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第11話「逆上がりしても過去に戻れなくて、妹に現実的なアドバイスを貰うこと」
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放課後、ぼくは集団下校の列に加わらず、校庭で逆上がりを繰り返す。
空がぐるりと回転して着地する。もう一度地面を蹴って回転する。何度も逆上がりを繰り返す。手が痛くなって、ぼくは鉄棒を掴んだまま空を仰ぐ。
先週末のあの日以来、露杏奈はぼくに触れることを避けるようになった。話しかけてくれるけれど、以前と違って余所余所しさを感じる。ぼくが話しかけると、気づかないふりをすることがある。ぼくが給食当番のとき、露杏奈はぼくが注いでいたコンソメスープを飛ばして受け取らなかった。消しゴムを忘れたとき、ぼくじゃなくて前の席のカナに借りた。資料や教科書を忘れることがなくなった。いままで明確に好意を寄せていた子が、露骨にぼくを避けるようになったことがとても辛かった。
唯と陽菜と莉緒菜は変わらずぼくを昼休みに連れ出し、体育館を辞めて、すでに使われていない旧教室でセックスする。処女を失ったばかりの莉緒菜は挿入はしなかったけれど、いっぱいフェラチオしてくれる。唯たちとセックスしている間だけ、露杏奈の仕打ちを忘れることができたから、ぼくは以前より積極的に行為するようになり、唯たちはそれに応えるようにぼくをもっともっときもちよくしてくれる。
それだけに飽き足らず、ぼくは帰りがけに榛東文化中の女子寮を訪れ、絵里衣と玲蘭の二人とセックスする。
だけど、快楽に溺れるほどに、心の闇が膨らんでいった。心が高校生だったとしても、ぼくの身体は小学生で、こんなに幼い子たちとセックスして良いという免罪符にはならない。
逆上がりで時を遡り、もう一度小学生からやり直すチャンスを与えられて、ぼくは今まで冷たくあしらってきた女の子たちの好意を受け入れた結果、こんな爛れた性活に陥った。もしできることなら、今一度時を遡り、絵里衣や唯たちとのことをなかったことにしたい。
そう思って校庭の鉄棒で繰り返し逆上がりするのだけど、再び六月三日の授業中には戻れなかった。なんども逆上がりを繰り返すうちに、手の皮が剥けて、空中逆上がりもできるようになった。
「お兄ちゃん」
振り返ると、校庭の柵の向こうに妹の亜香里が立っていた。白いカットソーとベージュのサロペットパンツは朝の格好と違う。
「亜香里、どうしたの?」
「迎えに来たの。さっき、絵里衣ちゃんから連絡来たから……」
「絵里衣から?」
「今日、女子寮に来てないって心配してた」
「歩いてきたの?」
「そうだよ。お兄ちゃん、何してるの?」
「逆上がり」
「なんで?」
亜香里は不思議そうにぼくをみつめる。
* * *
にゅるるるっと亜香里の割れ目にぼくのおちんちんが滑り込む。
処女を貫いて一週間ぶりにつながったけれど、初めてのときよりずっとソフトで優しい感触に育ち、仰向けの亜香里は呆けた表情でぼくをみつめて、薄紅色の唇からお菓子の匂いがする吐息を漏らす。
「痛くない?」
「全然……きもちいい。あっ、あっ、あっ」
ぼくは亜香里を優しく突く。アルガンオイルが溢れて、粘膜がつっちょつっちょとセックスを響かせる。小学四年生の未熟な膣には襞がほとんどなくて、狭いわりに強い締めつけもなくて、柔らかく包み込まれている安堵を感じる。初めてのときはこんな感じじゃなかった。もっと硬くて緊張して大味だったのに、劇的に緻密な感触に昇華した。女の子はこんなふうにドラマチックに花開くことがあって、しばしばついていけずに気後れする。
「なにをしていたの、校庭で……」
「逆上がりだよ」
「だから……どうして?」
「言ったけど、時間を戻そうとしたんだ」
