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田辺先生に秘密を教える

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 学活の時間が終わって、保険医の羽生はぶめぐみ先生と一緒に担任の田辺たなべ由里子ゆりこ先生が保健室を訪れる。
「雅巳くん、大丈夫? お母さんに連絡したけど、お仕事が忙しくて帰れないって」
 田辺先生が寝ているぼくを覗き込んで言う。ぼくはなぜかドキドキしてしまう。美咲に触られてまだ勃起しているから。
「大丈夫です。ボク、鍵持ってるから、一人で帰れます」
「一人は駄目だよ。田辺先生が送っていってくれるからね」
 羽生先生が言って、ぼくのランドセルを丸椅子に置く。

 ぼくはベッドから降りて、田辺先生についていく。職員室の前を通過して、職員通路を通って駐車場へ。田辺先生の水色のコンパクトカーの助手席に乗る。田辺先生はスマホをセンタークラスターに差し込む。モニタに地図が表示される。
「一ノ瀬雅巳くんの自宅まで」
 田辺先生が指示すると、カーナビが最短経路を示す。田辺先生が開始ボタンをタップすると、車のエンジンがかかる。先生がハンドルを握っていないのに車が動き出す。

「先生、車が勝手に動いてる」
「この車、自動運転車だよ」
「そうなの?」
「学校が支給してくれたの。一ノ瀬くんはアリスとは喋った? 箭旻で導入しているアリスシステムの一つに自動運転車があるの。アリスは車の中で喋ってはくれないけれど、運転してくれるんだよ」
「すごい、未来の車ですね」
 自動運転車のニュースはネットで何度か目にしたことがあるけれど、まだ今ひとつうまくいっていない印象だったのに、知らない間にここまで技術が進歩していた。

 車は学校の敷地を出ると、環七に出てまっすぐ走り、すぐに方南通りに左折する。あっという間にシアトレの前に到着する。車が停まって、助手席の鍵が開く。車内が静かになって、しばらく沈黙する。
「じゃあ、お家に帰ったらちゃんと休んでね」
「はい……ありがとうございます」
 ぼくはランドセルを掴んでドアを開く。少し考えて、そのままドアを閉める。田辺先生に目を合わせずに訊く。
「あの……先生、すぐに学校に戻らないと駄目ですか?」
「え、どうして?」
「もし、少し時間があったら、ボクんち来てくれませんか。相談事があるんです。……お茶淹れます」
「うーん、少しだけならいいよ。今日は授業は終わりだしね」

 先生は車のエンジンをかけて、今度は自分で運転する。シアトレの来客用の地下駐車場へ車を駐める。エレベータでぼくの自宅へ。凜花と愛菜がもう帰っているかもしれない。
 鍵を開けると、凜花と愛菜はまだ帰宅していなかった。
「お邪魔します」
 先生は靴を脱ぐと綺麗に揃える。リビングに案内して、ぼくは電気ポットでお湯を沸かして紅茶を淹れる。お茶菓子と一緒に出す。ぼくは一度先生の向かいのソファに座るけど、先生の隣に座り直す。

「ボク、双子の妹がいるんです」
「知ってるよ。凜花ちゃんと愛菜ちゃんだよね」
「そうです。妹と言っても血はつながっていなくて、叔母の連れ子だったんです。だから、あんまり打ち解けていなくて……」
「一緒に住み始めたばかりなんだよね。一ノ瀬くん、横にならなくて大丈夫?」
「大丈夫です。軽い貧血なので、激しい運動とかしなければ……」
「そっか……」

 会話が途切れる。向かいの書棚のガラスに映る田辺由里子先生をみる。田辺先生は今年二十三歳になるんだと聞いた。とても若い先生で、背が低くて、声が綺麗で、顔も可愛くて、話をすると安心する。練馬の小学校にはいなかったタイプの先生。
「あのね、先生……」
「うん」
「ボクね、秘密があるの」
「秘密? 先生に教えてくれるの?」
「内緒だよ」
「もちろん」
「ボクの身体、他の子と違うところがあるの」
「どこ?」
「内緒だよ」
「うん、先生約束する」
「あのね……ボク、おちんちんがおっきいの」
「えーっ……そうなの?」
 田辺先生が少し笑って恥ずかしそうにする。
「そうは見えないね。一ノ瀬くん、すっごいイケメンじゃん」
「普通のサイズじゃないんです。前の学校でもすごいイジられて……」
「見られちゃったの?」
「プールの授業とかで丸わかりなので……」
「あー、そっか」
「ボクんち、お父さんいないから、お母さんにそういうこと相談できなくて。あの、無理だと思うんですけど、ボク、プールの授業を見学にして欲しいんです」
「学年主任の先生とも相談してみるけど、事情があれば大丈夫だよきっと」
「お願いします」

 由里子先生がぼくの股間をチラ見する。
「ウフフ、一ノ瀬くんそんなにおっきいんだ」
「見ますか?」
「えーっ!?」
「ボク、田辺先生になら見られてもいいです。担任の先生だから、ボクのこと知っていて欲しいし……。でも、嫌ですよね……」
 ぼくは余計なことを言ってしまったと後悔して俯く。
「嫌じゃないよ。でもアタシ恥ずかしい、あはは、ごめんね。先生が照れちゃって」
 普通の若い女性のような反応をみせる。先生はぼくを子供としてみていない気がする。

 ぼくはズボンのホックを外してジッパーを下ろし、お尻を浮かしてパンツごと脱ぐ。まだ半分勃起したままのおちんちんが股間から突き出す。二十センチ以上ある巨根を目にして、田辺先生は驚いて両手で顔を半分覆う。「すごーい」という潤んだ呟きが漏れる。田辺先生は他の先生と違って、しばしば先生ではなくなる。女になる。だからかえってぼくは安心できる。安心してエロい気持ちになれる。
「勃起すると、もっと大きくなるんです。だから、水着を着ると隠せなくて」
 ぼくは再びショートパンツを履く。先生はぼくの股間から目を離さない。
「そっかあ、それはからかっちゃう子も出てくるかもしれないね。わかった、先生、雅巳くんがプールの授業を見学できるようにするから、安心して。もし誰かに嫌なこと言われたりされたりしたら、先生に教えてね」
「アリスには相談しなくていいの?」
「一ノ瀬くんのことは、先生が守ってあげるから」
「ありがとう」
 ぼくは先生の隣に座り直して身を寄せる。先生は甘くていい匂いがする。
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