い肌のまま、窓際のぼくと露杏奈の席に集まって、菱田梨衣菜ひしだりいなの撮影のことを話し合っていた。梨衣菜が夏休みの最後に旅行に連れて行ってくれるという話。ぼくと露杏奈はともかく、唯たちは外泊するのが難しい。

 あの日以来、露杏奈は朝方帰宅して、昼前には着替えて戻ってきて、翌朝までセックスに溺れるという生活を送っていた。

 露杏奈のお父さんとお母さんは離婚調停中で、露杏奈の親権を巡って話し合いをしていた。露杏奈のお父さんは既に別居していて、お母さんは夜の仕事をしていたから、ほとんど家にいないらしい。お母さんはお父さん以外に外に男を作っていて、何日も帰らないことがある。そういうとき、露杏奈は連日ぼくの家に留まり続けたから、ぼくは二人目の妹ができたような気がした。
 ぼくは露杏奈を連れて病院にお母さんのお見舞いに行き、露杏奈を紹介した。お母さんは「こんな綺麗な子をお嫁さんに貰えたらねえ」と言って、亜香里は「お兄ちゃんと結婚してよ」と迫り、ぼくは具体的に妄想を巡らせ、露杏奈は赤くなっていた。
 露杏奈を連れて、あの長い商店街を歩くと、男女問わず多くの人が振り返る。ハーフやクオーターは今はそれほど珍しくないのだけど、露杏奈はひとをハッとさせる美しさと、子供らしくない憂いがあった。

 快活なだけではない落ち込んでいくような陰を抱えた彼女は、向き合ってつながっているとき「乃蒼くんはあたしとおなじだね」と呟いた。どのようにおなじなのかと、何度か尋ねたのだけど、「雨が降りそうな曇り空に向かって大声で泣いているのに、風が強くて声が聞こえない感じ」と表現しただけだった。じぶんが感じたことを内省的な言葉でつくろううと、じぶんが感じたはずの気持ちはその言葉の檻に閉じ込められてしまうから、そういうわかりにくい暗喩あんゆで誤魔化してしまう。そういう臆病なところはぼくとおなじだったけれど、例え話はだれかの頭で再生されるときに変質するのだから、伝えるという機能をうしなっていることを、露杏奈は気づいているのかいないのか。

 城島蒼汰きじまそうたがぼくたちの席に走ってきて、「お前らどっか行ったの? 真っ白じゃん」と言う。
「蒼汰? 真っ黒じゃん、誰かわかんなかった。あんたなんでそんなに焦げてるの?」と唯が笑う。
「先月湘南行って、先週沖縄行ったんだよ。ほら見て、皮剥けてる」
 蒼汰が剥いた皮を陽菜のワンピースに投げつける。
「厭、汚い。ちょっとやめてー」
 陽菜が蒼汰の頭をはたき、蒼汰は亮二りょうじとユウナたちのところへ走り去る。落ち着きがない。

 ぼくの机に腰掛けた唯が上履きを脱いで、片膝を立てる。ぴったりしたショーツが丸見え。ぼくの背中に立つ莉緒菜がぼくのシャツの上から乳首を指先で弾く。陽菜は露杏奈に椅子の上で背中を抱かれ、露杏奈は陽菜のキャミに手を入れて胸を撫でる。そんなふうに絡み合うぼくたちに視線を向ける子はいない。みんな好き勝手に過ごしている。小学生ってこんなに純粋だったっけ。

「梨衣菜さんがお母さんに連絡してくれるなら、多分行けると思うけど」と陽菜が言う。
「ウチは無理だよ、その日、家族で小豆島しょうどしまに行くから」
 莉緒菜がぼくを指先で愛撫しながら言う。莉緒菜は前から家族旅行に行くと言っていたから仕方がない。ギャル顔の莉緒菜がいちばん家族思いで、セックスよりお母さんとの約束を優先する。
「唯は?」とぼくが訊く。
「陽菜ちゃんが行くなら多分大丈夫だよ。ママ友だし」
「どこ行くか聞いてる?」
「伊豆って言ってたけど、わかんない。ウチらは、エッチできればどこでもいいけどね」と唯。
 露杏奈が陽菜の肩越しに提案する。
「あたし、海より山のほうがいい」
「山?」
 唯が首を傾げる。
「だって、海って日焼けするでしょ……」
「あーそっか、露杏奈ちゃんは日焼けNGだもんね」
「そういうわけじゃないけど、あたし焼けずに赤くなってめちゃくちゃ痛いから……」
「じゃあ、梨衣菜さんに言ってみる。まだ予定だけで、ホテルとか取ってないはずだし」
「ホテルより旅館がいい。みんなで同じ部屋で寝たいじゃん」
 露杏奈が言うと、莉緒菜が「あたしもそっちがいいなあ」と羨む。
 教室に梅津先生が入ってくる。唯たちは自分の席に戻る。朝の会が始まると、露杏奈はぼくに椅子を寄せて、脚を伸ばして、脹脛ふくらはぎこすり合わせる。ぼくたちは机の下でセックスを始める。