そんなこと、告白したって信じてもらえない。だけど、適当な作り話をする気にはならなかった。亜香里を騙そうとして、騙そうとしていることを気取られたら、また仲違いしてしまうかもしれない。学校の女の子と違って、亜香里はずっと一緒に暮らしていく家族なのだから、口も聞かない関係よりは、身体を重ねる汚れた関係のほうがずっとマシ。
「逆上がりすると……時間が、戻るの?」
「戻ったの、ぼくの場合は。だけど、一回だけみたい」
「どれくらい戻ったの?」
「ぼくは……高校生だったんだ」
亜香里が両脚をぼくの腰に巻き付ける。ぐっと引き寄せて、おちんちんの先端が小さな子宮頸を押し潰す。亜香里の両手がぼくの乳首をくすぐるように刺激して、ぼくは亜香里と舌を絡め合う。きもちよくて、肌が粟立つ。シーツに突いた両腕がぶるぶる震える。
「小学校の同窓会の招待状が届いたの……梅津先生から」
「うん……」
「同窓会で、聖恵小学校が閉校して、校舎が解体されるって聞いたの。それで、唯ちゃんと一緒に校舎を見に来て、鉄棒で逆上がりしたんだ。そしたら、五年生の夏に戻ってた……」
「あたしは……中学生だった?」
「うん」
「お兄ちゃんと、セックスしてた?」
「ううん、仲が悪かった」
「どうして?」
「この間、喧嘩したでしょ。あのまま仲直りしなかったんだ。それで、ぼくは大政中学に進学して、そのまま寮生になったから、亜香里と離れて暮らすようになって……はーっ、あっ、きもちい……」
「きもちいいね……お兄ちゃんの、ずっと……挿れてて、いいよ」
亜香里がぼくの乳首をきゅっと摘んで、両脚に力を入れる。肌がひどく敏感になって、身体が溶けそう。腰が抜けそう。夢中で亜香里を突き上げる。ちゃぷちゃぷちゃぷ、から、ぶちょぶちょぶちょ、と本格的な潤いを帯び始め、ぼくと妹は涙目でみつめあったまま、極限まで密着して溶け合いながらも、お互いの性の境界線がぼくたちの男と女のかたちを際立たせ、ますます求めあってしまう。
「ぼく、亜香里と仲直りしたかったの。だから……」
「仲直り……できたね」
「仲良くなりすぎちゃったかな」
「あたしは、幸せだよ。このままが……いい」
ぼくは亜香里を抱きしめて、舌を絡め合う。小刻みに突く。大きく突く。掻き回す。どんな角度でも、どんなペースでもきもちいい。絵里衣や唯たちから受ける犯されている快感とも、莉緒菜の処女を貫いたときの支配する快感とも違う、求めあって与えあう快感が途轍もなくきもちよくてたまらない。
「亜香里……あっ、イっちゃう」
「出して、いいよ、お兄ちゃんのせーし、あたしの膣に……全部」
亜香里の子宮を極限まで突き下ろして、先端を子宮頸におしつけたまま、力いっぱい精液を噴射する。びじゅううううっ、びじゅううっ、びゅくっ、びゅくっ、どぷっ、ごぽっ、亜香里の胸に耳をつけて、胎内に射精する音を聴く。結合から精液が溢れ出し、ベッドシーツを濡らす。亜香里は巻きつけた脚でぼくを抱きしめて、嬉しい、嬉しい、と呟く。
射精がおさまらないうちに、ぼくは両肘をついて、亜香里と舌を絡め合いながら、夢中で突く。精液と愛液が混じり合って泡を吹き、割れ目からぶくぶく溢れる光景をみつめる。快感が落ち着かなくて、汗が胸を流れ、ガクガク震える。溜まった精液を送り出すと、次の精液がドクドクと充填されて、膀胱の裏側に重い圧迫が膨らんで、それがそのまま性欲と快楽に直結する。
ぼくは亜香里を抱き起こし、細い体を抱きしめて、座ったまま下から突き上げる。亜香里はぼくを見下ろして、柔らかくキスをする。
「お兄ちゃん、いっぱい出したね」
「きもちよかったよ」
「汗いっぱいだよ……あっ、あっ、あっ、たっ、体力……すごいね」
ぼくは仰向けになって、今度は下から亜香里を突き上げる。亜香里は下腹部をぼくにこすりつけるように前後させて、積極的にピストンする。
「どうして、時間を戻そうとするの?」
ぼくを跨いでウットリと見下ろす亜香里が訊く。
「ぼく、露杏奈ちゃんのことが、気になっていたんだ……。好きとかじゃないんだけど」
「男の子なら、みんな気になるよね」
「露杏奈ちゃん、ぼくに好意を持ってくれていたんだけど、ぼくがそれに応えられなくて」
