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第3部
第8話「ライラが銃の練習をする顛末」
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ぼくたちはバーを出て、三階の銃砲店を訪れる。
今まで銃はルツのセーフハウスにごろごろ転がっていたから、お店で選ぶのは初めてだ。アクリルのショーケースに拳銃が、壁一面に大型のライフルや散弾銃が釣具店の竿のようにずらりと並び、ガンオイルの匂いが漂う。
「ねえ、あの子、買うの?」とライラが訊く。
「メアのこと? まさか、人身売買だよ」
「また子供とファックしたい?」
「そういうんじゃないんだ。なんというか、助けてあげたいような……」
拳銃のショーケースの前で立ち止まり、バイザーをかけて銃のスペックを確認する。装弾数はわかるけれど、弾丸の種類なんかみても全然わからない。銃に興味がないから調べる気がしない。だけど、この時代を生き抜くには銃は絶対に必要だ。
「ライラはなに使ってたっけ?」
「あたし? あたし銃は持ってないよ。持ったこともない」
「えっ、そうだっけ……」
「訓練も受けてないし」
「じゃあ、いらない?」
「うーん、持ってた方がいいなら」
「持ったことなければ、撃ったこともないよね」
「ないね、どっかで撃てるかな」
「上に射撃場があるから、練習できるよ」
ぼくは機械化ボディの店員を呼んで、M5Rとシリンダー、ライラに自動拳銃のNKV8、それにホルスターとボディバッグ、弾丸を百発ずつ買う。店の片隅は銃の修理をやっていて、修理工が壊れた銃から部品取りしてニコイチにしている。
小学生の頃、一時的に銀座に住んでいて、マンションの斜向いに古いフィルムカメラの専門店があったのを覚えている。
ちょうどデジカメが隆盛だった時期で、フィルム店でもデジタルカメラの修理を始めていたから、お父さんが故障したデジタル一眼を持ち込んだとき、ぼくも一緒についていった。木製の机の上でフィルムカメラを分解している職人さんがいて、じっとみていたら、なにをしているか教えてくれた。
故障したフィルムカメラ二台を分解して、良い部品だけを組み合わせて一台に組戻して、動くようにする。それをニコイチと言う。そうやって、五十年以上前に作られたフィルムカメラでも延命する。
* * *
ぼくとライラはエレベータに乗って十三階の射撃場へ。エレベータを降りると、硝煙の臭いと発砲音が響く空間がひろがる。バイザーにルシアから音声通信。
「リオ、いまどこにいるの? なんの音?」
「十三階の射撃場だよ」
「銃の練習するの?」
「ライラがね」
「なにか食べた? 食べ物ないよね」
「バーでジアルジアだけ飲んだよ。ユリアたちは?」
「まだ寝てる」
「起こしてあげて」
ぼくたちは一番奥のレーンを借りて、買ったばかりのNKV8のマガジンに弾を込める。イヤーマフを肩にかける。
「使い方、わかる?」
「わかんない」
「これが弾が入ってるマガジン。これをこんなふうに装填すると、バイザーに十五発って表示が出る。このストッパーを下げると、スライドが前に戻る」
パチンと音がして、スライドが戻る。
「これが安全装置、これを解除すると、バイザーが射撃モードになって、撃てる状態になるんだ。あとは照準を目標に合わせて引き金を弾くだけだよ」
ぼくはライラにNKV8を渡す。イヤーマフをつけて、ライラと音声通信を結ぶ。ライラを背中から抱くようにして、銃を握らせる。構える。
バイザーは射撃モードになるけれど、照準が十字ではなく二重円で描かれ、ものすごく大雑把。レーンの一番奥に人形のターゲットボードがみえる。ライラが引き金を弾くと、パン、と乾いた音が響いて薬莢が弾ける。着弾確認が表示される。ボードに命中していない。
「やっべー、きもちいい。弾スゲーとんだよ」
「銃だからね」
「もっと撃っていい?」
「いいよ、お金払えば弾買えるし」
「ねえ、そのまま背中抱いてて」
ぼくはライラの背中に密着して腰に腕を回す。ライラは拳銃を構えて、パン、パン、パン、パン、と連続で撃つ。何発かターゲットボードに命中する。五十発のバルクで二十九クレジットの安い弾丸だから惜しまない。もうもうと硝煙が立ち込め、バイザーが標的を喪失し、勝手に索敵モードになる。
「丸が消えたよ」とライラが言う。
「そういうときは、ここで狙うんだ。後ろの出っ張りと前の出っ張りをあわせて……」
アイアンサイトの使い方を教える。ライラは片手を後ろに回して、ぼくの股間を触る。勃起した陰茎の根元を掴む。
「ねえ、後ろから挿れて」
「店の中でセックスしたら罰金だって」
「じゃあ、指挿れて」
ライラがぼくの手を取って股間に導く。黒いローライズのビキニパンツに手を入れて、割れ目に指を沈める。もう片方の手をハの字の布の内側に滑らせて、柔らかな乳房を撫でる。
ライラはそのまま銃を構えて連射する。発砲音が響くたびに、膣がきゅっと絞まる。排莢がパーテションに跳ね返って、床に散らばる。弾が切れて、スライドが下がる。煙が晴れると、ボタンを押してターゲットボードを近づける。待ってる間、ライラの膣の前壁を指先で抉る。キスをする。十五発中六発命中。
「結構当たってるじゃん」
「ライラ、初めてなのにすごいね」
「リオも撃ってみてよ」
いつになくライラがはしゃぐ。セックスのとき以外はいつも怠そうにしているのに、眼を輝かせてぼくのM5Rをみつめる。どんなにきもちよくたって、セックスばかりじゃ飽きてしまう。どうにか女たちを楽しませることを考えなきゃいけない。
