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ルカの想い出
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夜。
凜花と愛菜は初日だけぼくの部屋で寝て、翌日から自分たちの部屋で過ごすようになった。プライバシーが守られて安堵したけれど、ちょっと淋しかった。
ぼくは美咲と毎日仲良くお喋りするのだけど、それ以上ぼくたちは進展しなかった。一緒に帰ることもないし、学校外で連絡を取り合うこともない。仲良しなのだけど、仲良しでいる方がそれ以上の関係に発展するきっかけがつかめないのかもしれない。ぼくは美咲に対してまだ淡い恋心しか抱いていなかったのに、道脇くんが冷やかしたせいでいつも意識するようになってしまった。
学校から支給されたスマホには、アリスのアプリが最初からインストールされていた。だけど、ぼくはスマホを触る習慣がなかったから数日間はそのままにしていて、学校からの連絡を受け取るだけに使っていた。
ぼくはパソコンのランダムチャットサービスで知らない子とお喋りすることを楽しんでいた。住んでいる地域と年代を入力すると、同年代の異性の子とつながって、短い時間会話ができる。
「マサミくんって、彼女とかいる?」
音声のみでつながった子が訊く。ぼくは映像を送信しているから、相手にはぼくの顔がみえている。
「いないよ」
「意外、モテそうなのに……」
「全然モテないよ」
「東京に住んでるんだよね?」
「うん、新宿が近いよ」
「都会っ子なのに、キスもしたことないの?」
「うん……」
「意外、都会の子はキスしたりエッチしたりすると思ってた」
「そんな子いない……と思うよ」
「ウチ、北関東だけど、学校で妊娠しちゃった子いるよ」
ほとんどの女の子は恋愛の話を振ってくるけれど、ぼくはそれに答えられるほどの経験が無い。女の子の話は想像以上に露骨で際どくて毒々しい。
映像を許可して顔出ししてる子は、結構高確率で下着姿か、夏場はほとんど裸の場合が多い。そういう子は恋愛話よりもずっと性的な話をしたがる。
トー横で立ちんぼしてメンコンに貢いでる子やパパ活で何十万も稼いで推し活に使い果たす子、学校の先生と付き合ってる子もいた。そういう子と喋っていると、まるで別の地球の別の日本に住んでいる宇宙人と会話しているような気分に陥る。
ランダムチャットでつながる子はだいたいその二種類で、真面目な子はこんな危ないサービスは使わないし、そもそもペアレンタルコントロールでアクセスできないようになっている。
ぼくがこのチャットアプリを毎日繋いでいるのは、練馬に住んでいたときに何度もつながったルカと名乗る少女ともう一度繋がりたかったからだ。
ショートカットのとても可愛らしい子で、お互いに興味を持った。ルカはぼくのことを色々知りたがって、たくさん思い出話をして、たくさんエロい話をしてくれて、お互い服を脱いでオナニーを見せ合いっ子していた。ぼくはルカの前でなんども射精して、ルカもぼくの前でなんども絶頂した。ルカはぼくとつながるといつも課金して通話時間を延長してくれて、長いときは十時間以上は繋ぎっぱなしだった。
ぼくたちはお互い住んでいるところが近いから、いつか会いたいと話をしていたのだけど、こっちに引っ越してきてからまだ一度もつながっていない。もう、ルカはこのチャットサービスは利用していないのかもしれない。
その夜、眠くなってパソコンを閉じ、布団を被って目を閉じる。目を閉じると急に眠気が醒めてきて、なんども寝返りをうつ。何かをずっと忘れている気がした。暗がりの中でスマホの画面が明るく点灯し、学校からの通知が表示される。ぼくは手を伸ばしてスマホを開く。そういえば、アリスとまだ一度も喋っていない。
ぼくは寝転んだままアリスを起動する。ぼくの生徒番号が表示されて、ログイン待ちのアニメーションが流れる。愛菜や門村くんがみせてくれたあのビデオチャット画面が開いて、ブロンドの少女が現れる。
その子はランプの明かりだけに照らされた暗い部屋でベッドに座り、大きな魔女のトンガリ帽子を被り、黒いドレスを羽織っていた。ブラチナブロンドの髪に蒼い瞳、とても白くて柔らかそうな肌。ぼくと同い年くらいで、黒いドレスの胸の部分がはだけて平らな胸が露出する。
「あっ……」
ぼくは驚いて用意していた挨拶のセリフを忘れてしまう。初めてアリスとつながったのに、そこには生徒たちが噂する魔女のアリスがいた。