「どうして?」
「みんなに同じように振る舞っているかもしれないって、おもったの」
「そうなの?」
「ほんとのところはわからないけれど……。でも、みられたの、唯たちとエッチしてるところ」
「えっ、いつ?」
「先週の金曜日。体育館のギャラリーでエッチしてたら、露杏奈ちゃんが覗いてた」
「ヤバイじゃん」
「その日から、露杏奈ちゃん、ぼくを露骨に避けるようになって。それで、あれはほんとうにぼくに対する好意だったんだなって、すごくもったいないきもちになったの」
「それで、時間を戻そうとしてたの?」
「そう」
亜香里はぼくに舌を絡ませる。くちゃくちゃ、ぴちゃぴちゃ、ちゅるちゅる、わざと卑猥な音を響かせる。少し冷えすぎた部屋のエアコンが切れる。
「お兄ちゃん、可愛いね……。でも、時間は戻らないよ」
「そうみたい……」
「露杏奈ちゃんは喋ってくれないの?」
「会話はしてくれるけど、余所余所しくて」
「お兄ちゃんは、露杏奈ちゃんのこと、好きなの?」
「わからない。でも、あんなふうに態度が変わって、急に強く意識してるから、好きだったのかも。露杏奈ちゃん、いま、袴田くんのことが好きみたい」
「袴田くん?」
「同じクラスの男子」
「あのめっちゃ綺麗な男の子?」
「うーん、多分……そう」
「アハハ、お兄ちゃん負けちゃう」
「だよね」
「露杏奈ちゃん取り返したかったら、頑張らなきゃ」
「どうやって……?」
「まずは、ちゃんと話をしないと」
「そうだね……」
ぼくは亜香里のちいさなお尻を掴んで、すこしあらっぽく上下に揺さぶる。ベッドが波打ち、壁のカレンダーが揺れる。亜香里を突くたびに、お母さんとお父さんに裏切りを働いていることが意識されて、自分のことが嫌いになってしまいそうだけど、この快楽に抗えない。
「頑張っても、駄目だったら……?」
「頑張るだけ頑張って、駄目だったら、唯ちゃんたちと愉しめばいいじゃない」
亜香里はぼくには考えつかないことをあたりまえのように諭す。女の子の考え方なのか、亜香里の性格なのか、欲望に忠実な生き方を肯定できるほど、ぼくは長く生きていない。
空がぐるりと回転して着地する。もう一度地面を蹴って回転する。何度も逆上がりを繰り返す。手が痛くなって、ぼくは鉄棒を掴んだまま空を仰ぐ。
先週末のあの日以来、露杏奈はぼくに触れることを避けるようになった。話しかけてくれるけれど、以前と違って余所余所しさを感じる。ぼくが話しかけると、気づかないふりをすることがある。ぼくが給食当番のとき、露杏奈はぼくが注いでいたコンソメスープを飛ばして受け取らなかった。消しゴムを忘れたとき、ぼくじゃなくて前の席のカナに借りた。資料や教科書を忘れることがなくなった。いままで明確に好意を寄せていた子が、露骨にぼくを避けるようになったことがとても辛かった。
唯と陽菜と莉緒菜は変わらずぼくを昼休みに連れ出し、体育館を辞めて、すでに使われていない旧教室でセックスする。処女を失ったばかりの莉緒菜は挿入はしなかったけれど、いっぱいフェラチオしてくれる。唯たちとセックスしている間だけ、露杏奈の仕打ちを忘れることができたから、ぼくは以前より積極的に行為するようになり、唯たちはそれに応えるようにぼくをもっともっときもちよくしてくれる。
それだけに飽き足らず、ぼくは帰りがけに榛東文化中の女子寮を訪れ、絵里衣と玲蘭の二人とセックスする。
だけど、快楽に溺れるほどに、心の闇が膨らんでいった。心が高校生だったとしても、ぼくの身体は小学生で、こんなに幼い子たちとセックスして良いという免罪符にはならない。
逆上がりで時を遡り、もう一度小学生からやり直すチャンスを与えられて、ぼくは今まで冷たくあしらってきた女の子たちの好意を受け入れた結果、こんな爛れた性活に陥った。もしできることなら、今一度時を遡り、絵里衣や唯たちとのことをなかったことにしたい。
