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第3部
第10話「ルシアが意外な才能をみせる顛末」
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ぼくは一階のバーでライラと一緒に食事。ユリアとエレナは全然部屋から出ないし、ルシアはまだ起きないから、あとで食べ物を買って帰らなければ。
ジアルジアだけでなく、コーン生地でペーストを挟んだ食べ物を注文する。
以前はタコスやファヒータ、それにトマトの入った炒り卵なんかを渇望していたのだけど、だんだんと味気ないサイボーグ食に慣れてきた。ジアルジアは甘くないきな粉みたいで、コーン生地で挟んだペーストは、ちょっとスパイシーな豆腐のようだから、無味というわけではない。だいたい六十分以内に吸収され、下腹部に精液が溜まる。猛烈にセックスしたくなる。
「今日はメアの姿がないね」とライラがステージを指差す。
帯を股間と胸に巻いたハイソックスの女二人が踊っている。バイザーをかけていると、チップの要求画面になる。十クレジット単位だから、五十を選ぶ。
「お休みかな?」
「ねえ、リオ。あたしたち、ずっとここにいるの?」
「下手に動かないほうがいいって、ジュリエが……」
「動かないでいるのも不自然だよ。この店の客から、あたしたちの居所がバレるかもしれないじゃない」
「アテはある?」
「ないよ。アタシ、セックス以外は何もできないから」
「ぼくを守ってくれたよ?」
「……セフレだからね」
そう言って脚を伸ばし、ぼくの股間を素足で触る。
ユリアもエレナもライラも、ぼくとセックスする女たちはぼくに恋愛感情を抱かない。ライラと二人きりでセックスしているときに愛を囁いても全然響かない。
それなのに、女たちはぼくをセックスの相手と決めると他の男とは交わらない。恋人よりも献身的に奉仕してくれる。常に求めてくれる。
「ここにいた」
振り返るとルシアがいた。ストレッチ素材の紐を複雑に組み合わせたハーネススーツを着て、バイザーをかけ、脇にホルスターと銃をぶら下げる。
「その銃どうしたの?」とライラ。
「買ったんだよ、上にガンショップがあったから」
「どこ行くの?」
「銃の使い方、教えてもらおうと思って」
* * *
十三階の射撃場で、ルシアが取り出した銃はM5Rだった。六発のリボルバー銃だけど、大きなアンダーラグにリコイルキャンセラーが入っているからデカくて重い。
「なんでこんなデカいのにしたの?」とライラが訊く。
「リオが持ってるのみて、かっこよかったから」とルシアがぼくをみる。
「あー、ルシア、おっきいの好きなんだ」
「そんなんじゃないけど」
「デカイと奥にめっちゃ当たるからね」
「あぁ……」
「大きさより硬さの方が大事だよ、デカイだけのフニャちんなら指挿れるほうがマシ……」
「いーから教えてくれよ」
ぼくはルシアのM5Rを借りて、シリンダーマガジンの交換方法を教える。リボルバーだけど、弾が入っているシリンダーごと交換する。シリンダーは一個で五百クレジットもするから捨てないでと念押し。
ハンマーを起こして撃つ。リコイルの衝撃は緩和されるけど、まったく無いわけじゃない。
「撃ってみる?」
「うん」
「アタシが撃ち方教えてやるよ」
この間初めて銃を撃ったばかりのライラがルシアの背中を抱いて、銃を持つ手を支える。耳元で「引き金を引きな」と囁く。ルシアが撃つ。あまり硝煙の出ない弾丸。
イヤーマフをしているから音はあまり聞こえないけれど、大口径弾の発砲の衝撃が肌に伝わる。ルシアが続けざまに撃つたびに、じんじんと全身に疼きのような振動が染み渡り、その刺激のせいかセックスしたくなる。
「ケホッ、酷い臭いだね」
ルシアが咳き込んで、シリンダーを交換する。
「花火みたいだね」とライラが言う。
「あんまり当たらないよ、ちゃんと円を合わせて撃ってるんだけど」
「ここの照門を合わせて撃つと当たるよ。ハンマーをあげてみな」
「こう……? あっ、ちょっと……」
ライラがルシアのハーネススーツに手を入れて、乳房を撫でる。
「若くて張りがあるね」
「撃てないよ」
「こうしてる方が当たるんだよ。撃ってみなよ」
ルシアが撃つ。外れる。また撃つ。また外れる。もう一度撃つとターゲットボードの人形に命中する。
「当たった!」
「ほらね」
「すげーきもちいい」
ライラが背中に密着して乳房を撫でているのに、ルシアは夢中で銃を撃つ。ターゲットボードに当たり始める。シリンダー交換も手慣れてくる。
「どうして銃の練習なんか」とぼくが呟く。
「親父を殺した奴を撃つんだよ」とルシアが答える。
「復讐のため?」
「そうさ」