凜花と愛菜は初日だけぼくの部屋で寝て、翌日から自分たちの部屋で過ごすようになった。プライバシーが守られて安堵したけれど、ちょっと淋しかった。
ぼくは美咲と毎日仲良くお喋りするのだけど、それ以上ぼくたちは進展しなかった。一緒に帰ることもないし、学校外で連絡を取り合うこともない。仲良しなのだけど、仲良しでいる方がそれ以上の関係に発展するきっかけがつかめないのかもしれない。ぼくは美咲に対してまだ淡い恋心しか抱いていなかったのに、道脇くんが冷やかしたせいでいつも意識するようになってしまった。
学校から支給されたスマホには、アリスのアプリが最初からインストールされていた。だけど、ぼくはスマホを触る習慣がなかったから数日間はそのままにしていて、学校からの連絡を受け取るだけに使っていた。
ぼくはパソコンのランダムチャットサービスで知らない子とお喋りすることを楽しんでいた。住んでいる地域と年代を入力すると、同年代の異性の子とつながって、短い時間会話ができる。
「マサミくんって、彼女とかいる?」
音声のみでつながった子が訊く。ぼくは映像を送信しているから、相手にはぼくの顔がみえている。
「いないよ」
「意外、モテそうなのに……」
「全然モテないよ」
「東京に住んでるんだよね?」
「うん、新宿が近いよ」
「都会っ子なのに、キスもしたことないの?」
「うん……」
「意外、都会の子はキスしたりエッチしたりすると思ってた」
「そんな子いない……と思うよ」
「ウチ、北関東だけど、学校で妊娠しちゃった子いるよ」
ほとんどの女の子は恋愛の話を振ってくるけれど、ぼくはそれに答えられるほどの経験が無い。女の子の話は想像以上に露骨で際どくて毒々しい。
映像を許可して顔出ししてる子は、結構高確率で下着姿か、夏場はほとんど裸の場合が多い。そういう子は恋愛話よりもずっと性的な話をしたがる。
トー横で立ちんぼしてメンコンに貢いでる子やパパ活で何十万も稼いで推し活に使い果たす子、学校の先生と付き合ってる子もいた。そういう子と喋っていると、まるで別の地球の別の日本に住んでいる宇宙人と会話しているような気分に陥る。
ランダムチャットでつながる子はだいたいその二種類で、真面目な子はこんな危ないサービスは使わないし、そもそもペアレンタルコントロールでアクセスできないようになっている。
ぼくがこのチャットアプリを毎日繋いでいるのは、練馬に住んでいたときに何度もつながったルカと名乗る少女ともう一度繋がりたかったからだ。
ショートカットのとても可愛らしい子で、お互いに興味を持った。ルカはぼくのことを色々知りたがって、たくさん思い出話をして、たくさんエロい話をしてくれて、お互い服を脱いでオナニーを見せ合いっ子していた。ぼくはルカの前でなんども射精して、ルカもぼくの前でなんども絶頂した。ルカはぼくとつながるといつも課金して通話時間を延長してくれて、長いときは十時間以上は繋ぎっぱなしだった。
ぼくたちはお互い住んでいるところが近いから、いつか会いたいと話をしていたのだけど、こっちに引っ越してきてからまだ一度もつながっていない。もう、ルカはこのチャットサービスは利用していないのかもしれない。
その夜、眠くなってパソコンを閉じ、布団を被って目を閉じる。目を閉じると急に眠気が醒めてきて、なんども寝返りをうつ。何かをずっと忘れている気がした。暗がりの中でスマホの画面が明るく点灯し、学校からの通知が表示される。ぼくは手を伸ばしてスマホを開く。そういえば、アリスとまだ一度も喋っていない。
ぼくは寝転んだままアリスを起動する。ぼくの生徒番号が表示されて、ログイン待ちのアニメーションが流れる。愛菜や門村くんがみせてくれたあのビデオチャット画面が開いて、ブロンドの少女が現れる。
その子はランプの明かりだけに照らされた暗い部屋でベッドに座り、大きな魔女のトンガリ帽子を被り、黒いドレスを羽織っていた。ブラチナブロンドの髪に蒼い瞳、とても白くて柔らかそうな肌。ぼくと同い年くらいで、黒いドレスの胸の部分がはだけて平らな胸が露出する。
「あっ……」
ぼくは驚いて用意していた挨拶のセリフを忘れてしまう。初めてアリスとつながったのに、そこには生徒たちが噂する魔女のアリスがいた。
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