【R18】ハロー!ジャンキーズ

藤原紫音

文字の大きさ
上 下
83 / 109
第3部

第7話「踊り子のメアと会話する顛末」

しおりを挟む
 目覚めたときは、すでに夜だった。

 ベッドの上で折り重なるように寝ていたぼくは、覆いかぶさったライラとつながったままだ。生身でこんな寝方をしてたら苦しくて眠れないだろうけど、ぼくの身体にとっては心地よい肉の毛布になる。
 ぼくの両脇にユリアとエレナがうつ伏せで眠っていて、ルシアが隣のシングルベッドで寝息を立てる。蒸し暑いからみんな裸。ゆっくり腰を動かすと、子宮に咥えこまれた先端が引っ張られて、ライラが眼を覚ます。

「リオ、あン……、もう夜?」
「雨、上がったみたいだね」
「あっ、はぁーっ、あっ、あっ、あっ」
「ライラ、そろそろ起きよう。セックスし過ぎだよ」
「待って、イキそ……」

 ライラが腰をスナップさせると、ベッド全体が揺れて、眠っていたユリアとエレナが眼を覚ます。ユリアが頭を起こして、ぼくと濃厚なキスをする。ぼくはライラを突き上げる。
 エレナがライラに有線した途端、ライラは絶頂する。子宮に亀頭を絞めつけられて、ぼくはライラの胎盤に精を噴射する。身体を反ってありったけの汁を絞り出すと、結合からぶちゅっ、ぶちゅっと卑猥な音を響かせて精液が噴き出す。

 ライラから引き抜き、ユリアとエレナが交互に飲み込む。
 ぼくとライラはベッドから降りて、シャワーを浴びる。シャワーボックスの中でもセックスする。バスタオルで身体を拭いて、服を着る。買ったばかりのバイザーをかける。ライラと共に小屋を出る。

 陽が落ちたばかりの西の空が深紫ふかむらさきに染まり、鳥の群れが居住不可地域の森へと飛び去る。
 屋上のわずかなスペースには花壇があるけれど、花の代わりに雑草が生い茂る。古いタイヤとドラム缶が積まれ、壁に立てかけられた錆びた看板に『格安合成オイル』と描かれている。手摺の向こうにはスラム街の毒々しいネオンカラーが汚れたビル壁を極彩色に彩る。

 ぼくはライラと一緒にエレベータで一階のバーへ降りる。
 その夜のバーは昨夜ほど混雑していなくて、店主のギリアンはレーズンヘアで鼻ピアスの女性客に天然葉巻を勧めている。ステージでは今夜もメアが黒いメイド服を着て踊っている。バニーガールの格好をした女の給仕を呼び止めて、ジアルジアを二杯、ライラはアロマカクテルを注文する。バイオユニットの女たちから香る芳しい例のアレはアロマカクテルの香りそのものだ。

「二人ならカウンターに座りなよ。ギリアンが暇になるだろ」

 胸元をハート型に開いたトップスにローライズビキニのバニーガールがカウンター席を指差す。ぼくたちはボックス席からカウンターに移動する。ギリアンがぼくたちの前に移動してくる。アロマカクテルとジアルジアを作る。
 店で飲むジアルジアは自分で作るものと違って良い香りがするし、甘くて飲みやすい。

「おニューのバイザーはどうだい?」とギリアンが訊く。
「掛け心地はいいけど、前使ってたアムストラッドの方が馴染むかな」
「昨夜、レアバイザーを要求してたのは兄さんか。なんでアムストラッドなんか」
「安心してネットにダイブできるから」
「シャドウマウント買いなよ。安いのから高級品まで揃ってるぜ」
「後でみてみるよ。ところで、シャワーボックスのブロワーが壊れてるんだけど」
「安物だからブロワーなんかついてねーよ」
「この辺って、ゲリラは来ないの?」
「ここはど田舎だからな、今のところ戦禍は近づいてないが、今後はわからんぜ。セクター5だってそうだった。数日で終わると思われた武力衝突が大規模な紛争に発展してもう五年、泥沼だ。ヤバくなったら逃げられるうちにセクター4から出たほうがいいな」
「どこか逃げられるところ、ある?」とライラが訊く。
「セクター7か、あるいはセクター3……」
「セクター3は入れないでしょ」
「コネがあればチャンスはあるぜ、俺には無いが」

 ぼくはステージを振り返る。ローファイのカントリーがポップ曲に変わると、メアがマイクスタンドを立てて、幼いけれど美しい声で歌う。

「ギリアン、あの子は、どうしてここで働いてるの?」とぼくは訊く。
「メアか、親戚に押し付けられた子なんだ。なんでも母親が未成年で、事情があって育児院を出なきゃならなくなったんだと」
「親戚って?」
「偉い医者だよ、モーリス・ゲラルディーニ元院長。俺の腕の治療費をカタにガキ押し付けやがって。いまはウチの娼婦どもに預けて、踊りや歌を教えてる。リオは若いし、美人を四人も連れてるけど、もし十一の子供とファックしたければ、二十五万で売るぜ」
「話してもいいかな?」
「構わないよ、人見知りするけど」

 ギリアンは指を鳴らしてメアに手招きする。
 メアは一度ステージから引っ込んで、店の奥のストリングカーテンから出てくる。メイド服を脱いで、薄いキャミワンピを着ただけの格好。ぼくたちの近くに立つ。上目遣いでぼくを見上げる。ライラが椅子をくるりと回して、指でメアの顎を上げる。

「この子、ネムにちょっと雰囲気似てるね」とライラ。
「君はどこで生まれたの?」とぼくはメアに訊く。
「病院よ」
「どこの?」
「知らない、大きな病院。中庭に噴水があった」
「ちゃんと育てりゃ、なかなかの上玉になるぜ。どうする?」
 ギリアンが丸メガネを下げてぼくを覗き見る。
「本気で売るって言ってるの?」
「兄さんなら彼女を殴ったりしないだろ」
「ちょっと考えてもいいかな?」
「価格交渉はしないぜ、これでもギリギリまで下げてんだ。育てるのにも結構金がかかってる」

 ギリアンが手を振ると、メアは店の奥に引っ込む。ステージにはチェインランジェリーをまとったブロンドの女が上がって踊っている。全身タトゥーやピアスで飾った男たちがステージを取り囲んで、スペイン語で会話する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...