そう思って校庭の鉄棒で繰り返し逆上がりするのだけど、再び六月三日の授業中には戻れなかった。なんども逆上がりを繰り返すうちに、手の皮が剥けて、空中逆上がりもできるようになった。
「お兄ちゃん」
振り返ると、校庭の柵の向こうに妹の亜香里が立っていた。白いカットソーとベージュのサロペットパンツは朝の格好と違う。
「亜香里、どうしたの?」
「迎えに来たの。さっき、絵里衣ちゃんから連絡来たから……」
「絵里衣から?」
「今日、女子寮に来てないって心配してた」
「歩いてきたの?」
「そうだよ。お兄ちゃん、何してるの?」
「逆上がり」
「なんで?」
亜香里は不思議そうにぼくをみつめる。
* * *
にゅるるるっと亜香里の割れ目にぼくのおちんちんが滑り込む。
処女を貫いて一週間ぶりにつながったけれど、初めてのときよりずっとソフトで優しい感触に育ち、仰向けの亜香里は呆けた表情でぼくをみつめて、薄紅色の唇からお菓子の匂いがする吐息を漏らす。
「痛くない?」
「全然……きもちいい。あっ、あっ、あっ」
ぼくは亜香里を優しく突く。アルガンオイルが溢れて、粘膜がつっちょつっちょとセックスを響かせる。小学四年生の未熟な膣には襞がほとんどなくて、狭いわりに強い締めつけもなくて、柔らかく包み込まれている安堵を感じる。初めてのときはこんな感じじゃなかった。もっと硬くて緊張して大味だったのに、劇的に緻密な感触に昇華した。女の子はこんなふうにドラマチックに花開くことがあって、しばしばついていけずに気後れする。
「なにをしていたの、校庭で……」
「逆上がりだよ」
「だから……どうして?」
「言ったけど、時間を戻そうとしたんだ」
そんなこと、告白したって信じてもらえない。だけど、適当な作り話をする気にはならなかった。亜香里を騙そうとして、騙そうとしていることを気取られたら、また仲違いしてしまうかもしれない。学校の女の子と違って、亜香里はずっと一緒に暮らしていく家族なのだから、口も聞かない関係よりは、身体を重ねる汚れた関係のほうがずっとマシ。
「逆上がりすると……時間が、戻るの?」
「戻ったの、ぼくの場合は。だけど、一回だけみたい」
「どれくらい戻ったの?」
「ぼくは……高校生だったんだ」
亜香里が両脚をぼくの腰に巻き付ける。ぐっと引き寄せて、おちんちんの先端が小さな子宮頸を押し潰す。亜香里の両手がぼくの乳首をくすぐるように刺激して、ぼくは亜香里と舌を絡め合う。きもちよくて、肌が粟立つ。シーツに突いた両腕がぶるぶる震える。
「小学校の同窓会の招待状が届いたの……梅津先生から」
「うん……」
「同窓会で、聖恵小学校が閉校して、校舎が解体されるって聞いたの。それで、唯ちゃんと一緒に校舎を見に来て、鉄棒で逆上がりしたんだ。そしたら、五年生の夏に戻ってた……」
「あたしは……中学生だった?」
「うん」
「お兄ちゃんと、セックスしてた?」
「ううん、仲が悪かった」
「どうして?」
「この間、喧嘩したでしょ。あのまま仲直りしなかったんだ。それで、ぼくは大政中学に進学して、そのまま寮生になったから、亜香里と離れて暮らすようになって……はーっ、あっ、きもちい……」
「きもちいいね……お兄ちゃんの、ずっと……挿れてて、いいよ」
亜香里がぼくの乳首をきゅっと摘んで、両脚に力を入れる。肌がひどく敏感になって、身体が溶けそう。腰が抜けそう。夢中で亜香里を突き上げる。ちゃぷちゃぷちゃぷ、から、ぶちょぶちょぶちょ、と本格的な潤いを帯び始め、ぼくと妹は涙目でみつめあったまま、極限まで密着して溶け合いながらも、お互いの性の境界線がぼくたちの男と女のかたちを際立たせ、ますます求めあってしまう。
「ぼく、亜香里と仲直りしたかったの。だから……」
「仲直り……できたね」
「仲良くなりすぎちゃったかな」
「あたしは、幸せだよ。このままが……いい」
ぼくは亜香里を抱きしめて、舌を絡め合う。小刻みに突く。大きく突く。掻き回す。どんな角度でも、どんなペースでもきもちいい。絵里衣や唯たちから受ける犯されている快感とも、莉緒菜の処女を貫いたときの支配する快感とも違う、求めあって与えあう快感が途轍もなくきもちよくてたまらない。