 * * *

 火曜日だけど、亜香里はピアノ教室を予約していた。

 今週末の土曜日は菱田梨衣菜が撮影旅行に連れて行ってくれるから、登校日の今日にピアノ教室の予定を変更した。露杏奈はぼくと同じ集団下校の列に加わり、列から離れる時もみせつけるようにぼくの腕を引いた。周りの子は何も言わなかったけれど、亮二がいぶかしげな眼差しを向けた。

 マンションのエレベータに乗ると、ぼくと露杏奈はキスをする。ぼくは露杏奈のワンピースの裾からショーツの中に手を滑り込ませ、濡れた割れ目に中指を沈める。露杏奈はぼくのシャツに手を入れて、ハーフパンツから飛び出したおちんちんをマッサージする。
「ぼく、露杏奈とつきあってるようにみえたかも」
「いいじゃん、実際めちゃくちゃエッチしてるんだし……」
 エレベータを降りて部屋に入ると、ぼくたちはランドセルを下ろして服を脱ぎ、シャワーも浴びずにベッドに飛び乗って愛し合い始める。ぼくにお尻を向けて覆いかぶさった露杏奈がおちんちんを呑み込み、ぼくは肉色の割れ目を指で拡げてびしょ濡れの粘膜に舌を這わせる。亜香里や唯たちより味も匂いも濃くて、彼女がぼくたちとは違う人種なのだと感じる。
 露杏奈とこういう関係になる前からその香りに気づいていたけれど、その匂いはぼくの性欲に直結していた。露杏奈と一緒にいると勃起がおさまらず、他の子たちともいつもより激しく求め合い、全身が敏感になった。露杏奈と結ばれてからセックスの時間も回数も増え、プロテインだけでなくアミノ酸粉末も飲むようになり、精液が著しく増えた。ぼくは露杏奈のことが好きだったけれど、こんなふうにセックスしたいという情欲ではなくて、もっと純粋な気持ちだったはずだ。どこで間違ったかわからないけれど、ぼくに与えられた二度目のチャンスはいびつな形に快楽をあざなって成就じょうじゅした。

 露杏奈が身体を起こして向きを変え、ぼくのおちんちんを摘んで自分の割れ目に導く。みちゅるるるっとなまめかしく音を立てて、二十五センチの巨根が小学五年生のすべすべの割れ目に沈む。子宮頸しきゅうけいを押し上げると、露杏奈がお菓子の香りがする溜息を吐く。
「はーっ、乃蒼くんと……二人きりで、セックス……あーっ、きもちいい」
「露杏奈は、セックス……上手だね」
 ぼくがそう言うと、露杏奈はぼくの頬をつねる。
「乃蒼くんが……教えてくれたのよ」
「キスもフェラチオも、絵里衣より……上手だよ」
「ウフフ、まいにちしてるから……あっ、あっあっあっあっ」
 ぼくは腰を持ち上げて、露杏奈を突き上げる。エアコンの風があたるけれど、お互い汗が吹き出す。出し入れするたびに、めくれたりめりこんだりする露杏奈の薄い陰唇いんしんをみつめる。露杏奈の薄い唇とおなじ赤香あかこう色で、しっとり潤って艶があって、ぼくに突かれるたびに形を変え、卑猥だけど美しい。ぼくの視線に気づいた露杏奈が、ぼくの頬に手をあてて舌を絡める。
「そんなにみないで」
「どうして? 綺麗だよ」
「あたし……ね、秘密があるの」
「どんな秘密?」
「誰にも言わない?」
「秘密にするよ」

 露杏奈がぼくの目をじっとみつめる。宝石のような露杏奈の瞳が揺れる。

「あたし……乃蒼くんのことが、ずっと前から好きだったの」
「ぼくもだよ」
「きっと、乃蒼くんよりもずっと前から」
「どれくらい?」
「……笑わない?」
「笑わないよ」
「あたしね……未来から来たの」
 ひとりごとのように呟いて、露杏奈の膣がきゅっと締まる。ぼくのおちんちんもきゅっと硬くなる。汗だくの露杏奈が汗だくのぼくに密着して、首筋に鼻を埋める。
「ウフフ……やっぱなんでもない」
「未来から来たの?」
「なんでもない……忘れて」
 そう言って、小さなお尻を激しく上下させる。つっちゃつっちゃとセックスの音が部屋の壁に反響する。
「ぼくも、未来から……来たんだよ」
「そーやって茶化す」
「ほんとうだよ、大政高校の一年生だった。小学校の鉄棒で逆上がりしたら、あの日……鉄棒から落ちた日に、もどっ……あっ、いくっ」
 ぼくは腰を突き上げて、おちんちんの先端を露杏奈の子宮頸におしつける。勢いよく精を放ち、子宮に直に注ぐ。逆流した精液が音もなく結合から煽れて、露杏奈の下腹部を伝ってぼくのお腹に流れ落ちる。露杏奈の潤んだ瞳がじっとぼくを凝視する。
「あたしも、逆上がり……したの」