今まで銃はルツのセーフハウスにごろごろ転がっていたから、お店で選ぶのは初めてだ。アクリルのショーケースに拳銃が、壁一面に大型のライフルや散弾銃が釣具店の竿のようにずらりと並び、ガンオイルの匂いが漂う。
「ねえ、あの子、買うの?」とライラが訊く。
「メアのこと? まさか、人身売買だよ」
「また子供とファックしたい?」
「そういうんじゃないんだ。なんというか、助けてあげたいような……」
拳銃のショーケースの前で立ち止まり、バイザーをかけて銃のスペックを確認する。装弾数はわかるけれど、弾丸の種類なんかみても全然わからない。銃に興味がないから調べる気がしない。だけど、この時代を生き抜くには銃は絶対に必要だ。
「ライラはなに使ってたっけ?」
「あたし? あたし銃は持ってないよ。持ったこともない」
「えっ、そうだっけ……」
「訓練も受けてないし」
「じゃあ、いらない?」
「うーん、持ってた方がいいなら」
「持ったことなければ、撃ったこともないよね」
「ないね、どっかで撃てるかな」
「上に射撃場があるから、練習できるよ」
ぼくは機械化ボディの店員を呼んで、M5Rとシリンダー、ライラに自動拳銃のNKV8、それにホルスターとボディバッグ、弾丸を百発ずつ買う。店の片隅は銃の修理をやっていて、修理工が壊れた銃から部品取りしてニコイチにしている。
小学生の頃、一時的に銀座に住んでいて、マンションの斜向いに古いフィルムカメラの専門店があったのを覚えている。
ちょうどデジカメが隆盛だった時期で、フィルム店でもデジタルカメラの修理を始めていたから、お父さんが故障したデジタル一眼を持ち込んだとき、ぼくも一緒についていった。木製の机の上でフィルムカメラを分解している職人さんがいて、じっとみていたら、なにをしているか教えてくれた。
故障したフィルムカメラ二台を分解して、良い部品だけを組み合わせて一台に組戻して、動くようにする。それをニコイチと言う。そうやって、五十年以上前に作られたフィルムカメラでも延命する。
* * *
ぼくとライラはエレベータに乗って十三階の射撃場へ。エレベータを降りると、硝煙の臭いと発砲音が響く空間がひろがる。バイザーにルシアから音声通信。
「リオ、いまどこにいるの? なんの音?」
「十三階の射撃場だよ」
「銃の練習するの?」
「ライラがね」
「なにか食べた? 食べ物ないよね」
「バーでジアルジアだけ飲んだよ。ユリアたちは?」
「まだ寝てる」
「起こしてあげて」
ぼくたちは一番奥のレーンを借りて、買ったばかりのNKV8のマガジンに弾を込める。イヤーマフを肩にかける。
「使い方、わかる?」
「わかんない」
「これが弾が入ってるマガジン。これをこんなふうに装填すると、バイザーに十五発って表示が出る。このストッパーを下げると、スライドが前に戻る」
パチンと音がして、スライドが戻る。
「これが安全装置、これを解除すると、バイザーが射撃モードになって、撃てる状態になるんだ。あとは照準を目標に合わせて引き金を弾くだけだよ」
ぼくはライラにNKV8を渡す。イヤーマフをつけて、ライラと音声通信を結ぶ。ライラを背中から抱くようにして、銃を握らせる。構える。
バイザーは射撃モードになるけれど、照準が十字ではなく二重円で描かれ、ものすごく大雑把。レーンの一番奥に人形のターゲットボードがみえる。ライラが引き金を弾くと、パン、と乾いた音が響いて薬莢が弾ける。着弾確認が表示される。ボードに命中していない。
「やっべー、きもちいい。弾スゲーとんだよ」
「銃だからね」
「もっと撃っていい?」
「いいよ、お金払えば弾買えるし」
「ねえ、そのまま背中抱いてて」
ぼくはライラの背中に密着して腰に腕を回す。ライラは拳銃を構えて、パン、パン、パン、パン、と連続で撃つ。何発かターゲットボードに命中する。五十発のバルクで二十九クレジットの安い弾丸だから惜しまない。もうもうと硝煙が立ち込め、バイザーが標的を喪失し、勝手に索敵モードになる。
「丸が消えたよ」とライラが言う。
「そういうときは、ここで狙うんだ。後ろの出っ張りと前の出っ張りをあわせて……」
アイアンサイトの使い方を教える。ライラは片手を後ろに回して、ぼくの股間を触る。勃起した陰茎の根元を掴む。
「ねえ、後ろから挿れて」
「店の中でセックスしたら罰金だって」
「じゃあ、指挿れて」
ライラがぼくの手を取って股間に導く。黒いローライズのビキニパンツに手を入れて、割れ目に指を沈める。もう片方の手をハの字の布の内側に滑らせて、柔らかな乳房を撫でる。
ライラはそのまま銃を構えて連射する。発砲音が響くたびに、膣がきゅっと絞まる。排莢がパーテションに跳ね返って、床に散らばる。弾が切れて、スライドが下がる。煙が晴れると、ボタンを押してターゲットボードを近づける。待ってる間、ライラの膣の前壁を指先で抉る。キスをする。十五発中六発命中。
「結構当たってるじゃん」
「ライラ、初めてなのにすごいね」
「リオも撃ってみてよ」
いつになくライラがはしゃぐ。セックスのとき以外はいつも怠そうにしているのに、眼を輝かせてぼくのM5Rをみつめる。どんなにきもちよくたって、セックスばかりじゃ飽きてしまう。どうにか女たちを楽しませることを考えなきゃいけない。
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