ルシアが銃を構える。連射する。バイザーの射撃制御を使わず、照門で狙う。六発全部命中する。ターゲットボードを寄せると、人形の喉元に集弾している。才能があるかもしれない。
ジアルジアだけでなく、コーン生地でペーストを挟んだ食べ物を注文する。
以前はタコスやファヒータ、それにトマトの入った炒り卵なんかを渇望していたのだけど、だんだんと味気ないサイボーグ食に慣れてきた。ジアルジアは甘くないきな粉みたいで、コーン生地で挟んだペーストは、ちょっとスパイシーな豆腐のようだから、無味というわけではない。だいたい六十分以内に吸収され、下腹部に精液が溜まる。猛烈にセックスしたくなる。
「今日はメアの姿がないね」とライラがステージを指差す。
帯を股間と胸に巻いたハイソックスの女二人が踊っている。バイザーをかけていると、チップの要求画面になる。十クレジット単位だから、五十を選ぶ。
「お休みかな?」
「ねえ、リオ。あたしたち、ずっとここにいるの?」
「下手に動かないほうがいいって、ジュリエが……」
「動かないでいるのも不自然だよ。この店の客から、あたしたちの居所がバレるかもしれないじゃない」
「アテはある?」
「ないよ。アタシ、セックス以外は何もできないから」
「ぼくを守ってくれたよ?」
「……セフレだからね」
そう言って脚を伸ばし、ぼくの股間を素足で触る。
ユリアもエレナもライラも、ぼくとセックスする女たちはぼくに恋愛感情を抱かない。ライラと二人きりでセックスしているときに愛を囁いても全然響かない。
それなのに、女たちはぼくをセックスの相手と決めると他の男とは交わらない。恋人よりも献身的に奉仕してくれる。常に求めてくれる。
「ここにいた」
振り返るとルシアがいた。ストレッチ素材の紐を複雑に組み合わせたハーネススーツを着て、バイザーをかけ、脇にホルスターと銃をぶら下げる。
「その銃どうしたの?」とライラ。
「買ったんだよ、上にガンショップがあったから」
「どこ行くの?」
「銃の使い方、教えてもらおうと思って」
* * *
十三階の射撃場で、ルシアが取り出した銃はM5Rだった。六発のリボルバー銃だけど、大きなアンダーラグにリコイルキャンセラーが入っているからデカくて重い。
「なんでこんなデカいのにしたの?」とライラが訊く。
「リオが持ってるのみて、かっこよかったから」とルシアがぼくをみる。
「あー、ルシア、おっきいの好きなんだ」
「そんなんじゃないけど」
「デカイと奥にめっちゃ当たるからね」
「あぁ……」
「大きさより硬さの方が大事だよ、デカイだけのフニャちんなら指挿れるほうがマシ……」
「いーから教えてくれよ」
ぼくはルシアのM5Rを借りて、シリンダーマガジンの交換方法を教える。リボルバーだけど、弾が入っているシリンダーごと交換する。シリンダーは一個で五百クレジットもするから捨てないでと念押し。
ハンマーを起こして撃つ。リコイルの衝撃は緩和されるけど、まったく無いわけじゃない。
「撃ってみる?」
「うん」
「アタシが撃ち方教えてやるよ」
この間初めて銃を撃ったばかりのライラがルシアの背中を抱いて、銃を持つ手を支える。耳元で「引き金を引きな」と囁く。ルシアが撃つ。あまり硝煙の出ない弾丸。
イヤーマフをしているから音はあまり聞こえないけれど、大口径弾の発砲の衝撃が肌に伝わる。ルシアが続けざまに撃つたびに、じんじんと全身に疼きのような振動が染み渡り、その刺激のせいかセックスしたくなる。
「ケホッ、酷い臭いだね」
ルシアが咳き込んで、シリンダーを交換する。
「花火みたいだね」とライラが言う。
「あんまり当たらないよ、ちゃんと円を合わせて撃ってるんだけど」
「ここの照門を合わせて撃つと当たるよ。ハンマーをあげてみな」
「こう……? あっ、ちょっと……」
ライラがルシアのハーネススーツに手を入れて、乳房を撫でる。
「若くて張りがあるね」
「撃てないよ」
「こうしてる方が当たるんだよ。撃ってみなよ」
ルシアが撃つ。外れる。また撃つ。また外れる。もう一度撃つとターゲットボードの人形に命中する。
「当たった!」
「ほらね」
「すげーきもちいい」
ライラが背中に密着して乳房を撫でているのに、ルシアは夢中で銃を撃つ。ターゲットボードに当たり始める。シリンダー交換も手慣れてくる。
「どうして銃の練習なんか」とぼくが呟く。
「親父を殺した奴を撃つんだよ」とルシアが答える。
「復讐のため?」
「そうさ」
ルシアが銃を構える。連射する。バイザーの射撃制御を使わず、照門で狙う。六発全部命中する。ターゲットボードを寄せると、人形の喉元に集弾している。才能があるかもしれない。
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