 * * *

 露杏奈も、ぼくと同じように、未来から過去に戻ってきた。

 両親が離婚した時、露杏奈はお父さんに引き取られた。ベルギーのアントワープ郊外にある学校に通っていたけれど、生まれてから十年以上を日本で過ごした露杏奈はフラマン語がまったく話せず、周囲と馴染めずに孤独な少女時代を過ごした。高校に進学するタイミングで日本に帰国し、母方の祖父の家に引っ越してきたのだけど、そこで母校の小学校が廃校になると聞いた。そして、想い出の阿佐ヶ谷を訪れたのだけど、胸が苦しくて母校を見に行けず、駅の北側にある小さな公園の鉄棒で逆上がりした。
 あの日、解体工事が始まった校舎の前で逆上がりしてから三ヶ月余りが経ち、もしかすると長い長い白昼夢をみていたのではないかと思い始めていたのだけど、過去に戻ってきたのは現実だった。

「隣の席の乃蒼くんのことがずっと好きで、好きっていうか、ぎゅってされたかった」
「今、ぎゅってしてるよ」
 ぼくに覆いかぶさってお尻を上下させる露杏奈を抱きしめる。舌をぬるぬる絡め合う。露杏奈が膣口をぎゅっと締める。
「あたしも……乃蒼くんのおちんぽ、おまんこでぎゅってしてるね」

 そうだ、あの日、逆上がりから着地したとき、露杏奈は唖然としてぼくをみつめていた。ぼくが逆上がりできたことに驚いていたのではなく、ぼくとおなじように、小学五年生に戻ったことに驚いていたんだ。

 * * *

 リビングのカーペットの上にタオルケットを敷き、仰向けの唯を突きながら、唯の顔を跨いだ露杏奈と見つめ合う。莉緒菜と陽菜がぼくの胸に舌を滑らせ、絵里衣と玲蘭が露杏奈の乳首に吸いつく。途轍もなく性的な儀式のように複雑につながりあう。亜香里はピアノ教室からまだ帰らない。

「くちゃ、じゅるっ……露杏奈ちゃん、おまんこも綺麗だね」
 唯が舐めながら言う。露杏奈は身震いをして、胸を舐める絵里衣と玲蘭を抱きしめる。
「唯ちゃん……舌挿れて」
 唯が舌を挿れて、くちゃくちゃちゅっかちゅっか、卑猥な音を響かせて掻き回す。露杏奈が瞼をとじると、涙が頬を伝う。ほんとうにきもちいいとき、露杏奈は涙を流す。ぼくもイクとき涙がにじむからおんなじだ。
「じゅるるっ、んむ、はあっ、あっ、あっ、あっ、いくっ、あん、いっ」
 唯が口を離して腰を浮かす。ぼくは腰を振幅を大きくして、鐘をつくように身体を揺らす。莉緒菜と陽菜がぼくの乳首を舌でえぐるたびに、ズキズキと快感が走って肩が跳ねる。唯の胎内に精をぶっ放す。
 射精しながらピストンを続ける。結合からぶちゃぶちゃすごい音がして、中に注いだ精液がドボドボ溢れてタオルケットに溜まる。おちんちんを引き抜いて、向かい合う露杏奈の胸とお腹に精液をぶちまける。唯の身体にも撒き散らす。莉緒菜と陽菜が痙攣するおちんちんを呑み込む。
 二人のお尻を撫でて、割れ目に指を挿れると、膣内に注入されたベビーオイルが溢れる。ちゅるちゅる出し挿れする。絵里衣と玲蘭と唯が床を這い寄って、ぼくの胸とお腹に舌を滑らせる。唯と玲蘭の舌がぼくの乳首をみつけて、ゴリゴリ刺激する。絵里衣がぼくと舌を絡め合う。誰かがお尻に指を挿れて、ぼくの胎内から精嚢せいのう前立腺ぜんりつせんを容赦なく抉る。間断なく新たな快感が怒涛となって押し寄せ、ぼくは絵里衣と舌を絡めながら快楽に痙攣して白目を剥く。きもちよすぎて声がでない。六人の少女がぼくの全身を愛撫する。六人分のにゅるにゅるが身体中の性感帯にまとわりついて、次の快楽が肌と粘膜に浸透する。途轍もない悖徳はいとくと、途方も無い悦楽の絶頂ピークが少女たちによって何時間も維持されることで、ぼくの肉体はますます性欲に満ち溢れていく。

「次、あたし」
 陽菜が言う。トランプの順番が回ってきたみたいに、簡単にぼくを跨いで、濡れたおちんちんを胎内に沈める。露杏奈に背中を抱かれて腰を振る。下腹部が巨根に内側から突き上げられて、いびつに膨らむ。視界に入るものすべてが猥褻で美しい。
「露杏奈ちゃん……キスして」
 陽菜が横を向いて、背中を抱いて乳首を摘む露杏奈と舌を絡ませる。みんなが訪れてから、露杏奈はぼくたちの秘密について口にせず、小学五年生として振る舞い、いつものようにセックスする。
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