「亜香里……あっ、イっちゃう」
「出して、いいよ、お兄ちゃんのせーし、あたしの膣に……全部」
亜香里の子宮を極限まで突き下ろして、先端を子宮頸におしつけたまま、力いっぱい精液を噴射する。びじゅううううっ、びじゅううっ、びゅくっ、びゅくっ、どぷっ、ごぽっ、亜香里の胸に耳をつけて、胎内に射精する音を聴く。結合から精液が溢れ出し、ベッドシーツを濡らす。亜香里は巻きつけた脚でぼくを抱きしめて、嬉しい、嬉しい、と呟く。
射精がおさまらないうちに、ぼくは両肘をついて、亜香里と舌を絡め合いながら、夢中で突く。精液と愛液が混じり合って泡を吹き、割れ目からぶくぶく溢れる光景をみつめる。快感が落ち着かなくて、汗が胸を流れ、ガクガク震える。溜まった精液を送り出すと、次の精液がドクドクと充填されて、膀胱の裏側に重い圧迫が膨らんで、それがそのまま性欲と快楽に直結する。
ぼくは亜香里を抱き起こし、細い体を抱きしめて、座ったまま下から突き上げる。亜香里はぼくを見下ろして、柔らかくキスをする。
「お兄ちゃん、いっぱい出したね」
「きもちよかったよ」
「汗いっぱいだよ……あっ、あっ、あっ、たっ、体力……すごいね」
ぼくは仰向けになって、今度は下から亜香里を突き上げる。亜香里は下腹部をぼくにこすりつけるように前後させて、積極的にピストンする。
「どうして、時間を戻そうとするの?」
ぼくを跨いでウットリと見下ろす亜香里が訊く。
「ぼく、露杏奈ちゃんのことが、気になっていたんだ……。好きとかじゃないんだけど」
「男の子なら、みんな気になるよね」
「露杏奈ちゃん、ぼくに好意を持ってくれていたんだけど、ぼくがそれに応えられなくて」
「どうして?」
「みんなに同じように振る舞っているかもしれないって、おもったの」
「そうなの?」
「ほんとのところはわからないけれど……。でも、みられたの、唯たちとエッチしてるところ」
「えっ、いつ?」
「先週の金曜日。体育館のギャラリーでエッチしてたら、露杏奈ちゃんが覗いてた」
「ヤバイじゃん」
「その日から、露杏奈ちゃん、ぼくを露骨に避けるようになって。それで、あれはほんとうにぼくに対する好意だったんだなって、すごくもったいないきもちになったの」
「それで、時間を戻そうとしてたの?」
「そう」
亜香里はぼくに舌を絡ませる。くちゃくちゃ、ぴちゃぴちゃ、ちゅるちゅる、わざと卑猥な音を響かせる。少し冷えすぎた部屋のエアコンが切れる。
「お兄ちゃん、可愛いね……。でも、時間は戻らないよ」
「そうみたい……」
「露杏奈ちゃんは喋ってくれないの?」
「会話はしてくれるけど、余所余所しくて」
「お兄ちゃんは、露杏奈ちゃんのこと、好きなの?」
「わからない。でも、あんなふうに態度が変わって、急に強く意識してるから、好きだったのかも。露杏奈ちゃん、いま、袴田くんのことが好きみたい」
「袴田くん?」
「同じクラスの男子」
「あのめっちゃ綺麗な男の子?」
「うーん、多分……そう」
「アハハ、お兄ちゃん負けちゃう」
「だよね」
「露杏奈ちゃん取り返したかったら、頑張らなきゃ」
「どうやって……?」
「まずは、ちゃんと話をしないと」
「そうだね……」
ぼくは亜香里のちいさなお尻を掴んで、すこしあらっぽく上下に揺さぶる。ベッドが波打ち、壁のカレンダーが揺れる。亜香里を突くたびに、お母さんとお父さんに裏切りを働いていることが意識されて、自分のことが嫌いになってしまいそうだけど、この快楽に抗えない。
「頑張っても、駄目だったら……?」
「頑張るだけ頑張って、駄目だったら、唯ちゃんたちと愉しめばいいじゃない」
亜香里はぼくには考えつかないことをあたりまえのように諭す。女の子の考え方なのか、亜香里の性格なのか、欲望に忠実な生き方を肯定できるほど、ぼくは長く生きていない。
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